著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:植物性の食事は「質」で違いがあるのか

心臓や血管の病気、腎臓の病気、肥満や糖尿病などの代謝の異常は互いに影響し合います。米国心臓協会(AHA)はこれらをまとめて「心血管・腎・代謝(CKM)症候群」ととらえ、進み具合を段階で分ける考え方を示しています。研究チームによると、はっきりした心臓病が現れる前の早い段階(ステージ0〜2)でも、段階が進むにつれて死亡リスクが高まるとされ、生活習慣を見直す時期として重視されています。

食事の中でも注目されてきたのが、植物性食品を中心とした食べ方です。ただし、植物性食品にも違いがあります。全粒穀物や果物、野菜、豆類、ナッツなどを中心とする「健康的な」植物性の食事がある一方、精製された穀物や砂糖、漬物などの保存食品に偏った「不健康な」植物性の食事もあります。著者らは、CKMの早期段階にある中国の高齢者で、こうした食事の質と死亡リスクとの関連がまだ十分に調べられていない点に着目しました。

そこで研究チームは、植物性の食事全体の度合い、健康的な植物性食事の度合い、不健康な植物性食事の度合いという3つの指標が、あらゆる原因による死亡(全死亡)とどう関連するかを調べました。

何をどのように調べたか

研究チームは、中国の23省を対象とする全国規模の高齢者調査「中国老年健康長寿調査(CLHLS)」のデータを用いました。2008年の調査に参加した65歳以上の人のうち、心臓病や脳卒中のない5,872人を分析の対象としました。

食事は、16の食品群をそれぞれどのくらいの頻度で食べているかを尋ねる質問票で調べました。食品群ごとに1〜5点をつけ、合計16〜80点の3つの指標を作りました。「健康的な植物性食事指数(hPDI)」は、全粒穀物、新鮮な果物や野菜、豆類、ナッツ、茶などを多く食べるほど点が高くなり、精製穀物や砂糖などの植物性食品と、肉・魚・卵・乳製品などの動物性食品は少ないほど点が高くなります。「不健康な植物性食事指数(uPDI)」は逆に、精製穀物や漬物、砂糖などを多く食べるほど点が高くなります。もう一つの「植物性食事指数(PDI)」は、健康的かどうかを区別せず、植物性食品を多く、動物性食品を少なく食べるほど点が高くなる指標です。

CKMの段階は、このデータで使える情報に合わせて定めました。血液や尿の検査値がないため、医師から診断されたことがあるという本人の申告と、身長・体重・腰回りの測定値をもとにしています。体格の指標(BMI)や腰回りが基準未満で、高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性腎炎のいずれもない人をステージ0、体格の指標や腰回りが基準を超えるがこれらの病気のない人をステージ1、これらの病気のいずれかがある人をステージ2としました。著者らは、この分類が検査で確かめたものではなく、分類の誤りが含まれる可能性があると述べています。

死亡の有無は2019年3月まで追跡しました。分析では、年齢、性別、民族、婚姻状況、教育、収入、職業、喫煙、飲酒、運動、睡眠時間、睡眠の質の影響を統計的に差し引いたうえで、食事指数と死亡リスクとの関連を推定しました。

主な結果:健康的な食事は低いリスク、不健康な食事は高いリスクと関連

追跡期間の中央値は108か月で、その間に2,870人が亡くなりました。

影響しうる要因を調整した分析では、hPDIが1点高いごとに死亡リスクが約1.1%低いという関連が見られました。hPDIが最も高い4分の1のグループは、最も低い4分の1のグループに比べ、死亡リスクが13.2%低くなっていました。一方、uPDIは1点高いごとに死亡リスクが約1.2%高く、最も高いグループは最も低いグループに比べて死亡リスクが19.2%高くなっていました。

健康的かどうかを区別しないPDIは、ほかの要因を調整しない段階では死亡リスクの低さと関連していました。しかし、年齢などを調整するとこの関連は見られなくなりました。

CKMの段階別に見ると、hPDIとuPDIの関連はステージ1〜2で数値上強く、ステージ0では統計的にはっきりしませんでした。ただし、段階によって関連の強さが本当に異なるかを確かめる検定では差は統計的に有意ではなく、著者らは段階による違いを示す根拠は限られているとしています。

さらに、追跡開始から3年以内の死亡を除く、がんのある人や厳格な菜食主義者を除く、高血圧や糖尿病なども追加で調整するなど、条件を変えた分析でも、健康的な食事は低い死亡リスクと、不健康な食事は高い死亡リスクと関連するという傾向は大きく変わりませんでした。一方、分析から除外された人との違いを補正する重み付けの分析では、関連の向きは同じだったものの、調整後の推定値は弱まり、統計的にははっきりしなくなりました。また、死因の情報はなかったため、死因別の分析は行われていません。

研究が示すこと

この研究は観察に基づく調査であり、食事が死亡リスクを直接変えたことを示すものではありません。それでも、心臓・腎臓・代謝の早い段階にある中国の高齢者では、植物性食品を多く食べるかどうかそのものより、どのような植物性食品を食べているかという「質」のほうが死亡リスクとの関連で重要だった、というのが著者らの結論です。

著者:Shipeng Zhang(Chengdu University of Traditional Chinese Medicine)、Enjie Tang(Department of Neurology, The 925th Hospital of PLA Joint Logistics Support Force, Guiyang, China)、Yanjie Jiang(Nanjing University of Chinese Medicine)、Ke Zhu(Chengdu University of Traditional Chinese Medicine)、Xiulian Zhuang(Chengdu University of Traditional Chinese Medicine)、Hanyu Wang(Chengdu University of Traditional Chinese Medicine)、Xingyi He(Guangzhou University of Chinese Medicine)、Yan Lu(Nanjing University of Chinese Medicine)、Qinxiu Zhang(Chengdu University of Traditional Chinese Medicine)、Xueying Li(Chengdu University of Traditional Chinese Medicine)、Jiaqing Song(Department of Cardiology, The 982th Hospital of PLA Joint Logistics Support Force, Tangshan, Hebei, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shipeng Zhang, Enjie Tang, Yanjie Jiang, et al. The associations between healthful and unhealthful plant-based dietary patterns and all-cause mortality among older Chinese adults with data-adapted early-stage cardiovascular-kidney-metabolic syndrome (stages 0–2): a prospective cohort study from the CLHLS. Frontiers in Nutrition 2026-10-16. DOI: 10.3389/fnut.2026.1915953. 原著ライセンス:CC BY.