この研究は、パナマの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Beverages

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

アルコールを含まない、または少ないビールへの関心が高まっています。果物を加えれば風味や成分の面で特色を出せますが、果肉に含まれるペクチン(果物の細胞をつなぐ食物繊維の一種)などがビールを濁らせ、見た目や安定性を損なうことがあります。

パナマの研究チームは、アルコールの生成を抑える性質をもつビール酵母を使ってビールを造り、マンゴー(品種「ケント」)の果肉を加えた場合の変化を調べました。あわせて、ペクチンを分解する酵素で果肉をあらかじめ処理すると、濁りや成分がどう変わるかも検討しました。目的は、成分面の充実と見た目の安定性とのバランスが最もよい配合を見つけることでした。

どのように調べたか

研究チームは、試験規模で醸造・熟成させたビールをもとに、4種類の試料を用意しました。何も加えないビール、果肉を重量比15%加えたビール、酵素で処理した果肉を15%加えたビール、そして果肉の代わりに水で同じ割合に薄めたビールです。最後の試料は、果肉を加えた試料の変化が果物そのものによるのか、単に薄まったことによるのかを見分けるために設けられました。酵素処理は、果肉に酵素を0.15%加えて40℃で12時間置く方法でした。

測定したのは、アルコール度数、食物繊維量、ポリフェノールの総量、濁り、抗酸化能です。抗酸化能は、反応の仕組みが異なるABTS、ORAC、FRAPという3種類の試験管内の測定法で評価しました。このうちFRAPは、試料が鉄イオンを還元する力を指標とする方法です。

主な結果

果肉を加えると、食物繊維と濁りが統計的にはっきり増えました。食物繊維は、何も加えないビールの1リットルあたり0.33グラムから1.57グラムに増加しました。濁りは30倍以上に高まりました。一方、ポリフェノールの総量も果肉入りの試料で平均値が高めでしたが、統計的に意味のある差とはいえず、増える傾向にとどまりました。

果肉を酵素で処理しておくと、果肉だけを加えた場合に比べて濁りが約71%減りました。抗酸化能については測定法によって結果が分かれました。FRAPでは酵素処理した果肉入りの試料が最も高く、ほかの3試料をいずれも有意に上回りました。研究チームは、酵素で果肉の組織が分解され、組織に結びついていたフェノール類が放出されたためと考えています。一方、ABTSとORACでは、果肉や酵素処理による向上ははっきりしませんでした。また、酵素処理した試料では、果肉だけの試料よりも食物繊維量がやや少なくなりました。

当初はアルコール度数0.5%以下の「ノンアルコール」相当を目指していましたが、実際の度数は1.31〜1.60%でした。そのため論文では、この製品を「アルコール度数を抑えたビール」と位置づけています。著者らは、麦汁の組成や発酵の進み具合の管理方法を見直す必要があると述べています。

この研究が示すこと

著者らは、評価した配合のなかで、酵素処理した果肉を加えたビールが最もバランスがよいと結論づけています。FRAPで測った還元力の向上と、濁りの大幅な低減を両立していたためです。果肉をそのまま加えると成分面の上乗せは大きい一方、濁りが過剰になりました。果物を加えたビールでは成分と見た目の安定性がトレードオフになりやすく、酵素処理はその折り合いをつける一つの手段になりうることを、この研究は試験規模のデータで示しています。ただし、官能評価(実際の味や香りの評価)は今回の調査範囲に含まれていません。

著者:Cristian E. Biendicho-Melgar(Grupo de Investigación en Ciencia y Tecnología Innovadora en Alimentos, Facultad de Ciencias y Tecnología, Universidad Tecnológica de Panamá, Panama City 0819-07289, Panama)、Indira Franco(Grupo de Investigación en Ciencia y Tecnología Innovadora en Alimentos, Facultad de Ciencias y Tecnología, Universidad Tecnológica de Panamá, Panama City 0819-07289, Panama)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cristian E. Biendicho-Melgar, Indira Franco. Evaluation of the Effect of Mango Pulp (Mangifera indica “Kent”) Addition and Its Pectinolytic Enzyme Treatment on Selected Physicochemical and Functional Properties of a Reduced-Alcohol Beer Produced with Safbrew La-01 Yeast. Beverages 2026-10-09. DOI: 10.3390/beverages12100121. 原著ライセンス:CC BY.