野菜や果物の生産現場では、収穫後に出る規格外品や皮・芯などの「果物廃棄物」をどう活用するかが課題になっています。化学肥料であるNPK肥料(窒素・リン酸・カリウムを含む肥料)だけに頼るのではなく、こうした廃棄物を堆肥化して土に還すことができれば、資源の有効活用と土づくりの両立につながるかもしれません。今回紹介する研究は、トマト・リンゴ・ブドウ由来の堆肥や家畜由来の厩肥、そしてNPK肥料を単独または組み合わせて使ったとき、トマトの収量や品質、土壌の状態、さらにその後に同じ畑で育てたホウレンソウの生育にどのような違いが出るのかを、実際の畑で調べたものです。
研究でわかったこと
この研究は2020〜2021年にかけて、トキャト・ガズィオスマンパシャ大学(トルコ)の圃場で行われました。トマト・リンゴ・ブドウの堆肥と厩肥を、それぞれ1ヘクタールあたり10トンまたは20トンの量で施用し、さらにNPK肥料と組み合わせる場合・組み合わせない場合を含めて、無施肥の対照区も含む合計18種類の施肥パターンが比較されました。実験は無作為配置による区画法で、3回の繰り返しをもって行われています。
その結果、堆肥を施用した区画では、無施肥の対照区に比べてトマトの収量が有意に増加したと報告されています。中でもトマト堆肥とブドウ堆肥は、同じ施用量で比べると厩肥よりも収量の増加幅が大きかったとされています。また、堆肥や厩肥にNPK肥料を組み合わせて施用した場合にも、収量の増加がみられたということです。
さらに興味深いのは、トマト収穫後に同じ区画で栽培された「後作」のホウレンソウでの結果です。厩肥やブドウ堆肥を施用した区画で、ホウレンソウの生育量(バイオマス)が最も多くなったと報告されています。特に、トマト栽培時に厩肥や堆肥を施していた区画では、ホウレンソウ栽培時に追加の肥料を与えなくても、対照区に比べて厩肥区で555.76%、堆肥区で541.53%というバイオマスの増加が確認されたとされています。これはNPK肥料のみを施した区画と比べても、それぞれ376.25%、366.62%の増加に相当するということです。つまり、前作で施した堆肥や厩肥の効果が、次の作物にも持ち越されて現れた可能性が示唆されています。
土壌そのものの変化についても調べられており、堆肥や厩肥の施用によって土壌中の有機物含量や、一部の主要な養分(マクロ栄養素)の量が増加したとされる一方で、土壌のpH(酸性・アルカリ性の指標)への影響は限定的だったと報告されています。また、トマトの果実品質については、可溶性固形分(糖分などの含有量の指標とされる項目)といった重要な特性に、これらの施肥処理がよい影響を与えたことが確認されたとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の大学の圃場で、特定の期間・条件のもとで行われた一つの実験です。堆肥の原料(トマト・リンゴ・ブドウ)や施用量、気候や土壌条件が異なれば、結果も変わる可能性があります。また、収量や生育量の増加が報告されている一方で、これらの数値がどの程度他の農地や作物にも当てはまるかは、この論文の要旨だけからは判断できません。堆肥や厩肥の活用が土づくりや収量向上に有用である可能性を示すデータとして興味深い一方、結論が確定したものではなく、今後の追試や別条件での検証が待たれる段階といえそうです。
まとめ
この研究では、果物廃棄物からつくった堆肥や厩肥をトマト栽培に用いることで、化学肥料だけの場合よりも収量が増加したと報告されており、さらにその効果がトマト収穫後の後作ホウレンソウの生育にも及んだ可能性が示唆されています。同時に、土壌の有機物や養分含量の改善、トマト果実の品質面でのプラスの影響も確認されたとされ、廃棄物を活用した堆肥化が、単発の収量アップだけでなく、土壌の持続的な肥沃度づくりにも関わりうるものとして紹介されています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:統合された果物廃棄物堆肥・厩肥・NPK施肥下での土壌肥沃度、トマト収量・品質、後作ホウレンソウの生育性の検証(タリム・ビリムレリ・デルギシ(農業科学ジャーナル)・2026年07月)