魚を食べたり加工したりする過程で出るウロコや骨、皮は、多くの場合そのまま廃棄されています。しかし近年、こうした副産物からコラーゲンを取り出し、化粧品や医療材料などに役立てようとする研究が世界各地で進められています。今回紹介するのは、ベトナムで養殖されているソウギョ(Ctenopharyngodon idella)のウロコを原料に、コラーゲンを分離しその性質を調べた研究です。
何を、どうやって調べたのか
研究チームは、ソウギョのウロコから室温(20〜25℃)という比較的穏やかな条件下でコラーゲンを取り出す実験を行いました。抽出方法は一つではなく、酸だけを使う方法、酸に加えて消化酵素の一種であるペプシンを使う方法、そして別のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を使う方法の3通りが比較されています。それぞれの方法で得られたコラーゲンは「酸可溶性コラーゲン(ASC)」「ペプシン可溶性コラーゲン(PSC)」「プロテアーゼ可溶性コラーゲン(PrSC)」と呼び分けられ、電気泳動(SDS-PAGE)という手法でタンパク質の大きさや構成を比較しています。さらに、質量分析(MS/MS)によって、取り出されたコラーゲンがどのタイプに当たるのかも確認されました。
研究でわかったこと
電気泳動の結果、酸だけで取り出したASCとペプシンを使ったPSCには、分子量およそ120キロダルトンの「α鎖」と呼ばれる特徴的な成分が確認され、これはI型コラーゲンに典型的な構造と一致するとされています。一方、プロテアーゼで処理したPrSCは、35〜60キロダルトンとより小さな分子量の鎖で構成されていました。質量分析による確認でも、単離されたコラーゲンはI型であることが裏付けられています。研究チームは、ベトナムで養殖されたソウギョ由来のコラーゲンのアミノ酸配列を報告するとともに、物理化学的な性質、構造の見た目(形態)、元素の構成についてもまとめています。これらの結果から、ソウギョのウロコはI型コラーゲンを取り出すための原料になりうると論じられています。特にペプシンを使った方法では、純度が高く、コラーゲン特有のらせん構造(三重らせん構造)を保った状態で得られる一方、プロテアーゼを使った方法ではより分子量の小さいコラーゲンが得られるとされ、酵素の種類によって異なる性質のコラーゲンを作り分けられる可能性が示されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、ベトナムで養殖されたソウギョという特定の魚種のウロコを対象に、室温という条件下での抽出方法を比較検討したものです。得られたコラーゲンの性質が、食品や化粧品、医療材料など幅広い分野に応用できる可能性が論じられていますが、これは実験室レベルでの分離・分析結果に基づくものであり、実際の製品化や人への効果を保証するものではありません。一つの研究成果であり、結論が確定したわけではない点に留意する必要があります。
まとめ
本研究は、廃棄されがちな養殖魚のウロコという副産物から、抽出条件を変えることで異なる性質のコラーゲンを取り出せることを示したものです。酸やペプシン、プロテアーゼといった処理方法の違いが、得られるコラーゲンの分子量や構造にどう影響するかを整理した基礎的な報告として位置づけられます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Nguyen Thi Kim An, Đàm Xuân Thắng, Ngoc Thanh Nguyen, et al. Separation and some properties of collagens from Ctenopharyngodon idella scales. ベトナム・ジャーナル・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー (2026). DOI: 10.15625/2525-2518/22294. 原著ライセンス: cc-by-sa.