著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Cogent Food & Agriculture

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

所得の上昇にともない、世界の肉の供給は大きく変わりつつあり、食料安全保障や気候変動対策の目標にも関わる問題になっています。よく使われるのは、多くの国を同時点で比べて「豊かな国ほど肉が多いが、ある水準で頭打ちになる」という曲線を描く方法です。しかし、この国どうしの比較から、一つの国が今後どう変わるかを予測できるのかについては、見方が分かれています。

研究チームはこの点を検証するとともに、肉の種類の構成が温室効果ガスの排出にどう影響してきたかを調べました。なお、ここで扱う情報は論文の抄録に基づくものです。

何を調べたか

著者らは40か国について、1990年から2019年までのデータを整理しました。国と年の組み合わせで1,191件の観測があります。使ったデータは、国連食糧農業機関(FAO)の食料需給表から求めた肉の種類別の「見かけの供給量」と、国内総生産(GDP)、都市化の程度、人口です。見かけの供給量とは、生産量や輸出入などから計算した、国内で利用できる量の推計値です。実際に食べた量そのものではありません。

分析は主に四つです。一つ目は、国どうしを比べて所得と肉の供給量の関係を曲線で表すことです。二つ目は、GDPの水準を段階に分け、同じ国の中で時間とともに所得と肉の供給がどう連動してきたかを調べることです。三つ目は、肉の種類の構成が1990年のまま変わらなかったと仮定した場合と比べて、排出量がどう違うかを推計することです。四つ目は、全体の傾向から外れる国の特徴を調べることです。

主な結果

国どうしを比べると、所得と肉の供給量の関係はS字形の曲線になりました。伸び方が変わる転換点は約1万2700ドルで、上限は1人あたり年間約82.5キログラムでした。

一方、同じ国の中での変化を見ると、所得との関連はすべての所得段階で正でした。関連の強さを示す値は0.13から0.67の範囲でした。この値は所得が低い方から四つ目の段階まで高くなり、最も所得の高い段階でも0.64と正のままでした。研究チームは、国どうしの比較で見える「頭打ち」の曲線をそのまま各国の将来に当てはめる考え方とは矛盾する結果だとしています。

肉の種類では、牛肉などの赤身肉から鶏肉への移行が世界全体で進みました。著者らの推計では、これによって1人あたりの肉に関連する温室効果ガス排出量は、1990年の構成のままだった場合より16.8%少なくなりました。ただし、この削減の大きさは国の肉の構成によって異なりました。豚肉が中心の国では11.3%、牛肉が中心の国では19.0%でした。

また、全体の傾向から系統的に外れる国があり、その背景には文化、宗教、政策による食生活の制約があるとしています。

研究が示すこと

著者らは、国どうしの比較から得た頭打ちの曲線を、そのまま各国の将来予測に使うことはできないと結論づけています。さらに、温室効果ガスの算定や食料安全保障の計画では、肉をどれだけ供給するかだけでなく、どの種類の肉で構成されているかも同じくらい重要だと指摘しています。

原著論文の著者・所属:Jing Gao(Frontier Research Institute for Interdisciplinary Sciences, Yantai Institute of Science and Technology)、Dong Lin(Frontier Research Institute for Interdisciplinary Sciences, Yantai Institute of Science and Technology)、Jianfeng Hu(Frontier Research Institute for Interdisciplinary Sciences, Yantai Institute of Science and Technology)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jing Gao, Dong Lin, Jianfeng Hu. Global meat supply transitions and emission heterogeneity: cross-national patterns, food security implications, and pathways to sustainable food systems. Cogent Food & Agriculture 2026-10-20. DOI: 10.1080/23311932.2026.2748711. 原著ライセンス:CC BY.