りんごジュースや果汁を作るときに大量に出る「搾りかす」。果肉や皮、種の残りを含むこの副産物は、多くが廃棄されているのが実情です。近年では、こうした食品副産物を捨てずに別の食品に活用しようという研究が世界的に注目されています。今回紹介する研究は、りんご・サワーチェリー・桃という3種類の果実の搾りかすを小麦粉の一部と置き換えて焼いたビスケットについて、ミネラル成分や色、そして食べたときの評価がどう変わるのかを詳しく調べたものです。
研究でわかったこと
研究チームは、小麦粉の5%、10%、15%を、りんご・サワーチェリー・桃それぞれの搾りかすに置き換えたビスケットを作り、ミネラル組成と色の特性を比較しました。その結果、搾りかすを加えることでビスケットのミネラル組成が有意に改善したと報告されています。具体的には、サワーチェリーの搾りかすを加えるとカルシウム・銅・マグネシウムの含有量が増え、桃の搾りかすを加えると鉄・カリウム・マグネシウム・亜鉛の含有量が高まったとされています。
色についても変化が見られ、搾りかすの種類や配合量に応じて、明るさ(L*値)は低下し、赤み(a*値)と黄み(b*値)は高まる傾向が示されました。
初期の比較の結果をふまえて、研究チームはさらに詳しい分析の対象として桃の搾りかすを選びました。桃搾りかすの配合量を増やすと、ビスケットの水分量と酸度が上昇する一方、生地のグルテンネットワークが薄まることで、ビスケットの直径や厚みは小さくなったと報告されています。また、実際に食べて評価する官能評価では、桃搾りかすを5〜10%配合したビスケットが、色・香り・味・総合的な好ましさの各項目で最も高い評価を得たとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、果実の搾りかすという食品副産物を、ビスケットの栄養面での質を高める材料として活用できる可能性を示すものであり、特定の健康効果を証明したり、病気の予防・改善を約束するものではありません。ミネラル含有量の向上や官能評価の結果は、あくまで今回の実験条件下で得られたものであり、これ一つで結論が確定したわけではない点に留意が必要です。また、配合量が多すぎると生地の構造や食感に影響が出ることも示されており、実際の商品化には適切な配合バランスの見極めが重要になると考えられます。
まとめ
この研究では、りんご・サワーチェリー・桃の搾りかすを小麦粉の一部と置き換えることで、ビスケットのミネラル組成や色に変化が生じることが確認されました。中でも桃の搾りかすは、5〜10%という配合量において、色・香り・味・総合的な好ましさのバランスが良く、品質を保ちながらミネラル成分を補う材料として適していることが示唆されています。研究チームは、こうした二段階の検討方法によって、果実加工の副産物を焼き菓子に持続可能な形で活用できる可能性を示したとしています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:小麦ビスケットにおける機能性素材としての果実搾りかす:ミネラル組成、色特性、桃搾りかす強化ビスケットの品質評価(モレキュールズ・2026年07月)