著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。

掲載誌:Ukrainian Food Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられてきた副産物に目を向ける

果物の皮や種、ジュースの搾りかす、穀物のふすま(外皮の部分)、野菜くずなど、食品の加工では植物由来の副産物が毎年大量に出ます。これらは多くが廃棄されるか、安価な家畜飼料として使われてきました。しかし実際には、たんぱく質や食物繊維、ポリフェノール、ビタミン、ミネラルを豊富に含んでいます。

著者らは、こうした副産物をたんぱく質や食物繊維を補う食品素材として利用する研究の最新動向と応用の可能性を、総合的に整理することを目的としました。食料安全保障や環境への配慮、資源を循環させる経済への関心が高まるなか、副産物を人の食べ物に戻す取り組みが進んでいることが背景にあります。

131本の研究を整理した方法

この論文は、新しい実験を行った研究ではなく、既存の研究を集めて整理した「総説(レビュー)」です。著者らは、Scopus、Web of Science、PubMed、Google Scholarという文献データベースで、2001年から2025年に発表された研究を検索しました。検索語には植物副産物、食品加工廃棄物、たんぱく質強化、食物繊維、機能性食品、持続可能性などを用いました。

文献の選び方には、PRISMAと呼ばれる、選定の手順を明示するための国際的な指針が使われました。検索と引用の追跡で見つかった235本から重複を除き、2人の評価者がそれぞれ題名と要旨を確認し、さらに本文を読んで絞り込んだ結果、131本が対象となりました。各研究からは、原料や副産物の種類、前処理と加工の方法、たんぱく質と食物繊維の含有量、機能や食感・風味の特徴、安全性、規制に関する情報が取り出され、比較・整理されました。

報告された主な内容

著者らのまとめによると、穀物・果物・野菜の副産物には、たんぱく質が10〜35%、食物繊維が20〜60%含まれ、ポリフェノールやミネラルも含まれています。ただし、その成分や性質は、原料となる植物、加工の条件、成分を取り出す方法によって大きく異なります。たとえば穀物のふすまはたんぱく質15〜25%、食物繊維40〜55%、果物の搾りかすや皮は食物繊維35〜60%、たんぱく質8〜15%、油を搾った後の種子のかすはたんぱく質30〜45%と整理されています。

加工技術の面では、酵素による分解、発酵、微粉砕(粒子を非常に細かくすること)などによって、たんぱく質の溶けやすさや消化のしやすさ、食物繊維の働き、水や油を抱え込む性質、乳化する性質(水と油をなじませる性質)が改善されうると報告されています。こうした素材は、パンなどの焼き菓子、加工食品、植物由来の代替肉、スナック、飲料の栄養価を高める用途で研究されてきました。収集された研究の中には、小麦粉の10〜30%を細かく挽いた小麦ふすまや米ぬかに置き換えると、パンのたんぱく質と食物繊維が増え、食後の血糖値の上がりやすさを示すグリセミック指数(GI)がおよそ70から60前後に下がったという報告も含まれています。

一方で、副産物を入れすぎると食感、色、風味、消費者の受け入れやすさに影響することがあり、食品ごとに適切な配合量を見極める必要があるとされています。収集された研究では、配合率10〜20%程度では色や味、食感への影響が好ましいか小さい一方、30%を超えると渋みや色の濃さ、ざらつきが出て食べやすさが下がった例が報告されています。

健康面については、たんぱく質の消化のされやすさ、食物繊維が腸内で発酵される度合い、有効成分が体内で利用される程度に違いがあることを考慮すべきで、期待される健康効果は人を対象とした研究でさらに確認する必要があると著者らは述べています。

安全性では、多くの副産物は汚染物質が比較的少ないものの、水分や栄養が多いためカビや細菌が増えやすく、カビ毒、微生物汚染、アレルギーの原因となる成分への対策が必要とされています。また、原料ごとの品質のばらつきや加工方法が標準化されていないことが素材の品質に影響しうること、欧州連合、米国、アジア諸国で規制が異なることが大規模な商業化や国際取引の妨げになりうることも指摘されています。環境面では、副産物を食品素材として再利用すると、埋め立てや焼却に比べて温室効果ガスの排出を減らせるとする評価研究が紹介されています。

この総説が示すこと

著者らは、植物由来の食品加工副産物を、機能性食品の開発に向けた持続可能なたんぱく質と食物繊維の有望な供給源と位置づけています。同時に、栄養を高めるだけでは実用化は成り立たず、加工技術、食感や風味、安全管理、品質のそろえ方、各国の規制への対応を一体として考える必要があることを、多くの研究の整理から示しています。これまで「ごみ」とされてきたものを食の資源として見直すうえで、何が分かっていて何がまだ課題なのかを見渡せる内容となっています。

原著論文の著者・所属:Eunjeong Park(- Dongguk University , Seoul , Republic of Korea)、Ki Han Kwon(- Kookmin University , Seoul , Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Eunjeong Park, Ki Han Kwon. Plant‐derived food processing by-products as functional protein and fiber enrichers. Ukrainian Food Journal 2026-09-01. DOI: 10.24263/2304-974x-2026-15-3-6. 原著ライセンス:CC BY.