地中海食は、野菜や果物、豆類、オリーブオイルを多く使う食事パターンで、これまでも慢性疾患の予防や健やかな加齢との関連が数多く報告されてきました。ところがスペインでは近年、欧米型の食生活が広まるにつれ、高齢者の地中海食への順守度が下がっていることが課題になっているといいます。こうした状況を受けて、地域単位での取り組みや調理スキルの習得を組み合わせた介入が、食の質を高める方法として注目され始めているそうです。今回紹介する研究は、そうした取り組みが実際に効果を持つのかを確かめたものです。
研究でわかったこと
この研究はサラマンカに住む60歳以上の成人130人を対象に行われたランダム化比較試験です。参加者は2つのグループに分けられました。一方は料理スキルの育成なども含む「多要素介入」を受け、もう一方は従来型の集団教育講話を受けました。主な評価項目は地中海食への順守度で、あわせて臨床指標や社会人口統計学的な変数も調べられました。
解析の結果、地中海食への順守度を示すMEDASスコアは、介入群のほうが対照群より時間の経過とともに大きく改善したことが示されました(群と時間の交互作用のp値は0.027)。記述的には、介入群でエキストラバージンオリーブオイル、果物、野菜、豆類の摂取が増える一方、超加工食品や加糖飲料の摂取は減る傾向が見られたとのことです。この改善は、3か月間の追跡期間を通じて維持されたと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
今回の結果は、料理スキルの育成を含む多要素介入が、従来の講話形式の教育よりも地中海食への順守度を高めるうえで有効だった可能性を示すものです。ただし、これはサラマンカという特定の地域の高齢者130人を対象にした一つの研究にすぎません。この結果がすべての高齢者に当てはまるかどうかは、今後さらに研究を重ねて確かめていく必要があります。
また要旨からは、介入の具体的な内容や期間、追跡以降の長期的な効果までは詳しく読み取れません。数値や結論を一般化しすぎず、あくまで一つの試みの成果として受け止めておくのがよさそうです。
まとめ
この研究では、料理スキルの育成を組み込んだ多要素介入が、従来の集団教育講話よりも高齢者の地中海食への順守度を高め、その効果が3か月後も保たれていたことが示されました。食習慣を変えるきっかけとして、話を聞くだけでなく実際に作ってみる機会を持つことが、一つの選択肢になりうることを示すデータといえます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:高齢者における地中海食順守度に対する多要素介入の効果:ランダム化比較試験(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年08月)