東南アジアのボルネオ島などに分布する樹木ダバイ(Canarium odontophyllum Miq.)の果実には、脂質を豊富に含む仁(種の中の可食部)があり、植物性の油脂資源として注目されています。ところがこの仁を果実から取り出す作業はこれまで手作業に頼っており、効率の悪さが利用拡大の妨げになっていました。さらに、仁を焙煎して油脂として使う際に、焙煎条件が脂質の品質にどう影響するかについてのデータも十分ではありませんでした。今回、マレーシア・プトラ大学などの研究グループが、ダバイの実の物理的・力学的な性質をもとに小型のクルミ割り器(ナッツクラッカー)を新たに設計し、その割り出し性能を評価するとともに、焙煎温度が仁の油脂の酸化安定性や抗酸化特性に与える影響を調べました。

専用クラッカーの開発と焙煎による品質変化

研究チームはまず、ダバイの実の大きさや硬さといった物理的・力学的特性をもとに、仁を効率よく取り出すための小型クラッカーを設計・試作しました。この専用クラッカーを用いたところ、殻の破砕効率は97.27%に達し、処理能力は1時間あたり1.64kgとなりました。これは手作業による割り出しの1時間あたり0.94kgと比べて、明確に高い処理能力です。

続いて、取り出した仁を150℃または175℃で焙煎し、未焙煎の対照と比較しながら油脂の品質を分析しました。評価には、遊離脂肪酸、過酸化物価、チオバルビツール酸価という酸化の進み具合を示す指標に加え、DPPHラジカル消去能やβ-カロテン退色抑制といった抗酸化性を示す指標が用いられました。その結果、175℃で焙煎した仁の油脂は、未焙煎のものと比べて過酸化物価が4.00(未焙煎は8.00)、チオバルビツール酸価が0.121(未焙煎は0.188)と低く、酸化がより抑えられている傾向が示されました。また、DPPHラジカル消去能を示すEC50値(値が小さいほど消去能が高いことを意味する指標)も103.98µg/mLと、未焙煎の166.52µg/mLより低く、β-カロテンの退色を抑える割合も69.67%と、未焙煎の51.98%より高い値が得られました。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

これらの結果から、研究チームは175℃程度の温度で焙煎することが、ダバイ仁油脂の酸化安定性や抗酸化力を高める方向に働く可能性を示したとしています。ただし、これは特定の条件下で行われた一つの研究であり、焙煎によって健康効果が得られると断定するものではありません。また、この記事の情報は今回の要旨・研究データに基づくものであり、著者の所属機関はマレーシアの大学や研究機関であって、日本の研究機関や日本の食習慣への言及は含まれていません。

まとめ

今回の研究では、ダバイの実の特性に合わせて設計した小型クラッカーが、手作業に比べて仁の取り出し効率と処理能力を大きく高めることが示されました。また、175℃での焙煎が、未焙煎と比べて仁の油脂の酸化安定性や抗酸化特性を向上させる方向に働く可能性が示唆されました。これらの知見は、ダバイ仁油脂を植物性脂質資源として活用していくための加工技術や品質管理の基礎データとして位置づけられるものです。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Kang Cin Lim, Muhammad Siddiq Amir Jalil, Azrina Azlan, et al. Design and performance evaluation of a Dabai nutcracker and the effect of roasting on kernel fat quality as a plant-based lipid source. サイエンティフィック・リポーツ (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-66545-7. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.