著者の所属・活動拠点の国は、ポルトガルです。
掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
職場や学校、医療・福祉施設などで決まった利用者に食事を提供する給食サービスは、多くの人の日々の食事を担っています。利用者が自由に献立を選べる範囲は限られるため、献立の内容が食生活に与える影響は大きいとされています。近年は価格や手軽さだけでなく、栄養の質や環境への配慮を求める利用者も増えています。
こうした中で注目されているのが「フレキシタリアン」と呼ばれる食べ方です。植物性の食品を中心にしながら、肉や魚などの動物性食品を適度に、ときどき取り入れるもので、肉を完全に断つわけではありません。そのため、さまざまな人が利用する施設の食事にも取り入れやすいと考えられています。一方で、給食サービスで実際に導入すると利用者の受け止め方がどう変わるのかについて、現場での実証的な知見は、とくにポルトガルでは限られていました。
ポルトガルの研究チームは、健康と持続可能性に配慮した献立の選択肢としてフレキシタリアン・メニューを導入し、それが利用者の給食サービスに対する評価の変化と関連しているかを調べました。
どのように調べたか
調査の舞台は、ポルトガルの医療機関にある給食施設です。医療職や事務職員、外部の利用者など、さまざまな成人が利用しています。この施設で、毎日の献立の選択肢の一つとしてフレキシタリアン・メニューが加えられました。このメニューは赤身肉と加工品を使わず、新鮮で旬の地域産の食材を用い、可能な場合は有機食材も取り入れて、植物性の食材を重視して組み立てられています。皿の構成は、野菜などが半分、穀物・いも類が4分の1、卵・魚・白身の肉などのたんぱく源が4分の1とされました。導入にあたっては、職員の研修や、利用者に新メニューの特徴を伝える広報も行われました。
研究チームは、導入前、導入3か月後、導入9か月後の3回、施設で紙の質問票を配って回答を集めました。回答者はそれぞれ107人、130人、79人で、毎回別の利用者集団です。同じ人を追跡したわけではありません。質問票では、料理の品質や盛り付け、提供サービス、運営会社などについて、5段階で評価してもらいました。3回の回答者集団は、性別や学歴などの基本的な特徴に統計的な差がないことが確認されています。
比較対象となる「導入しなかった施設」は設けていません。このため著者らは、結果は導入とその後の評価変化との関連を示すものであり、導入が評価を変えたという因果関係の証明ではないと位置づけています。
主な結果
給食サービス全体への満足度は、調査期間を通じておおむね好意的なまま安定していました。もともと評価が高かったため、さらに大きく改善する余地は小さかった可能性があると論文は述べています。
料理に関する項目では、時間の経過とともに好意的な評価の割合が伸びた項目がいくつかありました。とくに大きく伸びたのは、料理の品質(11ポイント)、料理の新しさ(10ポイント)、食事上の必要への適合(9ポイント)、利用者の期待への適合(9ポイント)です。新しさは全時点で最も評価の低い項目でしたが、9か月後には好意的評価が36%から46%に上がりました。ただし、これらは統計的に有意な差ではなく、傾向として示されたものです。
3時点の間で統計的に有意な差が見られたのは、料理の価格に対する品質の評価だけでした。この項目は導入前のほうが3か月後より高く、9か月後にそれ以上悪化することはありませんでした。著者らは、新しい選択肢が加わった直後の一時的な受け止め方の調整か、毎回異なる回答者集団による自然なばらつきの可能性を挙げています。栄養バランス、料理の種類の豊富さ、量については改善が見られませんでした。新メニューは選択肢の一つとして加えられただけで、献立全体を変えたわけではないことが理由として考えられています。
サービス面では、衛生と食品安全(約80%)、設備(約77%)、職員の対応(約75%)が一貫して高く評価されました。導入によって中心的なサービスの評価が下がった様子は見られませんでした。職員の対応は約5ポイント上昇しましたが、統計的に有意ではありませんでした。研修などの取り組みが同時に行われたため、メニュー自体の寄与とは区別できないとされています。また要旨では、9か月後に環境や社会への責任に関わる運営組織の評価も好意的になったと報告されています。
一方、著者らは注意点も挙げています。9か月後の回答率は26.3%と低く、回答者が偏っている可能性があります。また、回答者には高学歴の人が多く、ほかの利用者層にそのまま当てはまるとは限りません。
この研究が示すこと
統計的に明確な差が出た項目は限られていました。それでも研究チームは、健康と持続可能性に配慮した献立を継続して提供した期間に、給食サービスへの評価が全体として少しずつ好意的になっていったと報告しています。実際の給食施設で、利用者の満足度を損なわずにこうした献立を取り入れられる可能性を示した、現場からの知見といえます。
原著論文の著者・所属:Carmen Costa(Innovation Department, Technical Institute of Human Nutrition, Porto, Portugal)、Carmen Costa(GreenUPorto - Sustainable Agrifood Production Research Centre/Inov4Agro, Faculty of Nutrition and Food Sciences, University of Porto, Porto, Portugal)、Claudia Viegas(School of Health Technology, Polytechnic University of Lisbon, Lisbon, Portugal)、Ada Rocha(GreenUPorto - Sustainable Agrifood Production Research Centre/Inov4Agro, Faculty of Nutrition and Food Sciences, University of Porto, Porto, Portugal)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Carmen Costa, Carmen Costa, Claudia Viegas, et al. Impact of a health and sustainability menu option on consumer perception of Food Service in Portugal. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-08-12. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1880494. 原著ライセンス:CC BY.