この研究は、アメリカの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Digital Health

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref

研究の目的

食事の改善は慢性疾患の予防に重要とされています。しかし診療の現場では時間や人手が限られ、栄養指導を十分に行えないことが少なくありません。研究チームが注目したのは、米国の非営利団体が提供する無料のオンライン栄養教育プログラム「フル・プレート・リビング(FPL)」です。FPLはカロリー計算や厳しい食事制限ではなく、ふだんの食事に果物、野菜、豆類、全粒穀物など食物繊維の多い食品を少しずつ加えることを勧めます。教材メール、自習用の学習モジュール、レシピ、月例のワークショップ、任意参加のオンライン交流の場で構成されています。

これまでのFPLの研究は、主に職場で行われる構造化されたプログラムなどを対象としていました。今回の研究は、利用者が自分のペースで進めるデジタル版のFPLについて、最初の評価とその後の評価を比べ、食事の質、BMI(体格指数)、食物繊維の摂取量、本人が答えた健康関連の指標がどう変化したかを調べることを目的としています。

何をどのように調べたか

著者らは、プログラム運営の過程で集められた、個人を特定できない記録を二次的に分析しました。対象期間は2023年7月から2026年1月です。食事の評価には「Diet ID」というツールが使われました。食事パターンの画像を選ぶ形式で、ふだんの食べ方を推定するものです。このツールから、10点満点の「Diet ID食事の質スコア」が算出されました。米国の食事指針にどれだけ沿っているかを100点満点で示す「健康的食事指数2015(HEI-2015)」、食物繊維量、食品群ごとの摂取量の推定値も得られています。BMIは自己申告の身長と体重から計算されました。このほか、健康的な食品を選ぶ自信、減量への自信、活力、全般的な健康状態、睡眠時間、人とのつながりについての回答も分析に含まれています。

各参加者で最初に記録された評価を「起点」としました。そこから60日以上たった最初の記録を「追跡時」とし、同じ人の中での変化を比べています。なお、最初の評価より前にプログラムを使い始めていた人もいるため、起点は厳密な「開始前」の状態とは限らないと著者らは説明しています。変化の大きさは、データのばらつきを考慮した効果量(Cohenのd)で示されました。多くの項目を同時に検定すると偶然の差が出やすくなるため、それを補正するボンフェローニ法での確認も行われています。

主な結果

4,359人分、7,077件の記録のうち、条件を満たす2回の評価がそろっていたのは392人(9.0%)でした。この集団は女性が87.5%、白人が81.1%を占め、平均年齢は57.7歳でした。追跡記録がない人と比べると、年齢がやや高く、起点の時点で食事の質と食物繊維量がやや高く、推定エネルギー摂取量はやや低い傾向がありました。

2回の評価を比べると、Diet ID食事の質スコアは平均7.20から7.91へ、HEI-2015は73.87から80.24へ上がりました。BMIは31.62から31.03 kg/m²へ下がり、食物繊維は1日あたり約34.0 gから38.9 gへ、平均5.0 g増えていました。いずれも効果量は小さいと報告されています。食品群では、豆類、果物、野菜、全粒穀物、ナッツ・種子類が増えました。精製穀物、甘い飲料、赤肉、加工肉、甘いお菓子は減っていました。ただし多重比較の補正後も差が残ったのは、減少した食品群のうち加工肉と甘いお菓子です。推定エネルギー摂取量には有意な変化がありませんでした。

本人の回答では、健康的な食品を選ぶ自信、減量への自信、活力、全般的な健康状態が改善し、補正後も有意でした。睡眠時間は補正前には改善が見られたものの、補正後は有意ではなくなりました。人とのつながりには変化がありませんでした。また、2回の評価の間隔が長い人ほど、HEI-2015と食物繊維の改善がわずかに小さい傾向がありました。BMIの変化と間隔の長さには関連が見られませんでした。

この研究が示すこと

著者らは、比較対照となるグループがなく、分析対象が再評価を受けた一部の利用者に限られることを強調しています。利用者の自己申告やツールによる推定値に基づく点も、限界として挙げられています。そのため、今回の変化をプログラムの効果と断定することはできず、仮説を生み出すための探索的な結果として位置づけられています。

そのうえで、無料で自分のペースで使えるデジタル栄養プログラムの利用者の一部で、食事の質と食物繊維摂取が小幅ながら良い方向へ変化していたことが示されました。研究チームは、こうした無料のデジタル栄養資源をどう評価していくかを考えるための手がかりとして、この結果をまとめています。

著者:Rebecca K. Kelly(Element Health, Inc., Fairhope, AL, United States)、Amy Hanus(Ardmore Institute of Health, Ardmore, OK, United States)、Janet Calhoun(Ardmore Institute of Health, Ardmore, OK, United States)、Jonathan P. Bonnet(Ardmore Institute of Health, Ardmore, OK, United States)、Jonathan P. Bonnet(Stanford University School of Medicine, Stanford, CA, United States)、Ron Stout(Ardmore Institute of Health, Ardmore, OK, United States)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rebecca K. Kelly, Amy Hanus, Janet Calhoun, et al. Digitally delivered full plate living: associations with diet quality, body mass index, and participant-reported health measures among participants with paired assessments. Frontiers in Digital Health 2026-10-01. DOI: 10.3389/fdgth.2026.1947833. 原著ライセンス:CC BY.