この研究は、アメリカの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Food Measurement & Characterization

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

焼き色や香りを生む反応を調べる

研究チームは、植物に含まれる成分であるフラボノイドの構造の違いが、クッキーを焼く際のメイラード反応にどう影響するかを調べました。メイラード反応は、糖とアミノ酸などが反応し、焼き色や香りに関わるさまざまな物質を生む反応です。穀物にも含まれるフラボノイドがこの反応に及ぼす影響を知ることが、研究の目的でした。

著者らは、ルテオリン、カテキン、エリオジクチオール、タキシフォリンの4種類を、それぞれ小麦粉の重量に対して0.1%加え、無添加のクッキーと比較しました。酵母の代謝による影響を避けるため、膨張剤を使い、同じ条件で焼成しました。これは反応を調べるための実験用モデルであり、家庭で食べたり商品として使ったりするための配合ではありません。

焼成後には、反応生成物に関わる蛍光、抽出した成分、焼き色、硬さや割れやすさを測定しました。フラボノイド自体の色や蛍光の影響を補正するため、メイラード反応に関与しにくいショ糖を使った比較用のクッキーも作りました。

ルテオリンとカテキンで生成を抑える傾向

研究チームは、フラボノイドを加えたクッキーで、メイラード反応に関連する蛍光が無添加より低くなったと報告しています。低下幅はルテオリンで44%、カテキンで21%、タキシフォリンで11%、エリオジクチオールで4%でした。ただし、蛍光は反応生成物を間接的に捉える指標であり、この割合がそのまま褐色物質の量の減少を示すわけではありません。

反応の終盤にできる褐色の高分子物質「メラノイジン」に関わる分析や、途中段階で生じる成分の分析でも、ルテオリンとカテキンで生成が抑えられる傾向がみられました。一方、これらの分析では処理間の差が統計的に明確ではなく、4種類の効果の順位を確定する結果ではありませんでした。

成分分析では、無添加で検出された一部の成分がフラボノイド添加では検出されず、添加する種類によって検出成分の組み合わせも変わりました。ただし、多くの成分名は暫定的な推定です。焼き色については、フラボノイド自体の色を考慮した全体の色差がルテオリンで最も小さくなりました。硬さと割れやすさには、添加による統計的に有意な変化は認められませんでした。

構造だけでなく食品中の条件も関わる

著者らは、ルテオリンの構造にある二重結合や、加熱で変化しやすいカテキンの性質が、反応への関わり方の違いを説明し得るとしています。ただし、今回の結果は主に間接的な指標に基づくものです。また、水分の少ないクッキーではフラボノイドが十分に分散しにくく、そのことも観察された効果に関わった可能性があると述べています。

この研究が示すのは、フラボノイドの種類によって焼成中に生じる成分の量や組み合わせが変わり得ること、そしてその働きが食品中の条件にも左右されるという点です。香りやおいしさの改善を直接確かめた研究ではありませんが、穀物に含まれる成分と、加熱で生まれる色や香りとの関係を理解する手がかりになります。

著者:Emma J. Whaley(Department of Food Science & Technology, Texas A&M University, College Station, TX, 77843, USA)、Cyprian O. Syeunda(Department of Food Science & Technology, Texas A&M University, College Station, TX, 77843, USA)、Tadesse Fikre Teferra(Department of Food Science & Technology, Texas A&M University, College Station, TX, 77843, USA)、Joseph M. Awika(Department of Food Science & Technology, Texas A&M University, College Station, TX, 77843, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Emma J. Whaley, Cyprian O. Syeunda, Tadesse Fikre Teferra, et al. Effect of flavonoid structures on Maillard reaction product formation in cookies. Journal of Food Measurement & Characterization 2026-10-03. DOI: 10.1007/s11694-026-04859-w. 原著ライセンス:CC BY.