著者の所属・活動拠点の国は、セルビアです。

掲載誌:Metabolites

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

植物性食品を中心とした食事は、慢性的な炎症が関わる病気のリスクの低さや、炎症の目安として広く使われるC反応性タンパク質(CRP)の低さと関連することが報告されてきました。一方で、免疫細胞どうしの情報伝達を担うタンパク質である「サイトカイン」(インターロイキン、腫瘍壊死因子、インターフェロンなど)や、免疫細胞を呼び寄せる「ケモカイン」と食事との関係については、これまでの研究が少なく、結果も一致していませんでした。

著者らは、過去の研究の多くが持病のある人や妊婦、高齢者など特定の集団を対象としていたり、人数が少なかったりした点を指摘しています。そこで研究チームは、セルビアのベオグラードに住む健康な成人を対象に、菜食の人と雑食の人の血液中のサイトカイン・ケモカイン濃度を比較し、あわせて食事内容などとの関連を探索的に調べました。

どのように調べたか

対象は25〜50歳で、体格指数(BMI)が標準範囲にあり、急性・慢性の病気やアレルギーのない160人です。内訳は雑食の人80人と、2年以上菜食を続けている人80人(動物性食品を一切とらないヴィーガン67人、肉や魚を食べず卵や乳製品はとるラクト・オボ・ベジタリアン13人)で、各グループとも男女40人ずつとしました。

研究チームは、空腹時に採取した血清について、13種類のサイトカイン・ケモカインの濃度を、多数の物質を一度に測れるビーズを用いた測定法とフローサイトメトリーで測定しました。さらに身体計測、一般的な血液検査や生化学検査、CRP、そして2回の24時間思い出し法による食事摂取量も調べました。グループ間の比較では、性別、年齢、BMI、喫煙、身体活動の影響を考慮した解析も行い、多数の項目を同時に検定することによる偶然の差を抑える統計的補正も加えています。

主な結果

菜食と雑食の2つのグループの間で、性別、年齢、喫煙、身体活動、体格に差はありませんでした。そのうえで、菜食の人では、TNF-α、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-17A、IFN-γ、IFN-α2の濃度が雑食の人より低く、白血球数とリンパ球数も少ないことが報告されました。一方、IL-1β、IL-18、IL-33、IL-23、MCP-1、そしてCRPには差が見られませんでした。

これらの差は、性別や年齢などの影響を考慮した後も残りましたが、多重検定の補正後に統計的に有意なまま残った項目は少なくなったと論文は述べています。また、サイトカインの差はヴィーガンとラクト・オボ・ベジタリアンのどちらのサブグループでもおおむね見られました。こうした差と並んで、菜食の人と雑食の人の間では多くの食事要素にも大きな違いがありました。回帰分析でも、菜食という食事パターンと、差の見られたサイトカイン濃度との関連が確認されたとしています。

一般的な血液生化学検査では、菜食の人で総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、尿素、クレアチニンが低いといった違いも報告されています。

この研究が示すこと

著者らは、この集団では菜食の食事パターンが、一部のサイトカイン・ケモカインの血中濃度の低さと関連していたと結論づけています。ただし、多重検定の補正後に残った関連は限られていたこと、食事要素どうしが強く連動していてどの要素が関わるのかを切り分けにくいこと、そして因果関係は確かめられないことを、著者ら自身が限界として挙げています。

この研究は、健康な成人で菜食と雑食の違いが免疫に関わる複数の血中物質の濃度差と結びついている可能性を示したもので、食事と免疫の関係を考えるうえでの手がかりを提供しています。

原著論文の著者・所属:Ivana Šarac(Group for Nutrition and Metabolism, Centre of Research Excellence in Nutrition and Metabolism, Institute for Medical Research, National Institute of the Republic of Serbia, University of Belgrade, 11000 Belgrade, Serbia)、Slavko Mojsilović(Group for Hematology and Stem Cells, Institute for Medical Research, National Institute of the Republic of Serbia, University of Belgrade, 11000 Belgrade, Serbia)、Marta Despotović(Group for Nutrition and Metabolism, Centre of Research Excellence in Nutrition and Metabolism, Institute for Medical Research, National Institute of the Republic of Serbia, University of Belgrade, 11000 Belgrade, Serbia)、Milan Ivanov(Group for Cardiovascular Physiology, Institute for Medical Research, National Institute of the Republic of Serbia, University of Belgrade, 11000 Belgrade, Serbia)、Marija Paunović(Group for Nutritional Biochemistry and Dietology, Centre of Research Excellence in Nutrition and Metabolism, Institute for Medical Research, National Institute of the Republic of Serbia, University of Belgrade, 11000 Belgrade, Serbia)、Jelena Milešević(Group for Nutrition and Metabolism, Centre of Research Excellence in Nutrition and Metabolism, Institute for Medical Research, National Institute of the Republic of Serbia, University of Belgrade, 11000 Belgrade, Serbia)、Marija Takić(Group for Nutrition and Metabolism, Centre of Research Excellence in Nutrition and Metabolism, Institute for Medical Research, National Institute of the Republic of Serbia, University of Belgrade, 11000 Belgrade, Serbia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ivana Šarac, Slavko Mojsilović, Marta Despotović, et al. Differences in Serum Cytokine Profiles Between Vegetarians and Omnivores: Exploratory Assessment of Dietary Factors. Metabolites 2026-10-19. DOI: 10.3390/metabo16100793. 原著ライセンス:CC BY.