著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:Dietetics
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
大腸がんは世界で患者数・死亡数ともに多いがんです。著者らによれば、欧米のいくつかの国では発症が増えており、50歳未満で診断される若年発症の例も増加しています。生活習慣のうち変えられる要因として、赤肉や加工肉の摂取と大腸がんの関係は長く研究されてきましたが、研究ごとに結果の強さや条件が異なっていました。
著者らは、2015年から2025年に発表された疫学研究を幅広く集め、赤肉・加工肉の摂取と大腸がんリスクの関連について現在どのような知見があるかを整理しました。あわせて、提案されている生物学的な仕組みをまとめ、性別・年齢・地域・腫瘍のタイプなどによって関連が変わるかどうかも検討しています。
このレビューでいう赤肉は、牛・豚・羊・ヤギ・馬など哺乳類の筋肉の肉です。加工肉は動物の種類ではなく作り方で定義され、塩漬け、燻製、塩蔵、亜硝酸塩などの保存料の添加といった加工を経た肉を指します。
何をどのように調べたか
研究チームは「スコーピングレビュー」という手法を用いました。これは、ある分野でどのような研究が行われ、どのような結果が報告されているかを地図のように整理する方法です。複数の研究の数値を統合して一つの効果の大きさを算出することは目的としていません。著者らは、研究ごとに設計や肉の定義、食事調査の方法が大きく異なるため、数値の統合には向かないと説明しています。
医学文献データベースのPubMed/MEDLINEを検索し、成人を対象に、妥当性が確認された食事調査票などで肉の摂取量を測定し、大腸がんの発症または死亡のリスクを数値で示した研究を選びました。2人の研究者がそれぞれ独立して選別とデータの抽出を行っています。
最終的に18件の研究が対象となりました。内訳は、参加者を長期間追跡する前向きコホート研究が11件、大腸がん患者とそうでない人の過去の食事を比べる症例対照研究が7件です。研究はヨーロッパ、北米、アジア、アフリカなどで行われ、参加者は合計240万人以上、大腸がん症例は2万4000例以上にのぼりました。ただし、そのうち3件は英国の同じ大規模集団(UKバイオバンク)のデータを用いているため、参加者数を単純に合計することはできないと著者らは注意を促しています。
主な報告結果
著者らによると、赤肉・加工肉の摂取と大腸がんリスクの関連は研究によってばらつきがありました。肉の種類、比べた摂取量の幅、がんができた部位、調理法、対象集団の特徴によって結果が異なっていたといいます。正の関連、つまり摂取が多い人ほどリスクが高い傾向を報告した研究がいくつもある一方で、全体として統計的に有意な関連を認めなかった研究もありました。
関連を示した例として、UKバイオバンクの研究では、赤肉と加工肉を合わせて1日76グラム食べる人は、1日21グラムの人に比べて大腸がんのリスクが約2割高いと報告されています。同じ集団を用いた別の研究では、加工肉の摂取と大腸がんリスクの関連が、食事中の塩分を考慮しても残ったと報告されています。
一方、デンマークの研究では赤肉・加工肉ともに有意な関連が見られませんでした。イタリアの研究では、加工肉全体では有意ではなかったものの、大腸の一部の部位に限ると関連が認められました。日本の高山市の研究では、男性で赤肉の摂取と大腸がんリスクに関連が見られましたが、女性では見られませんでした。
調理法については、牛ステーキをフライパンで焼いて食べる量が多いほどリスクが高い傾向を報告した研究や、バーベキューやグリルで焼いた赤肉との関連を報告した研究がありました。ただし著者らは、調理法の影響を独立して判断するには証拠が不十分だとしています。また、赤肉や加工肉の一部を野菜や果物などの植物性食品に置き換えると、リスクがわずかに低いことと関連していたというフィンランドの研究も紹介されています。
仕組みとしては、肉に含まれるヘム鉄による酸化ストレス、体内でのN-ニトロソ化合物の生成、高温調理で生じるヘテロサイクリックアミンや多環芳香族炭化水素といった物質、腸内細菌との相互作用などが挙げられています。ただし、この部分は系統的な検索に基づくものではなく、疫学的な結果を解釈するための補足的な整理と位置づけられています。加工肉に由来するニトロシルヘムという物質に注目した大規模な欧州の研究では、大腸がんリスクとの有意な関連は見られませんでした。
研究が示すこと
著者らは、赤肉・加工肉の摂取は大腸がんリスクと関連している可能性があるものの、その関連の強さや一貫性は、肉の種類、対象集団、研究デザインによって異なると結論づけています。性別、年齢、地域、腫瘍のタイプによる違いについての証拠もまちまちで、慎重に解釈すべきだとしています。
また、提案されている生物学的な仕組みは関連にもっともらしさを与えるものの、因果関係を証明するものではないと強調しています。そのうえで著者らは、今回の知見は、赤肉を控えめにし加工肉をできるだけ減らして食物繊維の多いバランスのよい食事をとるという既存の推奨とおおむね一致すると述べています。何をどれだけ食べるかだけでなく、食事全体の中での位置づけも関連に影響しうることが、このレビューから見えてきます。
原著論文の著者・所属:Riccardo Ricchiuti(Faculty of Medicine, University of Ferrara, 44124 Ferrara, Italy)、Nicolò Fabbri(Department of Surgery, Azienda USL of Ferrara, 44124 Ferrara, Italy)、Alberto Cataldi(Department of Surgery, Azienda USL of Ferrara, 44124 Ferrara, Italy)、Antonio Pesce(Department of Surgery, Azienda USL of Ferrara, 44124 Ferrara, Italy; Department of Surgery, Sapienza University of Rome, 00161 Rome, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Riccardo Ricchiuti, Nicolò Fabbri, Alberto Cataldi, et al. Association Between Red and Processed Meat Consumption and Colorectal Cancer Risk: A Scoping Review of the Literature. Dietetics 2026-10-29. DOI: 10.3390/dietetics5050067. 原著ライセンス:CC BY.