著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Plant Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

パッションフルーツの温室栽培では、同じ場所で栽培を続けることで土壌の酸性化や塩類の蓄積、土壌を介した病気などが問題になります。研究チームは、キノコを収穫した後に残る培地を堆肥化し、土の代わりに使う栽培用の材料として利用できるかを調べました。キノコの種類や材料の配合によって、生育、果実の品質、収量がどう変わるかを比較することが目的です。

何を、どのように調べたか

中国・福建省のプラスチック温室で、パッションフルーツ品種「Qinmi No. 9」の接ぎ木苗を栽培しました。キノコ収穫後の培地は、P. geesteranus、A. heimuer、P. eryngiiの3種類に由来するものです。それぞれを、あらかじめ堆肥化した豚ふんと質量比20対1で混ぜ、空気のある条件で堆肥化しました。

これらを海藻泥や川砂と異なる体積比で配合し、単独使用も含む15種類の栽培用培地を用意しました。比較対象は、黄土・海藻泥・川砂を体積比2対1対1で混ぜた土主体の培地です。計16条件を無作為に配置し、各条件で7袋、1袋当たり2株を栽培しました。肥料の与え方は全条件でそろえました。

研究チームは、培地の密度、空気を含む隙間の割合、酸性・アルカリ性の程度、養分などを追跡しました。塩類の蓄積の目安になる電気伝導度も測定しています。植物については、草丈、茎の太さ、葉数、根の成長、植物体の重量、光合成、葉の成分を調べ、収穫時には果実の重さ、糖やビタミンCなどの成分、1株当たりの収量を比較しました。根の周囲にいる細菌や菌類の構成と、生育・収量との関連も解析しました。

主な報告結果

研究チームが総合的に最も優れていたと報告したのは、P. geesteranusの収穫後培地・海藻泥・川砂を体積比3対1対1で配合した「T4」です。T4では1株当たりの収量が3.85キログラム、果実1個の重さが94.24グラムとなり、いずれも土主体の比較対象を統計的に有意に上回りました。

果実の品質でも、T4は可溶性固形分が19.45%、可溶性糖が13.4%、ビタミンCが果実100グラム当たり48.20ミリグラムで、いずれも比較対象より有意に高い値でした。可溶性固形分は、果汁に溶けている糖などの成分の割合を示す指標です。T4は、これらの項目で全条件中の最高値を示しました。

生育面では、同じキノコ種の収穫後培地を使ったT3とT4が、初期の草丈の伸び、茎の肥大、葉の増加で優れていました。T4では葉の光合成能力や、葉に含まれる可溶性の糖・たんぱく質にも優位性が報告されています。培地は栽培期間を通じて比較的安定した通気性を保ち、酸性・アルカリ性の変動も小さくなっていました。

一方、キノコ収穫後の培地だけを使った条件は、有機物や養分が多くても良好な成績にはつながりませんでした。栽培後期に電気伝導度が高まり、目立った落葉が見られ、特にP. geesteranusとP. eryngiiの培地を単独で使った条件では収量が最も低くなりました。根の周囲の微生物の構成も配合によって異なり、一部の細菌や菌類の多さは、生育や果実品質の良さと正の関連を示しました。

この報告が示すこと

著者らは、キノコ収穫後の培地を栽培に利用する際には、使用割合や養分量を増やすだけでなく、通気性、保水性、塩類の蓄積、養分供給のバランスを整えることが重要だと結論づけています。今回の試験は、適切に堆肥化して配合することで、こうした残余資源をパッションフルーツの土に代わる栽培材料として活用できることを示す報告です。

ただし、微生物と生育・収量の関係について得られたのは相関であり、特定の微生物が生育を促したという因果関係を確かめたものではないと、著者らは述べています。

原著論文の著者・所属:Xiuqing Wei(Fruit Research Institute, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、Xujia Tang(Fruit Research Institute, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、Liang Li(Fruit Research Institute, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、Yajun Tang(Fruit Research Institute, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、Ping Zhou(Fruit Research Institute, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、Jiahui Xu(Fruit Research Institute, Fujian Academy of Agricultural Sciences)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xiuqing Wei, Xujia Tang, Liang Li, et al. Effects of spent mushroom substrate cultivation under greenhouse conditions on growth and fruiting of passion fruit. Frontiers in Plant Science(出版社:Frontiers Media) 2026-09-07. DOI: 10.3389/fpls.2026.1926220. 原著ライセンス:CC BY.