2型糖尿病の治療薬として使われるGLP-1受容体作動薬は、血糖値を下げる効果に加えて体重を減らす効果があることが知られています。しかし、実際に薬を使い始めた患者さんの「何を、どれくらい食べているか」という食事の中身や、体の中の脂肪と筋肉のバランスがどう変わるのかについては、まだよくわかっていない部分がありました。今回紹介する研究は、飲み薬タイプのGLP-1受容体作動薬「経口セマグルチド」を新たに使い始めた日本人の2型糖尿病患者を対象に、食事内容と体組成の変化を実際の診療の場で観察したものです。
研究でわかったこと
この研究では、経口セマグルチドの服用を新たに開始した日本人の2型糖尿病患者25名を対象に、治療開始前と3か月後の状態を比較しました。食事の内容は「食物摂取頻度調査」というアンケート形式の方法で、体組成(体脂肪や筋肉の割合など)は生体電気インピーダンス法という機器を使った方法で調べられました。あわせて握力や血液検査の値も評価されています。
3か月後の結果を見ると、HbA1c(血糖コントロールの指標)と体重が有意に減少していました。体組成については、体脂肪率が有意に減少する一方で、筋肉量の割合は有意に増加していたと報告されています。なお、握力には有意な変化は見られなかったとされています。
食事内容については、摂取エネルギーの総量は3か月後に有意に減少していたものの、たんぱく質・脂質・炭水化物といった三大栄養素のエネルギー配分比そのものには変化がなかったとのことです。さらに食品группごとの分析では、油脂類、調味料・香辛料類、菓子類の摂取量が有意に減少していました。中でも1日あたりの食塩摂取量は、8.9gから7.0gへと有意に減少したことが示されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、25名という限られた人数を対象に、実際の診療の場で3か月間経過を観察した前向き観察研究です。薬の効果を厳密に検証するための比較対照群(薬を使わないグループ)を置いた試験ではないため、観察された変化がすべて経口セマグルチドによるものと断定できるわけではありません。あくまで一つの研究であり、これだけで結論が確定したわけではない点には注意が必要です。
それでも、体重や体脂肪率の減少とあわせて、食塩摂取量を含む食事内容の変化が具体的に示された点は興味深いところです。著者らは、こうした変化が糖尿病やそれに関連する合併症の管理において臨床的に意味を持つ可能性を示唆しています。
まとめ
この研究では、経口セマグルチドの服用開始から3か月後に、総エネルギー摂取量や体脂肪率の減少、筋肉量割合の増加が観察された一方で、三大栄養素のエネルギー配分比や握力には大きな変化が見られなかったと報告されています。あわせて、油脂類・調味料類・菓子類の摂取や食塩摂取量の減少も確認されており、薬物治療が食事パターンにも影響を及ぼしうることを示す一例として注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:経口セマグルチドが日本人2型糖尿病患者の食事摂取量および体組成に与える影響:臨床実践における前向き観察研究(エンドクリノロジー・ダイアビーティーズ・アンド・メタボリズム・2026年08月)