この研究は、アメリカの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Marine Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を明らかにしようとしたのか
韓国の大型まき網漁業が水揚げするマサバ(Scomber japonicus)は、近年「魚が小さくなった」と懸念されてきました。漁獲量そのものは比較的安定しているのに、市場に並ぶのは小型魚ばかり。これは資源全体が小型化している兆候ではないか、という見方です。
研究チームは、この読み解き方に注意を促します。商業的な漁獲物のサイズ構成は、資源のサイズ構成をそのまま映す鏡ではなく、漁船団がいつどこで操業するか、漁具がどのサイズを選択的に獲るか、そして漁獲物を引き取る市場のあり方によっても左右されるためです。そこで著者らは、水揚げが小型に偏る現象が、資源そのものの「年齢ごとの体長」の低下を必要とするのか、それとも漁業側の構造変化で説明できるのかを問いました。なお著者らは、年齢を調べるデータを持たないため年齢ごとの体長は測定しておらず、資源側の小型化を確認することも否定することもできないと明記しています。
どのように調べたか
著者らが用いたのは三種類の記録です。第一に、釜山の共同魚市場における2014年から2025年までの競り記録。マサバは大きい順に1級から4級までの四つの商業規格で取引されており、この記録からは規格別の水揚げ重量・金額と、漁獲された海区がわかります。第二に、国立水産科学院(NIFS)の精密調査による個体ごとの尾叉長(口先から尾の付け根までの長さ)と体重の測定値。これは各規格の箱から抜き取った魚を測ったもので、規格ごとの体長分布を与えます。第三に、海区・日付ごとの漁獲記録で、漁場の位置の変化を追えます。
著者らは、規格別の水揚げ重量をその規格の平均体重で割って尾数に換算し、規格ごとの実測体長分布と組み合わせて、水揚げ物全体の体長構成を再構成しました。4級の箱には1級の三〜四倍の尾数が入るため、この尾数換算が欠かせないと説明されています。さらに、成熟した個体が半数に達する体長(Lm50)を産卵期の雌の測定値から推定し、29.5 cmという値を得ました。漁場の変化は、対象海域である東海(日本海)南部——著者らが「SES」と呼ぶ、韓国南東岸沖の19統計海区——の漁獲シェアや、母港である釜山からの漁獲加重距離などで数値化しています。これらに加えて、輸出統計、為替レート、衛星による海面水温のデータを経済的・環境的な背景として突き合わせました。
報告された主な結果
まず、水揚げが小型に偏る傾向は近年始まったものではありませんでした。2014年から2025年にかけて、漁獲物の平均尾叉長は28.7 cmから27.9 cmへと動いていますが、統計的に有意な傾向は認められません(p = 0.24)。成熟体長(29.5 cm)を下回る個体の割合も66%から78%へと変化しているものの、やはり有意な傾向はありません(p = 0.15)。小型側の3級と4級を合わせた割合は、この期間を通じて一貫して水揚げ重量の92〜100%を占めていました。つまり、規格別の記録が存在する限りにおいて、この漁業の漁獲物はもともと小型魚に支配されていたことになります。ただし著者らは、12年分という短い年次データでは弱い減少傾向を検出する力が乏しく、緩やかな小型化を排除できるわけではないとも述べています。
変化していたのは、小型魚の「内訳」でした。最小規格である4級の占める割合が水揚げ重量の77%から97%へと増加し(p = 0.003)、2025年に最高値に達しています。興味深いことに、平均尾叉長が最も小さかった年(26.4 cm)と成熟体長未満の割合が最も高かった年(85%)はいずれも2022年であり、2025年ではありません。2025年に記録が更新されたのは魚の大きさではなく、規格構成だったのです。
そして2025年の冬(2024年12月〜2025年2月)、漁場が急激に移動しました。SESが冬季漁獲量に占める割合は83.8%に達し、直前の10年間の0〜36.7%から大きく外れています。船団は母港のずっと近くで操業しており、釜山からの漁獲加重距離は2022年の402 kmに対して2025年は117 kmでした。2001年から2024年までの傾向に照らした単年の偏差として評価すると、SESシェアは残差のz値が+5.3、母港からの距離は−3.2と、いずれも大きな逸脱を示しています。
決定的だったのは、海区別に規格構成を分解した結果です。2025年冬のSESにおける4級の割合は97.0%で、SES以外の海域の75.3%を上回りました。つまり船団が移動した先は、より小さい漁獲物をもたらす漁場でした。著者らは、これは規格構成の違いであって個体が小さいためではないと注意深く述べています。4級の中だけで比べると、SESの魚はむしろわずかに大きかった(平均尾叉長28.1 cmに対して他海域は27.6 cm)からです。
背景にある市場と海洋環境
