著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:PLoS ONE
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
アスパルテームは広く使われている人工甘味料ですが、その安全性については懸念も示されてきました。論文によると、アルツハイマー病の患者が増えていることもあり、この点への関心が高まっています。一方で、アスパルテームが神経に有害な作用を持つのか、アルツハイマー病の病態に関わるのかを体系的に調べた研究は限られていると著者らは述べています。
そこで研究チームは、アスパルテームがアルツハイマー病に関連して神経に害を及ぼすとしたら、どのような仕組みが考えられるのかを探りました。コンピューターによる予測と、培養細胞を使った実験を組み合わせています。
コンピューターによる予測
研究チームはまず「ネットワーク毒性学」という手法を用いました。複数の公開データベースの情報を使い、ある物質が作用しうる体内の分子(標的)と、病気に関わる分子との重なりを洗い出す方法です。この分析で、アスパルテームとアルツハイマー病に共通する標的が185個見つかったと報告されています。
次に、タンパク質どうしのつながりを網の目として表す解析を行い、その中心に位置する10個の遺伝子を特定しました。そこにはKDR、CCNE1、GSK-3βなどが含まれます。
さらに「分子ドッキング」という、物質がタンパク質にどの程度結びつきやすいかを計算で予測する手法も使いました。その結果、GSK-3β(−5.002 kcal/mol)とKDR(−5.613 kcal/mol)については結合しやすいと予測され、ほかの中心的な標的も中程度の結合しやすさを示したと報告されています。
細胞実験の結果
予測を確かめるため、研究チームは脳の免疫を担う細胞「ミクログリア」の培養細胞であるBV2細胞を用いて実験しました。アスパルテームを加えると、量が多いほど細胞の生存率が下がり、炎症を促す反応が起きたと報告されています。
具体的には、炎症に関わる一酸化窒素(NO)と、炎症性サイトカインと呼ばれる情報伝達物質(TNF-α、IL-1β、IL-6)の産生が増えました。あわせて、GSK-3β、iNOS、TNF-α、IL-1β、IL-6の発現も高まりました。この変化は、細菌成分のLPSで炎症を起こさせたときの反応に似ていたとされています。
研究が示すこと
著者らは、アスパルテームが複数の信号伝達経路を通じて、BV2ミクログリア細胞に炎症反応を引き起こす可能性があると考察しています。ただし、これは培養細胞と計算予測にもとづく結果です。著者ら自身も、人の神経に対する安全性にこの結果がどう関わるかはまだ確かめられていないと述べています。
研究チームはこの研究を、アスパルテームの神経への安全性をさらに調べるための土台と位置づけています。あわせて、計算予測と実験を組み合わせて食品添加物の神経毒性の可能性を評価する、新しい枠組みも提案しています。
原著論文の著者・所属:Dongyang Li(Guangxi Medical University)、Xuejun Weng(The Second Affiliated Hospital of Guangxi Medical University)、Yijuan Huang(Guangxi Medical University)、Dongni Yang(Guangxi Medical University)、Shunhan Yao(Youjiang Medical University for Nationalities)、Weihao Zheng(Guangxi Medical University)、Xiaohong Jiang(Affiliated Minzu Hospital of Guangxi Medical University)、Yilin Wei(Guangxi Medical University)、Sheng Xu(Guangxi Medical University)、Chunwei Wei(The Second Affiliated Hospital of Guangxi Medical University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dongyang Li, Xuejun Weng, Yijuan Huang, et al. Unveiling the neuroinflammatory potential of aspartame in Alzheimer’s disease: A comprehensive network toxicology and experimental validation approach. PLoS ONE 2026-11-03. DOI: 10.1371/journal.pone.0361766. 原著ライセンス:CC BY.