この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Jurnal Pengabdian Masyarakat Indonesia

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ超加工食品の教育が必要とされたのか

著者らがこの取り組みの出発点に置いたのは、現代の食生活の変化によって、10代の若者のあいだで「超加工食品(ultra-processed foods、UPF)」の摂取が増えているという状況です。論文はUPFを、そのまま食べられる、あるいはすぐ出せる状態に工業的に加工された製品で、砂糖・塩・脂肪・着色料・香料・保存料といった添加物を多く含み、素材そのままの食品はほとんど、あるいはまったく含まないものと説明しています。具体例として、インスタント麺、清涼飲料、袋菓子、ソーセージ、ナゲット、冷凍食品が挙げられています。

著者らは先行研究を引きながら、UPFの多量摂取が肥満、2型糖尿病、心疾患、高血圧、がん、精神面の不調、早期死亡といった非感染性疾患(感染でうつる病気ではない慢性の病気)のリスク上昇と関連づけられてきたと整理しています。子どもや10代については、肥満、代謝の異常、喘息、脂質の状態の悪化(LDLコレステロールや中性脂肪の上昇など)との関連も報告されているとしています。これらは関連として報告されている知見で、本取り組み自体が検証したものではありません。

そのうえで著者らが対象としたのは、インドネシア・バンダルランプンの少年指導特別施設(LPKA)クラスIIで生活する10代です。著者らは、この環境では新鮮で健康的な食材へのアクセスが限られ、手に入りやすく安く手軽なUPFに傾きやすいと述べています。事前の把握と施設運営側への聞き取りでは、入所している子どもの多くが週3回を超えてUPFを口にしており、その背景として、視覚的な教育の手段がないこと、パッケージの栄養表示の理解が乏しいことが挙げられたと報告されています。これまでの健康に関する働きかけが一方通行で、継続的な伴走がなかったことも課題として記されています。こうした「UPFへの依存の高さ」と「実践的な栄養リテラシーの乏しさ」の隔たりを埋めることが、この地域貢献活動の目的として掲げられました。

何をどのように行い、どう評価したか

活動は同施設で、120分の1回のセッションとして実施されました。対象は12〜18歳の入所者117人と、指導にあたる付き添い職員です。著者らは参加型の教育という方法をとり、双方向的な講義、グループでの話し合い、パッケージの表示を読む実習を組み合わせました。あわせて、10代に伝わりやすい表現でデザインした教育用ポスターを作成し、栄養の専門家による内容の確認を経て、施設内に掲示しています。

セッションの時間配分も報告されています。開始と事前テストに15分、ポスターを用いてUPFの概念・種類・健康への影響を扱う双方向的な講義に60分、日常でよく食べているUPFを洗い出すグループ討論に25分、事後テストと満足度調査、締めくくりに20分という流れです。

効果の確認には、活動前と活動後の同じ質問紙(多肢選択式)による知識の測定が用いられました。著者らは、この質問紙が専門家による内容妥当性の確認と、同様の10代集団での信頼性の確認(クロンバックのアルファが0.70超)を経ていると記しています。健康的な食品の選び方に対する姿勢は、同じく妥当性を確認したリッカート尺度の質問紙で測られました。このほか、参加の様子の観察、写真による記録、終了時の満足度調査も行われています。データは記述統計で集計され、平均点、スコアが20%以上伸びた人の割合、前向きな姿勢を示した人の割合、満足度の割合が算出されました。なお要旨では対応のあるt検定による統計解析にも言及されています。

著者らはあらかじめ達成目標を定めていました。参加者の75%以上が知識スコアを20%以上伸ばすこと、70%以上が健康的な食品選択に前向きな姿勢を示すこと、ポスターを施設内の要所3か所以上に掲示すること、満足度が80%以上であることです。

報告された主な結果

知識テストの平均点は、事前が58.2点(標準偏差±10.5)、事後が78.6点(±8.2)でした。著者らはこれを20.4点、35.1%の上昇と記述しています。スコアが20%以上伸びた参加者は82.3%で、目標の75%を上回りました。伸びが最も大きかったのは、UPFの種類を見分ける項目(42%の上昇)と、パッケージの表示を読む力(38%の上昇)だったと報告されています。

健康的な食品選択への姿勢については、事後の時点で76.5%が前向きな姿勢を示し、目標の70%を上回りました。参加者からは、UPFを減らしたい、栄養成分を見て食べ物を選びたいという意向が示されたとされます。ただし著者らは、この結果を「行動への意図」として慎重に受け止めるべきだと自ら注意を促しています。施設という閉じた環境では周囲に合わせる偏り(同調バイアス)が働きうるため、監督下での姿勢の変化は状況に左右されやすく、institutionalな統制が緩んだときに実際の行動として定着するかどうかが本当の課題だという指摘です。

活動の進行面では、参加者の積極的な参加と高い意欲が観察され、とくに役割演技やグループ討論で顕著だったと記されています。満足度調査では85.7%が「とても満足」または「満足」と回答し、目標の80%を上回りました。評価が高かったのは、双方向的な方法(90%)、内容の分かりやすさ(87%)、思い出すきっかけとしてのポスター配布(92%)でした。表示を読む実習の時間を増やしてほしいという要望もあったとされます。ポスターは目標どおり、食堂、寮、活動室の3か所に掲示されました。

著者らは同時に、この取り組みの限界も明確に挙げています。第一に、120分1回のみの教育では、根づいた習慣を動かす力に本来的な限界があり、追加の復習の機会がなければ数週間のうちに知識が薄れていく恐れがあるという点です。第二に、入所者は施設が用意する主な食事の献立を自分で決められないため、表示を読む力が高まっても、その影響が及ぶのは売店や家族の面会を通じて自分で手に入れる間食の選択にとどまり、日々の主要な献立の構成には及ばないという点です。これらを踏まえ、著者らは施設の食事運営を担う側との協働による健康的な間食の調達指針づくりや献立の見直し、成績の良かった入所者を仲間同士の指導役として育てること、栄養リテラシーを既存の指導プログラムに組み込むこと、訓練を受けた職員による定期的な見守りなどを提案しています。

この取り組みが示したこと

論文が報告しているのは、参加型の栄養教育を1回行ったことで、少年指導施設で暮らす10代のUPFに関する知識と、健康的な食品を選ぼうとする姿勢が、設定された目標を上回る水準まで変化したという結果です。著者らは、この活動の主な貢献を、施設内にあった情報の空白を埋める参加型の栄養教育モデルを提供した点に置いています。

同時に著者らが自ら述べているように、知識や姿勢の変化は行動の変化そのものではなく、1回の教育には持続性の限界があり、食事の内容を自分で選べない環境では働きかけの及ぶ範囲も限られます。知識を伝える取り組みと、食べ物が実際に用意される仕組みの両方を視野に入れる必要がある——報告された結果と限界を併せ読むと、そうした見方が浮かび上がってきます。

著者:Sefanadia Putri(Jurusan Gizi, Poltekkes Kemenkes Tanjung Karang, Indonesia)、Dewi Sri Sumardilah(Jurusan Gizi, Poltekkes Kemenkes Tanjung Karang, Indonesia)、Roza Mulyani(Jurusan Gizi, Poltekkes Kemenkes Tanjung Karang, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sefanadia Putri, Dewi Sri Sumardilah, Roza Mulyani. Edukasi Tentang Makanan Ultra Proses dan Dampak Bagi Kesehatan. Jurnal Pengabdian Masyarakat Indonesia 2026-09-02. DOI: 10.52436/1.jpmi.4818. 原著ライセンス:CC BY.