この研究は、イランの研究機関の研究論文です。

掲載誌:NFS Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

アイスクリームに生きた微生物(プロバイオティクス)や天然由来の色素を加えて、機能性のある食品をつくろうとする試みがあります。しかし、冷凍して保存する間にプロバイオティクスが生き残りにくいこと、また色素が壊れやすいことが課題になっていました。

この研究では、藍藻(シアノバクテリア)から取り出した二つの色素タンパク質、フィコシアニン(青色)とフィコエリスリン(赤色)を取り上げています。これらは天然の着色料になるだけでなく、抗酸化性をもつ成分としても注目されていますが、温度・光・pHの変化に弱いという性質があります。そこで著者らは、これらの色素をキトサン(カニやエビの殻などに由来する多糖類)で包み込む「カプセル化」を行えば、色素の安定性とプロバイオティクスの生存率を高めつつ、アイスクリームの品質を保てるのではないかと考え、8週間の冷凍保存を通して確かめることを目的としました。

何を調べたか

研究チームはまず、二種類の藍藻を培養し、凍結と解凍を繰り返す方法でフィコシアニンとフィコエリスリンを抽出しました。次にこの二つの色素を同じ割合で混ぜ、2%のキトサン溶液を使ってイオンゲル化という穏やかな方法で包み、凍結乾燥して粉末にしました。できあがった粒子については、大きさや表面の電荷、どれだけの色素を閉じ込められたか(封入率)を測定しています。

アイスクリームは牛乳をもとに、砂糖・サーレップ・乳化剤を加えて作られました。プロバイオティクスにはサッカロミセス・ブラウディという酵母が使われています。この研究の特徴は、酵母を加えるタイミングを変えた点です。アイスクリーム生地を4℃で24時間ねかせる「エージング(熟成)」の前に加える場合と、後に加える場合を比べ、さらに包んだ色素を入れるかどうかも組み合わせて、対照区を含む5種類の試作品を用意しました。

これらを−20℃で8週間保存しながら、pHや酸度、たんぱく質・脂肪・糖・水分・灰分といった成分、かたさや粘度、溶けやすさ、空気の含まれ方、抗酸化活性、総ポリフェノール量、色の変化、酵母の生菌数を調べています。加えて、赤外線を使って分子の構造を調べるFTIR分析と、30人のパネリストによる味や見た目などの官能評価も行われました。

主な報告結果

キトサンで包んだ色素の粒子は、平均の大きさが149.8ナノメートル、表面の電荷(ゼータ電位)がプラス66.5ミリボルトで、封入率は83.37%だったと報告されています。強いプラスの電荷は粒子どうしが反発し合って固まりにくいことを意味し、著者らはこれを安定したコロイド状態が形成された証拠としています。

5種類の試作品のうち、最も良好な結果を示したのは、エージングの前に酵母を加え、かつ包んだ色素を配合したもの(T2と名付けられた区)でした。保存8週目の時点で、T2の総ポリフェノール量は乾燥重量1グラムあたり143ミリグラム(没食子酸相当)で、対照区の86.8ミリグラムを上回りました。色の変化を表す指標ΔEは、対照区の12.67に対してT2では6.32と、およそ半分に抑えられています。プロバイオティクスの生菌数は1グラムあたり8.08対数CFUで、これも5区の中で最も高い値でした。さらにT2は対照区より溶ける速さがおよそ12%遅く、官能評価でも受け入れられる品質を保っていたと述べられています。

FTIR分析は、対照区と、包んだ色素を含む酵母入りの区とを比べる形で行われました。著者らは、対照区にはない二つの吸収帯(1701.9および1622.7毎センチメートル)が現れたことを一つの処理区(T4)について報告し、これを色素が保持されている証拠としています。また酵母の活動に関係するとみられる変化も観察された一方で、脂質や炭水化物といった土台となる成分の構造は変わっていなかったと述べられています。なお、この所見は比較の対象となった区について述べられたものであり、色素を配合した区すべてで同じ吸収帯が確認されたとまでは報告されていません。

この結果が示すこと

著者らは、キトサンで包んだフィコシアニンとフィコエリスリンを、エージング前にプロバイオティクスを加える工程と組み合わせることで、有効成分の安定性、酵母の生存、抗酸化能、色の保持がいずれも改善したと結論づけています。

色素を裸のまま加えるのではなく保護膜で包むという工夫と、微生物を加えるタイミングという製造手順の選択が、冷凍保存中の品質を左右しうることを、この研究は一つの実験例として示しています。

著者:Yasamin Gourani(Department of Biology, SR.C., Islamic Azad University, Tehran, Iran)、Bahareh Nowruzi(Department of Biology, SR.C., Islamic Azad University, Tehran, Iran)、Seyed Amir Ali Anvar(Department of Veterinary Hygiene, SR.C., Islamic Azad University, Tehran, Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yasamin Gourani, Bahareh Nowruzi, Seyed Amir Ali Anvar. Synergistic effects of encapsulated phycocyanin and phycoerythrin on probiotic ice cream quality. NFS Journal 2026-09-08. DOI: 10.1016/j.nfs.2026.100290. 原著ライセンス:CC BY.