著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Journal of Racial and Ethnic Health Disparities

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ブラジルでは、先住民や黒人、伝統的な共同体が、地域の自然や暮らしと結びついた食の知識を世代を超えて受け継いできました。一方、こうした人々は、十分で健康的な食事へのアクセスや栄養に関わる健康状態の面で、不平等に直面していると論文は説明しています。

研究チームは、連邦大学の栄養学の学部課程で、受け継がれてきた食の知識、地域の生物資源と文化に根ざした食材、伝統的な食の仕組みがどの程度取り入れられているかを調べました。そのために、教育課程への組み込み方を比較する「カリキュラム主題統合指数(CTII)」を開発しました。文化の違いに対応できる専門職教育と、人種・民族による健康格差を考えることが研究の背景にあります。

何を、どのように調べたか

対象はブラジルの連邦大学40校です。研究チームは、公開されているカリキュラム文書、授業概要、授業計画などを、あらかじめ定めた検索語と採用基準で調べ、関連する科目などを抽出しました。分析の柱は、「伝統的な人々・共同体」「ブラジルの地域の生物資源と文化に根ざした食材」「祖先から受け継がれた食の知識に関する概念」の3つです。最後の柱には、食文化の継承、伝統料理、地域の人々が食のあり方を決める食料主権などが含まれます。

CTIIは、扱うテーマの広がり、科目内での複数の柱の組み合わせ、必修科目としての位置づけ、該当科目の授業時間、関連する具体的な用語の登場状況という5指標を、それぞれ0~1にそろえて同じ重みで平均したものです。値が高いほど、文書上でテーマが広く組み込まれていることを示します。また、該当箇所を文脈に沿って読み、人々、食材、地域、食の実践がどのように結びつけられているかも分析しました。

主な報告結果

研究チームは、40校中34校で関連する科目などを確認し、計163件を分析対象としました。このうち118件、72.4%が必修でした。著者らは、テーマが選択科目だけでなく、必修の教育内容にも取り入れられていると報告しています。ただし、3つの分析の柱をすべて同時に扱っていたのは163件中12件で、7校に集中していました。

CTIIは40校全体で0~0.709、平均0.428でした。関連科目が確認された34校に限ると平均は0.504で、確認されなかった6校は0でした。著者らは、伝統的な食の知識の組み込み方には大学間で大きな違いがあり、全体として部分的で不均一だと解釈しています。

5指標のうち、最も低かったのはテーマの具体性を示す指標でした。食と文化、食料・栄養の保障といった広い概念は扱われていても、特定の伝統的共同体や地域固有の食材に踏み込んだ記述は限られていました。文章の内容を読む分析でも、人々、食材、食の実践、地域を明確に結びつける記述より、一般的な概念や政策に関する記述が多いという傾向が示されました。また、人々・共同体への言及では先住民が中心で、逃亡奴隷の子孫を中心とするキロンボの共同体や、その他の伝統的な人々への言及はより限られていました。

この報告が示すこと

著者らは、授業概要に関連語が登場するだけでは、人々の暮らしや地域に根ざした食の知識が、一貫した形で教育に組み込まれているとはいえないと結論づけています。異なる文化に対応する栄養学教育には、科学的な知識と伝統的な知識を結びつけ、具体的な食材や実践を扱うこと、伝統的共同体の人々が教育に参加することが重要だと述べています。

ただし、この研究が捉えたのは公開文書上の教育内容です。実際の授業や実習、地域での活動を十分に反映していない可能性があり、対象も連邦大学に限られます。CTIIは比較のための探索的な指標で、教育の質や学生の学習成果、健康格差への効果を測るものではありません。また、授業時間の指標は該当科目全体の時間を使っており、伝統的な食の知識だけを教えた時間を示してはいません。

原著論文の著者・所属:Pâmela Gracielle da Fonseca(Department of Nutrition, Nursing School, Universidade Federal de Minas Gerais, Alfredo Balena Avenue, 190, Room 314, Santa Efigênia, Belo Horizonte, Minas Gerais, 30130-100, Brazil. [email protected])、Nathalia Sernizon Guimarães(Department of Nutrition, Nursing School, Universidade Federal de Minas Gerais, Alfredo Balena Avenue, 190, Room 314, Santa Efigênia, Belo Horizonte, Minas Gerais, 30130-100, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Pâmela Gracielle da Fonseca, Nathalia Sernizon Guimarães. Ancestral Food Knowledge in Brazilian Nutrition Curricula: Development of a Curricular Integration Index and Implications for Racial and Ethnic Health Equity. Journal of Racial and Ethnic Health Disparities(出版社:Springer Science+Business Media) 2026-11-05. DOI: 10.1007/s40615-026-03265-8. 原著ライセンス:CC BY.