著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:ARMATUR Artikel Teknik Mesin & Manufaktur

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

レトルト殺菌は、高温と管理された圧力を組み合わせて食品中の病原菌や腐敗菌を不活性化する加熱処理技術です。缶詰やレトルトパウチ、調理済み食品などに広く使われ、常温で長く保存できる食品づくりを支えています。著者らによると、殺菌の効果は、レトルト機の内部で温度がどれだけ均一に分布するかと、蒸気がどのように流れるかに左右されます。

研究チームは、蒸気の温度と流れる速さが、レトルト機の熱的な性能(熱の伝わりやすさや温度分布)と流体力学的な性能(流れや圧力の振る舞い)にどう影響するかを評価しました。あわせて、熱の伝わり方を良くする運転条件を見極めることも目的としています。

コンピューター上で条件を変えて調べる

研究には、流体の動きと熱の移動をコンピューター上で計算する数値流体力学(CFD)という手法が使われました。研究チームは、入口の蒸気温度を115℃から123℃まで2℃刻みで5段階、蒸気の流速を毎秒2メートルから10メートルまで5段階に変えて計算しました。そのうえで、レトルト機の表面温度、熱伝達係数(流体から表面への熱の伝わりやすさを示す値)、単位面積あたりの伝熱量、内部の温度分布、圧力損失(入口と出口の圧力差)を分析しています。

CFDでは、計算する空間を「メッシュ」と呼ばれる細かな要素に分割します。著者らは、要素数を約115万から約403万まで4通りに変えて、結果が要素数にほとんど左右されないことを確かめました。その結果、約303万要素の設定を以降の計算に採用しています。さらに、計算結果を実験データと比べ、モデルが実際の状態をよく再現していることを確認したと報告しています。たとえば熱伝達係数では、実験値と計算値の差はおよそ4.6〜5.1%でした。

主な結果

蒸気の流速が毎秒2メートルの条件では、運転温度を上げるとレトルト表面の温度も上がりました。表面温度は、115℃での175.965℃から、123℃では189.545℃になりました。熱伝達係数も、115℃での5.88〜5.99 W/m²・℃から、123℃では6.67〜6.74 W/m²・℃に増えています。単位面積あたりの伝熱量も、約1320 W/m²から約1371 W/m²に増えました。著者らは、温度が高い蒸気ほど多くの熱エネルギーを運び、表面へ熱がより強く伝わるためだと説明しています。

一方、運転温度を変えても圧力の変化は比較的小さく、温度が圧力損失に与える影響は小さいと報告されています。

流速については、毎秒2メートルや4メートルといった遅い流れでは熱の広がりが遅く、入口付近と離れた場所で温度に差が出やすいとされました。流速を上げると蒸気の勢いが増し、熱がより速く、より均一に行き渡る傾向が示されています。ただし代償もあります。毎秒2メートルで0.352〜0.391パスカルだった圧力損失は、毎秒10メートルでは約4.272〜4.309パスカルに増えました。また論文では、流れが速いと渦や流れのはがれが生じる可能性があり、熱の分布に影響しうることも指摘されています。

研究が示すこと

この研究は、蒸気の温度を上げると熱の伝わりが強まり、流速を上げると熱が均一に行き渡りやすくなる一方で、圧力損失が大きくなるというトレードオフを数値計算で示しました。著者らは、レトルト機の性能を最適化するには、計算条件の設定に加えて、運転温度と蒸気の流速を同時に考える必要があると結論づけています。そうすることで、流れの特性を保ちながら熱の伝わり方を高められるとしています。

原著論文の著者・所属:Risqyka Imanuddin(Program Studi Teknik Mesin, Universitas Persatuan Guru Republik Indonesia Semarang, Jawa Tengah 50232, Indonesia)、Muhamad Safi'i(Universitas PGRI Semarang)、Hisyam Ma'mun(Universitas PGRI Semarang)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Risqyka Imanuddin, Muhamad Safi'i, Hisyam Ma'mun. Kaji CFD Efek Temperatur dan Kecepatan Aliran Uap terhadap Performa Termal dan Hidrodinamik Mesin Retort. ARMATUR Artikel Teknik Mesin & Manufaktur 2026-11-01. DOI: 10.24127/armatur.v8i1.12937. 原著ライセンス:CC BY.