近年、環境負荷や健康志向を背景に、大豆などの植物性タンパクを原料とした「肉代替品(ミートアナログ)」への関心が高まっています。こうした製品の多くは「押出成形(エクストルージョン)」という加工技術で作られており、原料を加熱・加圧しながら押し出すことで、肉のような繊維状の食感を作り出しています。今回紹介する研究では、大豆ではなく分離米タンパクを10%配合した低水分肉代替品を取り上げ、加工条件が製品の性質にどう影響するかが調べられました。
研究でわかったこと
研究チームは、分離米タンパクを10%含む原料を低水分の押出成形加工で処理し、水分含量・バレル温度・スクリュー回転速度という3つの加工条件を組み合わせて変化させました(Box–Behnken法という実験計画に基づく手法が用いられています)。できあがった製品については、見た目、保水性、組織の一体性、タンパクの溶けやすさを示す指標、弾力性、まとまりやすさ、噛みごたえ、切断に必要な力といった多角的な項目が評価されました。
その結果、調べた3条件の中でも「水分含量」が、保水性や食感に関わる性質に最も明確な影響を与えることが示されました。具体的には、水分含量を高くすると、保水性・タンパクの溶けやすさ・弾力性・まとまりやすさは高まる傾向が見られた一方で、噛みごたえや切断に必要な力は逆に低下する傾向が示されています。つまり、水分を増やすと「みずみずしさ」や「弾力」は向上するものの、「しっかりとした噛みごたえ」は弱まるという、性質間のトレードオフがあることが示唆されました。
一方、バレル温度とスクリュー回転速度については、どの性質に注目するかによって影響の現れ方が異なり、水分含量との組み合わせの中で捉える必要があることが示されました。噛みごたえを指標とした解析からは、実験の範囲内で水分含量39〜40%、バレル温度141〜144℃、スクリュー回転速度205〜215rpmという条件が、実用的な加工の目安として挙げられています。また補助的な回帰分析からは、水分含量が製品の総合的な品質指標に大きく関わる一方、硬さに関わる性質については別途検討が必要であることも示唆されました。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、分離米タンパクを使った低水分肉代替品について、特定の実験条件の範囲内で加工条件と製品特性の関係を検討したものです。今回得られた最適条件の目安は、あくまで今回の実験で設定された範囲(水分含量・温度・回転速度の各条件)の中での結果であり、原料の配合や加工機の種類が異なれば結果も変わりうる点には留意が必要です。また、この一つの研究だけで肉代替品の加工条件が一般的に確定したわけではなく、今後さらなる検証が積み重ねられていく分野と考えられます。
まとめ
今回の研究では、分離米タンパクを配合した低水分肉代替品において、押出加工時の水分含量が保水性や弾力性、噛みごたえといった品質特性に特に大きく関わることが示されました。水分を増やすと弾力性や保水性は高まる一方で噛みごたえは弱まるというバランスの存在が示唆されており、目指す製品の食感に応じて加工条件を調整することの重要性がうかがえます。米タンパクを使った肉代替品づくりの加工条件を考えるうえで、一つの手がかりとなる研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:押出成形加工条件が分離米タンパク強化低水分肉代替品の理化学的・食感特性に及ぼす影響(フーズ・2026年08月)