ナツメ(jujube)を発酵させて作る「ナツメ酢」は、健康に良い発酵食品として注目されてきました。ただし、原料となるナツメの品種によって、出来上がる酢の成分や働き、香りがどう変わるのかについては、これまであまりよくわかっていませんでした。今回紹介する研究は、中国各地で栽培されている7種類のナツメ品種を使ってそれぞれ酢を作り、その化学的な違いを比較したものです。
対象となったのは、新疆若羌産の「灰枣」、新疆和田産の「駿枣」、寧夏同心産の「小圆枣」、河南霊宝産のナツメ、山東楽陵産の「金糸小枣」、陝西清澗産の「団枣」、河北阜平産のナツメという、産地の異なる7品種です。研究チームはこれらを原料にそれぞれ酢を製造し、ポリフェノールやフラボノイドといった成分の量、抗酸化力、脂質代謝に関わる働き、香り成分、アミノ酸の構成などを比較しました。
品種によって酢の個性がはっきり分かれた
結果として、すべての測定項目で品種による違いが認められました。中でも新疆和田産の「駿枣」を使った酢は、ポリフェノール含有量が1815.63 mg GAE/Lと最も高く、抗酸化力を示すDPPH法の値が768.21 mg VCE/L、FRAP法の値が892.67 mg Trolox/Lと、いずれも7品種中トップでした。さらに、膵リパーゼの働きを32.5%抑える、胆汁酸(コール酸)を35%結合するといった、脂質の代謝に関わる働きも確認されており、研究チームはこの品種を機能性を重視した製品向きだとしています。
一方、新疆若羌産の「灰枣」を使った酢は、総酸度が54.87 g/Lと最も高く、フラボノイド含有量も1168.84 mg RE/Lと高い値を示しました。香り成分についても、確認された41種類の揮発性化合物のうち37種類がこの品種の酢から検出され、7品種の中で最も香りの多様性に富んでいました。アミノ酸の分析では、どの品種の酢にもプロリンという遊離アミノ酸が最も多く含まれていましたが、この「灰枣」と先述の「駿枣」は、体内で作れない必須アミノ酸を含めた全体のアミノ酸バランスも良好だったと報告されています。こうした結果を踏まえ、研究チームは「灰枣」を、酸味と香りのバランスに優れた消費者向け製品に適した品種として位置づけています。
この研究の読み方
この研究は中国産の7つのナツメ品種を対象に行われたものであり、著者らの所属機関を見る限り、日本の研究機関や日本国内の食品・生産に関する記述は含まれていません。今回明らかになったのは、あくまで実験室レベルでの成分・活性・香りの分析結果であり、これらの酢を実際に人が摂取した場合の健康への影響を検証したものではない点に注意が必要です。1つの研究で得られた知見であり、品種選びの一つの科学的な手がかりを示したものと理解するのが適切です。
まとめ
同じ「ナツメ酢」であっても、原料とする品種によって抗酸化成分の量や脂質代謝への働き、香りの豊かさ、アミノ酸バランスには明確な違いが見られました。今回の研究では、新疆和田産の「駿枣」は機能性を重視した製品向き、新疆若羌産の「灰枣」は酸味・香り・風味のバランスに優れた消費者向け製品向きと位置づけられています。原料の品種選定が、発酵食品としてのナツメ酢の品質を左右する重要な要素であることを示す研究といえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Leijuan Yu, Juan Wang, Bangguo Ge, et al. Cultivar-driven variation in chemical composition, bioactivity, and aroma of jujube vinegar. 農業における化学・生物工学 (2026). DOI: 10.1186/s40538-026-01045-4.