この研究は、イランの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Agriculture and Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

養殖現場では、魚の餌となる飼料ペレットを貯蔵サイロから飼育槽へ運ぶ手段として、空気の流れで粒を管の中を移動させる「空気輸送」が広く使われています。しかし著者らは、条件が適切でないと、ペレットが管の壁や他の粒とぶつかって割れたり粉になったりする機械的損傷が起き、栄養の損失や廃棄物の増加、餌の必要量の増加、経済的損失につながると指摘しています。

論文によれば、これまでの研究の多くは空気を押し込んで運ぶ加圧式を対象としており、養殖施設で広く使われる吸引(真空)式については検討が少なく、また魚種や成長段階ごとにペレットを比較した体系的な研究も乏しいままでした。そこで研究チームは、吸引式の空気輸送について、ペレットの損傷、圧力損失(管内で失われる圧力)、輸送の安定性、消費電力のバランスがとれる運転条件を見つけ出し、あわせて性能を素早く予測できるモデルの枠組みを作ることを目的としました。

何を、どのように調べたか

著者らは、ニジマス、コイ、チョウザメの3魚種について、それぞれ前期用から肥育用まで4つの成長段階にあたる市販ペレット、計12種類を対象としました。実験には内径60ミリメートル、長さ6メートルの水平配管を用い、管の内部が見えるように透明な素材で作られています。空気の速度は毎秒10〜25メートル、ペレットの供給量は毎秒0.2〜0.8キログラムの範囲で条件を変えて試験が行われました。ペレットの損傷は、輸送の前後にふるいにかけ、ふるいを通り抜けた割合(割れた粒や粉)を測る方法で評価されています。

実験に加えて、気体の流れを解く計算流体力学(CFD)と、粒一つひとつの動きや衝突を追う離散要素法(DEM)を組み合わせた数値シミュレーションが行われ、12種類すべてについて実験データとの照合が行われました。さらに、こうした詳細な計算は時間がかかるため、その代わりとなる簡易的な予測役として人工ニューラルネットワーク(ANN、データから入出力の関係を学習する計算モデル)が作られ、480点の計算・実験データで学習させたと報告されています。

主な報告結果

研究チームは、管内の圧力の揺らぎの大きさを指標として、流れの状態を「濃厚相」「不安定域」「遷移域」「希薄相」の4つに分類しました。粒が管内に十分に浮遊して流れる希薄相(毎秒15〜16メートル付近)では、圧力損失が1メートルあたり785〜970パスカルと最も低く、浮遊の状態も最も良好でした。ただし、この条件では損傷が増え、最も細かい前期用ペレットでは最大8.0パーセントに達し、消費電力も増加したと報告されています。

一方、粒が密集して流れる濃厚相では損傷は1.2〜4.2パーセントと最も小さく抑えられましたが、圧力損失が高くなり、管が詰まる危険も増しました。著者らは、毎秒15〜16メートル前後を、複数の目的を同時に考えたときの現実的な折り合いの範囲として推奨しています。

組み合わせたCFD-DEMとANNのモデルは、決定係数R²が0.96を超え、平均絶対誤差は5パーセント未満という高い精度を示したとされています。また感度解析により、入口の空気速度とペレットの供給量が結果を左右する支配的な要因であることが示されました。なお著者ら自身が、実験は6メートルという短い実験室規模の配管で行われたため、得られた数値は産業用の長い配管で検証してから規模を拡大すべきだと述べています。

この研究が示すこと

この研究は、飼料ペレットの空気輸送において「速く運ぶほど管内の抵抗は下がるが、粒は傷みやすくなる」という関係を、魚種と成長段階の異なる12種類のペレットについて具体的な数値とともに示したものです。流れの状態を見た目ではなく圧力の揺らぎという測れる指標で分類した点、そして重い計算に代わる高速な予測モデルを組み合わせた点が、運転条件を選ぶ際の判断材料を整理することにつながっています。

著者:Hasan Ghafori(Department of Biosystems Engineering, Isf.C., Islamic Azad University, Isfahan, Iran)、Sadegh Ataei(Department of Mechanical Engineering, Majlesi Branch, Islamic Azad University, Isfahan, Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hasan Ghafori, Sadegh Ataei. Hybrid CFD-DEM and ANN Modeling of Pneumatic Conveying of Aquaculture Feed Pellets: Flow Regimes, Mechanical Damage, and Performance Optimization. Journal of Agriculture and Food Research 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.jafr.2026.103285. 原著ライセンス:CC BY.