著者の所属・活動拠点の国は、アラブ首長国連邦、マレーシアです。

掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、エビの養殖と、塩分に強い植物シービート(Beta maritima)の水耕栽培を組み合わせた「海水アクアポニックス」で、エビの種類と水の塩分濃度が双方の生育にどう影響するかを調べました。アクアポニックスは、養殖で生じる栄養分を植物の栽培に利用する仕組みです。

背景には、乾燥地域などで淡水不足や土壌・水資源の塩類化が食料生産を制約していることがあります。シービートは海岸の塩分環境に適応したビートの野生近縁種ですが、エビ由来の栄養分や微生物の働きも関わる複合栽培での生育は、十分に調べられていませんでした。

何を、どのように調べたか

研究チームは温室内で、インディアンホワイトシュリンプとバナメイエビの2種を、それぞれシービートと組み合わせて56日間育てました。塩分濃度は10、15、20 pptの3段階です。pptは千分率を表し、ここでは塩分濃度の単位として使われています。2種と3段階を組み合わせた6条件について、独立した栽培システムを各3基、計18基用い、条件を無作為に割り当てました。

エビについては成長、生存率、飼料の利用効率、生産量を比較しました。植物については葉の大きさ、生の重さ、乾燥後の重さ、水分量に加え、色素やフェノール類などの成分、抗酸化活性の指標を測定しました。水温、溶存酸素、pH、窒素化合物などの水質も毎週記録しました。

主な報告結果

研究チームの報告では、エビ2種とも、15 pptと20 pptでの成長と生産量が10 pptより高く、15 pptと20 pptの間には統計的に有意な差がありませんでした。また、バナメイエビはインディアンホワイトシュリンプより成長、生存率、生産量が高く、体重を増やすために必要な飼料も少なくなりました。例えば15 pptでの最終体重の平均は、バナメイエビが8.35 g、インディアンホワイトシュリンプが7.17 gでした。生存率に塩分濃度による有意な差はなく、すべての条件で84%を上回りました。

シービートはすべての塩分濃度で生育しましたが、生の重さは10 pptで最も大きく、20 pptでは葉の幅、生の重さ、水分量が低下しました。一方、乾燥後の重さには条件間で有意な差がありませんでした。エビの種類による違いもあり、バナメイエビと組み合わせた植物は、インディアンホワイトシュリンプと組み合わせた植物より、最終的な生の重さが平均で約5%大きくなりました。

植物の成分では、カロテノイドと総フェノールの含有量が10 pptより20 pptで高く、フラボノイド含有量は塩分濃度とともに増えました。フラボノイドは、エビ2種の条件を平均すると20 pptで10 pptの約3.4倍でした。また、試料が特定のラジカルを取り除く働きを測るDPPH法による抗酸化活性は、どちらのエビとの組み合わせでも、10 pptより15 pptと20 pptで高くなりました。

この報告が示すこと

著者らは、エビの生産と植物の収穫量・成分を両立させるには、エビの種類だけでなく塩分濃度の調整が重要だと結論づけています。今回の3段階の比較では、15 pptを双方の成績を実用的に釣り合わせる条件と位置づけましたが、あらゆる栽培環境に共通する最適値とはしていません。

この結論の範囲は、温室内でシービート1種を用い、10~20 pptで行った1回の56日間の試験です。屋外や商業施設で同じ結果になるか、長期間や繰り返し栽培でも成り立つかは検証されていません。また、生理的な仕組みや経済性は直接測定されておらず、水質の変化も統計的な条件比較ではなく、経時的な傾向として扱われています。

原著論文の著者・所属:Chythra Somanathan Nair(Department of Integrative Agriculture, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University)、Radhakrishnan Subramanian(ASPIRE Research Institute for Food Security in the Drylands (ARIFSID), United Arab Emirates University; Department of Integrative Agriculture, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University)、Vasantha Prabhakaran Srinivasan(Department of Integrative Agriculture, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University)、Ramya Manoharan(Department of Integrative Agriculture, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University)、Drishya Nishanth(ASPIRE Research Institute for Food Security in the Drylands (ARIFSID), United Arab Emirates University; Department of Integrative Agriculture, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University)、Zienab F. R. Ahmed(Department of Integrative Agriculture, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University)、Subha Bhassu(Animal Genetics and Genome Evolutionary Biology Lab, Microbiology and Molecular Genetics Program, Institute of Biological Sciences, University Malaya)、Sreeramanan Subramaniam(Centre for Chemical Biology (CCB), Universiti Sains Malaysia (USM); School of Biological Sciences, Universiti Sains Malaysia (USM))、Abdul Jaleel(ASPIRE Research Institute for Food Security in the Drylands (ARIFSID), United Arab Emirates University; Department of Integrative Agriculture, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chythra Somanathan Nair, Radhakrishnan Subramanian, Vasantha Prabhakaran Srinivasan, et al. Effects of shrimp species and salinity in Beta maritima-based marine aquaponics. Frontiers in Sustainable Food Systems(出版社:Frontiers Media) 2026-09-09. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1930720. 原著ライセンス:CC BY.