コーヒーは眠気覚ましに、緑茶はほっと一息つくために——なんとなく、そんな飲み分けをしている人は多いのではないでしょうか。カフェインを含む飲み物を飲む理由(動機)を測るための「カフェイン摂取動機質問票(MCCQ)」という調査票が海外で作られていますが、これを日本語に翻訳して使ったところ、データへの当てはまり(統計的なモデルの適合度)がいまひとつ良くないという課題がありました。今回紹介する研究は、その原因が「緑茶」のような日本特有の飲料文脈にあるのかどうかを確かめようとしたものです。

研究でわかったこと

研究チームは、フォワード・バックワード翻訳(英語から日本語に訳し、それを再び英語に訳し戻して精度を確認する方法)によって暫定的に作成した日本語版の質問票(MCCQ-J)を用い、2回のオンライン調査を実施しました。まず調査1では、20〜59歳の1,530人を対象に、「カフェイン飲料全般」を思い浮かべて質問票に回答してもらいました(全飲料フレーミング)。続く調査2では、調査1の参加者のうち4種類の対象飲料(コーヒー・緑茶などが含まれるとみられます)のいずれかを飲んでいる1,190人に、今度は「特定の一種類の飲料」に限定して回答してもらいました(飲料特異的フレーミング)。

質問票からは、習慣・覚醒・気分・社会性・味・症状緩和という6つの下位尺度のスコアが、原著の方法にならって算出されました。そのうえで、6因子モデルの適合度、内的整合性(回答の一貫性)、そして飲料の種類による測定の不変性(同じ質問が異なる飲料間で同じ意味を持つかどうか)が検討されました。

その結果、全飲料フレーミングでも6因子モデルの適合度はあまり良くなく、飲料特異的フレーミングに変えても一様には改善しなかったと報告されています。飲料のペアごとに測定不変性のパターンを見ても、緑茶だけに特有の傾向は見られず、「緑茶という飲料の特殊性が適合度の低さの原因である」という説明とは合わない結果だったとされています。さらに4つの飲料タイプを比較したところ、完全な尺度不変性(スコアを飲料間で厳密に比較できる状態)は支持されず、部分的な尺度不変性も十分には確認できなかったため、飲料タイプ間のスコアの違いはあくまで記述的な参考情報として解釈するにとどめられています。なお、気分に関する動機は、質問票の元になった海外の研究と比べて記述的にはやや目立つ傾向が見られたとされていますが、国をまたいだ比較のための不変性検証は行われていないため、この点は慎重に受け止める必要があると論文では述べられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、日本語版の質問票(MCCQ-J)がまだ十分な言語的妥当性の検証を経ていない「暫定版」であることを前提に行われたものです。今回の結果からは、飲料タイプ間でスコアを単純に比較できるだけの統計的な裏付けは十分には得られなかったとされており、得られたデータはあくまで日本人のカフェイン摂取動機に関する記述的な参考情報として位置づけられています。著者らは、今後、認知面接(回答者が質問をどう理解しているかを詳しく聞き取る手法)や項目の言い回しの見直し、予備調査などを通じて、質問票自体をさらに改良していく必要があると結論づけています。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意が必要です。

まとめ

今回の研究では、カフェイン摂取動機を測る日本語版質問票について、全飲料共通の聞き方と飲料ごとの聞き方を比較しましたが、統計モデルの適合度は一貫して改善せず、「緑茶特有の事情が原因」という見方とも合わない結果になったと報告されています。飲料タイプ間の違いは記述的な参考情報にとどまり、質問票自体の今後のさらなる改良が必要だと示唆されています。カフェインとの付き合い方を考えるうえでの一つの手がかりとして、今後の研究の進展が注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:飲料特異的な質問票フレーミングを用いた日本におけるカフェイン飲料摂取動機の飲料文脈依存説の検証(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年08月)