魚は良質な動物性たんぱく質の供給源として、バランスの良い食生活に欠かせない食品のひとつとされています。世界的に見ても魚介類の消費は増加傾向にあると報告されていますが、その一方で、消費者が実際にどのような理由で魚を選んでいるのかは、地域や魚の種類によって十分に解明されていない部分も多いようです。今回紹介するのは、西アフリカ・ガンビアの西海岸地域に暮らすナマズ消費者を対象に、購入や消費の意思決定に影響する要因を調べた研究です。

ナマズはガンビアで広く食べられている魚のひとつですが、消費者が価格や鮮度、味、安全性、栄養価、あるいは動物福祉や生産方法といった持続可能性に関わる要素のうち、何を重視して購入を決めているのかは、これまであまり明らかにされていませんでした。

研究でわかったこと

この研究では、ナマズを消費している208名を対象に調査が行われました。分析には「ベスト・ワースト・スケーリング(BWS)」という手法が用いられています。これは、複数の属性の中から「最も重要だと思うもの」と「最も重要でないと思うもの」を選んでもらうことを繰り返し、属性ごとの重要度を相対的に把握する手法です。あわせて、見かけ上は無関係に見える2つの選択(この場合は新鮮なナマズと燻製ナマズへの選好)を同時に分析できる「見かけ上無関係な二変量プロビット回帰」という統計手法も使われ、消費者の選好を左右する要因が探られました。

その結果、ナマズ消費者は、動物福祉や生産方法といった長期的な持続可能性に関わる要素よりも、健康に関わる懸念(安全性や栄養価)や品質(鮮度や味)を優先する傾向が示されたということです。

さらに、新鮮なナマズおよび燻製ナマズに対する消費者の選好には、水揚げ地の市場へのアクセスのしやすさ、価格に対する意識、味、そして健康上のメリットが統計的に有意な影響(p<0.05)を与えていることも報告されています。

これらの結果を踏まえ、研究では、衛生的な餌やり、より安全な保存方法、生産・流通過程における水質管理といった、社会的に責任のある取り組みを促すための規制強化の必要性が指摘されています。こうした取り組みは、ナマズの生産・流通に関わる事業者が品質管理の基準を満たし、消費者が望む品質の製品を入手できるようにするうえで重要だとされています。あわせて、責任あるアクアカルチャー(養殖)の実践や動物福祉に関する啓発活動を政策に組み込むことが、公衆衛生の保護と持続可能な養殖システムの長期的な発展を支えるうえで欠かせないとも述べられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、ガンビア西海岸地域のナマズ消費者208名を対象にした調査であり、得られた知見がそのまま他の地域や他の魚種にも当てはまるとは限りません。また、統計的な関連性が示されたことと、特定の要因が消費行動の「原因」であると証明されたこととは異なる点にも留意が必要です。一つの研究であり、これによって結論が確定したわけではない、という視点で読むのが適切でしょう。

まとめ

今回の研究では、ガンビア西海岸地域のナマズ消費者が、動物福祉や生産方法などの持続可能性要因よりも、安全性・栄養価といった健康面や、鮮度・味といった品質面を重視する傾向にあることが示されました。また、市場へのアクセスや価格意識、味、健康上のメリットが、新鮮・燻製それぞれのナマズへの選好に影響することも報告されています。魚食をめぐる消費者の選択の背景には、こうした複数の要因が絡み合っていることがうかがえる研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ナマズの購入・消費に関する意思決定:ガンビア西海岸地域の消費者にとって最も重要な属性は何か?(アクアカルチャー・レポーツ・2026年09月掲載予定)