掲載誌:Asian Journal of Dairy and Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ドラゴンフルーツ(ピタヤ)はサボテン科の熱帯果実で、ビタミンCや食物繊維、色素成分などを含み、抗酸化作用が高い果物として知られています。著者らは、こうした果実にどのような植物由来の化学成分(フィトケミカル)が含まれているかを明らかにすることが、健康に役立つ食品素材としての可能性を考えるうえで重要だと位置づけています。

この研究で研究チームが目指したのは、果肉が赤い品種(Hylocereus polyrhizus)と白い品種(Hylocereus undatus)について、果肉に含まれる成分を種類として特定し、両者を比べることです。成分の量を精密に測ることではなく、何が含まれているかを確かめる定性的な分析が中心です。

どのように調べたか

研究チームは、インド・コールハープルの市場などで十分に熟した赤肉種と白肉種の果実を入手し、冷凍保存したうえで分析に用いました。

まず、果肉の抽出液に試薬を加えて色の変化や泡立ち、沈殿の有無を見る簡易的な化学試験を行い、フェノール類、フラボノイド、配糖体(糖が結びついた化合物)、タンニン、サポニンといった成分群が含まれるかどうかを調べました。

次に、果肉をメタノールという溶媒に浸して成分を溶かし出し、その抽出液をガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)にかけました。GC-MSは、混ざり合った成分を性質の違いで分離し、それぞれの成分の質量に関する特徴を測る方法です。得られた特徴を既知の化合物を集めたデータベースと照らし合わせることで、どの化合物が含まれているかを推定します。

主な結果

簡易的な化学試験では、赤肉種・白肉種のどちらの果肉からもフェノール類、フラボノイド、配糖体、タンニンが検出され、サポニンはどちらからも検出されなかったと報告されています。

GC-MSによる分析では、赤肉種と白肉種で成分の構成に違いが見られました。赤肉種の果肉からは10種類の化合物が特定され、その内訳はアルコール類5種、エステル類3種、脂肪酸1種、アルケン1種でした。一方、白肉種の果肉からは26種類の化合物が特定され、アルコール類が16種を占めるなど、より多様な構成だったとされています。

両方の果肉で目立ったのは、イノシトールと呼ばれる糖に似た化合物の仲間(ムコ-、エピ-、l-イノシトールなどの異性体)でした。論文によると、これらは分析結果の中で最も大きな割合(ピーク面積の割合で71.00〜99.12%)を示しました。ここでいう割合は、分析で検出された成分全体の信号に占める比率であり、果実に含まれる量そのものを示す数値ではありません。

また著者らは、検出された成分の6割以上がエステル類、アルコール類、ケトン類、脂肪酸で構成されていたと述べています。赤肉種では特徴的な脂質系の化合物が、白肉種ではゲラニルゲラニオールなど独自のアルコール類や脂肪酸が見られたことも報告されています。

研究が示すこと

著者らは、検出された成分の中に、これまでの別の研究で抗酸化、抗炎症、抗菌などの性質との関連が報告されてきたものが含まれていることから、ドラゴンフルーツの果肉は機能性食品の素材として可能性があると結論づけています。ただし、この研究で行われたのは成分の特定であり、果肉を食べたときの健康への効果を直接調べたものではありません。

同じドラゴンフルーツでも、果肉の色が異なる品種では含まれる成分の顔ぶれが違うことを示した点が、この研究から伝わる主な内容といえます。

著者:A.M. Deshmukh、Vishnu K. Garande、A.K. Sahoo

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):A.M. Deshmukh, Vishnu K. Garande, A.K. Sahoo. Comparative Phytochemical Profiling and GC-MS Characterization of Red-and White-fleshed Dragon Fruit (Hylocereus spp.) Pulp. Asian Journal of Dairy and Food Research 2026-10-16. DOI: 10.18805/ajdfr.dr-2453. 原著ライセンス:CC BY.