著者の所属・活動拠点の国は、イランです。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

ヨツモンマメゾウムシ(学名カロソブルクス・マクラトゥス)は、インゲンマメ、エンドウ、リョクトウ、レンズマメなどの豆類を貯蔵中に食害する代表的な害虫です。一部の国では、貯蔵穀物や豆類を虫から守るため、リン化アルミニウムの錠剤を燻蒸剤として使っています。著者らによると、この物質は毒性が非常に強く、イランの法医学報告では、リン化アルミニウム中毒による死亡者数が2008年の214人から2019年には919人へ増えています。

そこで研究チームは、イランに自生するセリ科植物プランゴス・フェルラケアに注目しました。この植物の地上部から得た精油(植物の香り成分を濃縮した油)と、乾燥させて粉にしたものが、マメゾウムシの成虫に対してどの程度の殺虫効果を持つかを調べ、リン化アルミニウム錠剤の代わりになりうるかを検討しました。

どのように調べたか

実験には、リョクトウで飼育した羽化後1〜3日のマメゾウムシ成虫を使いました。植物は2018年5月末にイラン南西部ヤースージの山地で採取されたものを乾燥させて用いています。

精油の試験では、精油をしみ込ませたろ紙と虫を、虫が通れない細かい網で隔てた密閉容器に入れました。これにより、虫が精油に直接触れることなく、空気中に揮発した成分を吸い込むことで受ける毒性(燻蒸効果)だけを調べています。粉末の試験では、粉末をリョクトウに混ぜ、そこに虫を入れました。比較のため、リン化アルミニウム錠剤でも同様に濃度と時間を変えて死亡率を測りました。

さらに、処理してから1日後、1〜4週間後に新しい虫を入れ、24時間後の死亡率を記録することで、効果がどれだけ長く続くか(持続性)も比べました。効き目の強さは、虫の半数が死ぬ濃度(LC50、粉末ではLD50)として算出されています。

主な結果

精油では、濃度が高く時間が長いほど死亡率が上がりました。試した中で最も高い濃度(空気1リットルあたり64.28マイクロリットル)では、48時間でほぼすべての虫が死にました。半数が死ぬ濃度は、24時間で空気1リットルあたり16.28マイクロリットル、48時間で12.88マイクロリットルでした。論文は、この24時間の値で比べると、精油はリン化アルミニウム錠剤(空気1リットルあたり0.00017グラム)より毒性が低かったと述べています。

粉末も濃度と時間に応じて死亡率が上がりましたが、効果は精油より穏やかでした。最大の死亡率は、餌10グラムあたり1グラムを混ぜて96時間たったときの78%でした。72時間での半数致死量は餌1キログラムあたり1.6グラムと報告されています。著者らは、粉末で大きな死亡率が見られたのは高濃度の場合に限られたとしています。

持続性の比較では、処理から24時間後の死亡率は精油が80.55%、リン化アルミニウム錠剤が40.50%で、精油が上回りました。1週間後もそれぞれ38.54%と17.82%でしたが、4週間後には3.00%と4.00%まで下がりました。一方、粉末は24時間後が10%と最も低く、1週間後に31%と最も高くなり、4週間後でも15%を保っていました。また、半数の虫が死ぬまでの時間は精油で36.62時間、リン化アルミニウムで50.85時間と報告されており、精油の方が速く効いたとされています。

この研究が示すこと

著者らは、この植物の精油は貯蔵害虫のマメゾウムシに対して十分な吸入毒性を示す一方、効果が長続きしないため、繰り返し使う必要があるかもしれないとまとめています。粉末は効き始めが遅いものの、効果がやや長く残りました。ただし論文は、精油も粉末も、追加で使わない限り実際の貯蔵環境ではリン化アルミニウムほどの実用的な効果には及ばないとも述べています。

今回の実験は実験室内で、貯蔵された豆の山の外で行われたものです。著者らは、実際の貯蔵では作物の種類や量、温度、湿度などが結果に影響しうること、また植物の強い匂いが貯蔵した豆の風味に影響する可能性があることを挙げています。身近な植物由来の材料が貯蔵害虫対策の選択肢となりうるかを、毒性の強い従来の燻蒸剤と並べて検討した研究だといえます。

原著論文の著者・所属:Zeinab Hosseini(Yasuj University of Medical Sciences, Yasuj, Iran)、Gholamhossein Shahraki(Department of Common Health, Faculty of Health, Yasuj University of Medical Sciences, 14 Golestan St., Ostandari Sq., Yasuj, 75918, Iran)、Amin Sedaratian-Jahromi(Department of Plant Protection, Faculty of Agriculture, Yasouj University, Yasuj, Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zeinab Hosseini, Gholamhossein Shahraki, Amin Sedaratian-Jahromi. Insecticidal activity of essential oil and powder of Prangos ferulacea as eco-friendly insecticides against Callosobruchus maculatus (Coleoptera: Chrysomelidae). Scientific Reports 2026-08-19. DOI: 10.1038/s41598-026-66886-3. 原著ライセンス:CC BY.