SESに小型魚が多いこと自体は、生物学から予想されることだと著者らは説明します。済州島や対馬周辺の産卵場で生まれた卵や仔魚は対馬暖流によって東海へと運ばれ、そこで育った若い魚は秋の冷却が進むにつれて南下します。SESはその経路上にあり、育成場に隣接した「中継地」にあたります。一方、伝統的な越冬漁場はさらに南の南海や済州島周辺であり、SESは冬の漁業が歴史的に働いてきた場所ではありません。
経済面では、小型魚の位置づけが大きく変わっていました。韓国では魚のサイズが流通経路を決めており、おおよそ30 cm以上は国内の食用市場、30 cm未満は輸出や缶詰、200 g未満は飼料に向かうとされています。研究チームが実測値を規格ごとに整理したところ、4級は平均尾叉長27.6 cm・平均体重251 gで、83%が30 cmを下回り、25%が200 gを下回りました。対する3級は平均31.8 cmで、83%が30 cm以上——すなわち国内食用の経路に入ります。増加したのはまさに輸出・飼料向けの規格だったわけです。
マサバの輸出は、2014年の2.26万トン・2,800万米ドルから、2025年には14.42万トン・2億米ドルへと増加し、2022年に段差のような変化が起きています。同じ期間に4級が漁業収入に占める割合は47%から89%へ上昇しました。ただし著者らは、この二つの系列の相関(r = 0.69、p = 0.014)は主に共通の上昇傾向を反映したもので、傾向を除いた残差では相関が消える(r = 0.29、p = 0.35)ことを明示しています。またウォン安(1米ドルあたり1,053ウォンから1,421ウォンへ)が輸出受取額を自国通貨で押し上げました。重要なのは、小型魚に価格のプレミアムがついたわけではないという点です。2025年には全規格で価格が上昇しており、最大規格に対する4級の相対価格は0.16から0.15とほとんど変わっていません。変わったのは価格ではなく、大量の小型魚を吸収できる「出口」だったと著者らは述べています。
海洋環境については、SESの10〜12月の平均海面水温が10年あたり+0.35 °C上昇し、秋の冷却が基準値(21.5 °C)に達する日付が10年あたり3.6日遅れていることが示されました。秋が長引けばマサバがこの海域に留まる期間も延び、冬にそこで操業する条件が整います。しかし著者らは、これを「許容的な背景」であって引き金ではないと位置づけます。2025年冬に先立つ2024年秋は、暖かく冷却も遅れていたものの、いずれの指標も過去の傾向に照らして極端ではありませんでした(z = +1.34およびz = +1.78)。また記録全体を通じて、冷却の到達日と翌冬のSESシェアとの間に関係は見られませんでした(r = 0.16、p = 0.46)。同じように秋が遅かった年に、SESへの集中が続いたわけではなかったのです。
この研究が示すこと
著者らの結論は慎重なものです。小型魚に偏った水揚げは、資源全体の小型化を必要とする現象ではなく、漁業の構造変化が相当程度寄与していると考えて矛盾しない——そう述べるにとどめています。2025年の急激な集中については、市場に駆動された漁場移動と整合的だとしつつ、これらのデータでは船団が漁場を選んだことと、その場所での魚の入手しやすさとを切り分けられず、加入(新しい世代の資源への加入)の影響や年齢ごとの体長の低下を排除することもできないと明記しています。実際、2025年にはSESの外でも4級が75%を占めており、小型魚は広く分布していました。
それでもこの研究が示した点は明確です。水揚げされる魚のサイズから資源の状態を読み取ろうとするとき、漁船団がどこで獲ったかという情報を欠いたままでは、資源の変化と漁業の変化を区別できません。競り記録を漁獲海区まで分解したことで、著者らはその手がかりを推測ではなく直接の対応として示しました。小さい魚が並ぶ市場の光景が何を意味するのかを判断するには、魚そのものだけでなく、漁場と市場を合わせて見る必要がある——この研究はそう伝えています。
著者:Taye Yoo(Fisheries Resources Management Division, National Institute of Fisheries Science)、Seokjin Yoon(Fisheries Resources Management Division, National Institute of Fisheries Science)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Taye Yoo, Seokjin Yoon. A fishing-ground shift concentrates the chub mackerel (Scomber japonicus) catch on small fish. Frontiers in Marine Science 2026-09-03. DOI: 10.3389/fmars.2026.1945408. 原著ライセンス:CC BY.