著者の所属・活動拠点の国は、オランダ、アメリカ、フランス、イギリス、ベルギー、ドイツです。
掲載誌:Comprehensive reviews in food science and food safety
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ドライフルーツや乾燥野菜、乾燥ハーブ・スパイスは、そのまま食べたり料理の仕上げに使ったりする即食(RTE)食品の材料として広く使われています。こうした乾燥原料は水分が少ないため保存性が高いイメージがありますが、実は微生物学的な汚染がまったく起きないわけではありません。乾燥という工程そのものが病原菌を確実に排除する処理ではないためです。今回紹介する研究は、乾燥果物・野菜・ハーブ・スパイスに関連する微生物学的リスクをどのように評価し、対応すればよいかを整理したレビューです。
研究チームは、オランダ・ワーヘニンゲン大学のden Besten氏、米カリフォルニア大学デービス校のHarris氏、米アーカンソー大学のAcuff氏のほか、フランスのSODIAAL Internationalおよびイタリアのカトリック・サクロクオーレ大学に所属するBourdichon氏、英国Campden BRIのLimburn氏、ベルギー・ゲント大学のRajkovic氏、ドイツ・カーギル社のWinkler氏、米ゼネラルミルズ社のCourtney氏という、研究機関と食品企業双方の専門家によって構成されています。
研究でわかったこと
この研究では、これまでに報告されてきた微生物汚染に関するデータ、実際に発生した食中毒アウトブレイクの事例、病原体がどのくらいの頻度でどの程度のレベルで存在してきたかという情報、さらに製品ごとの特性データを幅広く統合しています。そのうえで、これらの情報をもとに乾燥原料に潜む微生物学的ハザードに優先順位をつけ、対応策を検討するための定性的なリスクベースの意思決定枠組みを組み立てました。
枠組みの検討にあたっては、病原菌を減らすための従来からの処理方法に加えて、新しく開発されている除菌処理の有効性についても評価が行われています。さらに、原料が畑や産地で生産・収穫される段階から、加工を経て最終的に製品として包装されるまでのサプライチェーン全体を視野に入れて枠組みが設計されている点が特徴です。研究では、この枠組みを実際にどのように当てはめて使うかについて、具体例を用いた適用方法も示されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
著者らは論文の中で、この分野が抱える課題についても言及しています。水分の少ない乾燥食品であっても、病原菌は長期間にわたって生存し続けることができるとされています。また、食品由来の疾患につながるリスクは、病原体そのものの毒性の強さだけでなく、その病原体が製品の中にどのように混ざり込むか、そしてその後どのように取り扱われるかといった複数の要因が組み合わさって決まる、複合的な問題であることも指摘されています。
この研究はレビューおよび枠組みの提案という性格のものであり、既存の知見を整理し評価の考え方を体系化することに主眼が置かれています。特定の乾燥原料や特定の病原体についての新たな実験結果を示すものではなく、リスクの大きさや対応の優先順位は今後も新しいデータの蓄積によって見直されうるものと考えられます。
まとめ
ドライフルーツや乾燥野菜、ハーブ・スパイスといった乾燥原料は、私たちの食卓に身近な存在である一方、その微生物学的リスクをどう評価し管理するかは食品産業にとって継続的な課題であることが、この研究から浮かび上がります。今回示された枠組みは、生産から包装までのサプライチェーン全体を見渡しながらハザードに優先順位をつけ、低減策を検討するための考え方を提供するものであり、今後の食品安全管理の議論に活用されていくことが期待されます。
原著論文の著者・所属:den Besten HMW(Food Microbiology, Wageningen University & Research, Wageningen, the Netherlands.)、Harris LJ(Department of Food Science and Technology, University of California, Davis, California, USA.)、Acuff JC(University of Arkansas System Division of Agriculture, Fayetteville, Arkansas, USA.)、Bourdichon F(SODIAAL International, Paris, France.; Università Cattolica Del Sacro Cuore, DiSTAS, Piacenza, Italy.)、Limburn R(Campden BRI Ltd, Chipping Campden, UK.)、Rajkovic A(Laboratory of Food Microbiology and Food Preservation, Department of Food Technology, Safety and Health, Faculty of Bioscience Engineering, Ghent University, Ghent, Belgium.)、Winkler A(Cargill Germany GmbH, Düsseldorf, Germany.)、Courtney PD(General Mills Inc., Minneapolis, Minnesota, USA.)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):den Besten HMW, Harris LJ, Acuff JC, et al. A Risk-Based Framework for Ranking Microbiological Hazards and Identifying Mitigation Strategies for Dried Fruits, Vegetables, Herbs, and Spices Used in Ready-to-Eat Foods. 食品科学・食品安全の包括的レビュー (2026). DOI: 10.1111/1541-4337.70567.