この研究は、台湾の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
激しい運動をすると、筋肉に一時的な損傷が起き、力を出しにくくなったり疲労が残ったりします。研究では、こうした状態をそれぞれ「運動誘発性疲労」「運動誘発性筋損傷」と呼びます。著者らは、これらが神経と筋肉の働きを低下させ、運動後の回復を遅らせると説明しています。
この論文は、ラクチプランチバチルス・プランタルム GKK1(L. plantarum GKK1)という乳酸菌の一種を摂取した場合に、筋損傷後の回復がどのように進むのかについて、人を対象とした証拠がまだ限られていると述べています。そこで研究チームは、4週間のGKK1摂取が、健康な男性において筋損傷を起こす運動のあとの機能的な回復を改善し、血液などの生化学的な反応を変化させるかどうかを検討しました。
調べ方
研究チームは、無作為化・二重盲検・プラセボ対照試験という方法をとりました。参加者をくじ引きのように無作為に二群へ分け、参加者も評価する側もどちらの群かを知らないまま進める設計で、思い込みによる偏りを避けるためのものです。試験はClinicalTrials.gov(NCT06893549)に登録されています。
対象は、定期的な運動習慣のない健康な男性48人です。プラセボ群24人と、GKK1群24人に分かれ、GKK1群は1日2カプセル(合計1.0×10¹¹ CFU)を28日間続けて摂取しました。CFUは菌の数を表す単位です。
摂取期間のあと、参加者は最大努力のプライオメトリックジャンプ(跳躍を繰り返す運動)を100回行い、筋損傷を起こす負荷としました。その前と、運動の3時間後・24時間後・48時間後に、カウンタームーブメントジャンプ(反動を使った跳躍)、アイソメトリック・ミッドサイパル(立位で太もも中央の高さのバーを引き上げ、動かさずに発揮する力を測る種目)、ウィンゲートテスト(短時間の無酸素性能力の測定)を評価しました。あわせて、筋損傷・炎症・酸化ストレス・内分泌反応・交感神経副腎系の活動に関わる血液指標と、尿中の3-メチルヒスチジンおよびクレアチニンを測定しています。
報告された主な結果
著者らの報告によると、プラセボ群と比べてGKK1群では、運動後の成績低下が小さい傾向がみられました。具体的には、カウンタームーブメントジャンプの力の立ち上がり速度(RFD)、体重あたりの最大発揮力、跳躍高、アイソメトリック・ミッドサイパルにおける体重あたりの最大発揮力とRFDの最大値、そしてウィンゲートテストの無酸素性能力について、低下幅が小さかったと報告されています(p<0.05)。
血液の指標では、運動後に上昇するCK(クレアチンキナーゼ)、ミオグロビン、hs-CRP(高感度C反応性タンパク)、TBARS(酸化ストレスの指標)の上昇がGKK1群で抑えられていました。CKとミオグロビンは筋肉が壊れたときに血中へ出てくる物質、hs-CRPは炎症の程度を示す指標です。また、テストステロン、ヒト成長ホルモン(HGH)、カテコールアミン、ドーパミンの反応も、より好ましい方向だったと述べられています。
筋タンパクの分解に関連する尿中の指標については、運動の24時間後に、3-メチルヒスチジンと、その尿中クレアチニンに対する比のいずれもGKK1群のほうが低い値でした。臨床的な安全性の指標には、好ましくない変化は認められなかったと報告されています。
この報告が示すこと
著者らはこれらの結果から、GKK1は、筋損傷を伴う運動のあとの機能的な回復を助け、二次的な炎症反応を和らげ、筋の分解に関連する尿中指標を変化させる、安全な栄養面の方策となりうると結論づけています。
なお、この紹介は公開されている抄録に記載された範囲にもとづくものです。対象は運動習慣のない健康な若い男性であり、期間や測定の条件もこの試験の設計にそったものです。試験の一つの報告として、運動後の回復という身近なテーマに人を対象とした比較試験で取り組んだ例を示しています。
著者:Mon-Chien Lee(Center for General Education, Taipei Medical University, Taipei 110301, Taiwan)、Chao‐Yuan Chen(Biotech Research Institute, Grape King Bio Ltd., Taoyuan City 325002, Taiwan)、Ying-Ti Shih(Office of Student Affairs, Hsin Sheng Junior College of Medical Care and Management, Taoyuan 32544, Taiwan)、You‐Shan Tsai(Biotech Research Institute, Grape King Bio Ltd., Taoyuan City 325002, Taiwan)、Shih-Wei Lin(Biotech Research Institute, Grape King Bio Ltd., Taoyuan City 325002, Taiwan)、Yen‐Lien Chen(Biotech Research Institute, Grape King Bio Ltd., Taoyuan City 325002, Taiwan)、Chin-Chu Chen(Biotech Research Institute, Grape King Bio Ltd., Taoyuan City 325002, Taiwan)、Chi‐Chang Huang(Graduate Institute of Sports Science, National Taiwan Sport University, Taoyuan City 333325, Taiwan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mon-Chien Lee, Chao‐Yuan Chen, Ying-Ti Shih, et al. Effect of Lactiplantibacillus plantarum GKK1 Supplementation on Exercise-Induced Fatigue, Muscle Damage, and Recovery in Healthy Men: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. Nutrients 2026-08-25. DOI: 10.3390/nu18172782. 原著ライセンス:CC BY.