この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Grasas y Aceites
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
綿花の種子(綿実)からとれる綿実油は、綿産業の副産物として食用油の原料になります。食用にする際には精製され、サラダ油や調理油のほか、マーガリンやソースなどの材料としても使われています。
油の性質は、主成分であるトリアシルグリセロール(TAG)の組成に左右されます。TAGは、グリセロールという骨格に3つの脂肪酸が結合した分子です。そのため、どの脂肪酸がどのような組み合わせで含まれるかが油の性質を決めます。油にはこのほか、植物ステロールなどの微量成分も含まれます。ステロール組成は、油の真正性や品質を判定する「化学的な指紋」としても利用されています。
植物油の製造方法には、主に圧搾法と溶剤抽出法があります。圧搾法は種子を機械的に搾る方法で、化学溶剤を使いません。溶剤抽出法は、ヘキサンなどの溶剤で油を溶かし出す方法で、工業的に広く用いられています。油の成分は、搾油法のほか原料となる品種によっても変わる可能性があります。しかし、品種と搾油法の影響を脂肪酸・TAG・ステロールについて同時に調べた研究は限られていました。成分の違いが主に品種によるのか搾油法によるのかも、はっきりしていませんでした。
著者らはこの点を確かめるため、同じ11品種の綿実から2つの方法で油を得て、成分を比較しました。
何を調べたか
研究チームは、トルコのエーゲ海地方で栽培された11品種の綿実を用いました。まず、種子の千粒重、水分、油分を測定しました。種子の油分は品種によって乾物あたり21.83〜36.71%と幅がありました。
油は2通りの方法で得ました。1つは、加熱処理をしない種子を実験室規模のスクリュー式圧搾機で外部加熱なしに搾る低温圧搾(コールドプレス)です。もう1つは、粉砕・乾燥した種子からn-ヘキサンで6時間かけて油を抽出する溶剤抽出です。どちらの方法も、品種ごとに2つの別々の種子ロットに適用しました。
得られた油について、脂肪酸組成、TAG組成、ステロール組成をクロマトグラフィーで分析しました。クロマトグラフィーは、混合物を成分ごとに分けて量る分析法です。さらに、主成分分析と階層的クラスター分析という多変量解析を行いました。これらは多数の成分データをまとめて扱い、試料どうしの似かよい方を整理する統計手法です。
主な結果
脂肪酸では、どの油でもリノール酸が最も多く含まれていました。その割合は、低温圧搾油で52.85〜64.25%、溶剤抽出油で51.70〜61.74%でした。次に多いのはパルミチン酸とオレイン酸で、綿実油に特徴的な組成と一致していました。リノール酸が最も多かったのはGloria品種の油でした。
TAGでは、リノール酸2つとパルミチン酸1つからなる分子(PLL)が最も多く含まれていました。その割合は、低温圧搾油で24.16〜28.64%、溶剤抽出油で25.89〜29.17%でした。PLLに続いて、リノール酸3つからなるトリリノレイン(LLL)などが多く含まれていました。
ステロールでは、すべての試料でβ-シトステロールが最も多く、全ステロールの8割台後半を占めていました。総ステロール量は、低温圧搾油で1kgあたり3.56〜5.77g、溶剤抽出油で3.86〜8.45gでした。総ステロール量に搾油法による有意な差が見られたのは、GloriaとSezener 76の2品種だけでした。著者らは、搾油法の影響の現れ方は品種によって異なると報告しています。ただし、各ステロールの相対的な分布は、2つの搾油法の間でおおむね似ていました。
脂肪酸・TAG・ステロールのいずれでも、品種による違いは見られました。一方で、低温圧搾油と溶剤抽出油の組成は全体として近いものでした。多変量解析でも、同じ品種の油は搾油法にかかわらず、おおむね同じグループにまとまりました。
研究が示すこと
著者らは、この研究の条件のもとでは、綿実油の成分組成には搾油法よりも品種の違いが大きく関わっていたと結論づけています。その理由として、脂肪酸やTAGは搾油の前にすでに種子の中で作られ蓄積されている点を挙げています。2つの搾油法の違いは、主に種子にある油をどう取り出すかにあるという解釈です。
この研究は、綿実油の成分を考えるうえで原料品種の違いが重要であることを示しています。同時に、総ステロール量のように、搾油法の影響が品種によって異なる成分もあることを報告しています。
著者:Ş.N. Akkaya Altınok(Aydın Adnan Menderes University, Faculty of Engineering, Department of Food Engineering)、Aslı Yorulmaz(Aydın Adnan Menderes University, Faculty of Engineering, Department of Food Engineering)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ş.N. Akkaya Altınok, Aslı Yorulmaz. Multivariate characterization of cottonseed oils from different cultivars obtained by cold pressing and solvent extraction. Grasas y Aceites 2026-10-01. DOI: 10.3989/gya.0324261.2424. 原著ライセンス:CC BY.