著者の所属・活動拠点の国は、オランダ、イタリアです。
掲載誌:American Journal of Clinical Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
食事で摂ったタンパク質のうち、小腸で消化・吸収されずに残った分は大腸へ届き、腸内細菌によって発酵されます。この過程では、体にとって有害となる可能性がある代謝物がつくられることがあります。タンパク質を多く摂ると大腸へ流れ込むタンパク質も増えることは知られていますが、タンパク質の種類、つまりアミノ酸の組成や消化されやすさの違いがどう影響するかは、ほとんど分かっていませんでした。
そこで研究チームは、アミノ酸組成と消化されやすさが異なる2種類の精製タンパク質を比べ、大腸に届くタンパク質やその材料となるアミノ酸の量の違いが、タンパク質発酵の指標(主要評価項目)や、消化物が腸を通過する時間、腸内細菌叢の構成(副次評価項目)にどう影響するかを調べました。
どのように調べたか
比べたのは、消化されにくいとされる牛血漿タンパク質と、消化されやすいとされるホエイタンパク質分離物(乳清タンパク質を精製したもの)です。健康な成人15人が、どちらかのタンパク質を1日30グラム、3回の食事に分けて7日間摂取しました。7日間の休止期間を挟んだあと、もう一方のタンパク質も同様に摂取しました。このように同じ参加者が両方の条件を順番に試す方法をクロスオーバー試験といい、摂取する順番は無作為に決められ、食事全体が管理されていました。
各期間には血液(血漿)、尿、便を採取して、タンパク質の発酵によって生じる物質などを測定し、統計モデルを用いて2種類のタンパク質を比較しました。
主な結果
試験管内で消化のされやすさを調べた結果、分解の程度は牛血漿タンパク質が32.6%、ホエイタンパク質が26.3%で、統計的な差は認められませんでした。食後の血漿中の総アミノ酸濃度も、牛血漿タンパク質が約9000マイクロモーラー、ホエイタンパク質が約9800マイクロモーラーと同程度でした(この項目は13人で評価)。
一方で、牛血漿タンパク質を摂った期間には、ホエイタンパク質の期間と比べて、血漿中のp-クレシル硫酸、フェニル硫酸、フェニルアセチルグルタミン、インドキシル硫酸の濃度が高くなっていました。これらは、フェニルアラニンやチロシン、トリプトファンといった芳香族アミノ酸から腸内細菌がつくる代謝物です。尿中でも、p-クレシル硫酸、フェニル硫酸、フェニルアセチルグルタミンの濃度が牛血漿タンパク質の期間に高くなっていました。
これに対し、便中のアンモニアや分岐鎖脂肪酸、腸内細菌の多様性には、タンパク質の種類による違いは見られませんでした。また、牛血漿タンパク質を摂った期間には大腸の通過時間が長くなる傾向がありましたが、統計的に明確な差とはいえない水準でした。
結果が示すこと
著者らは、牛血漿タンパク質の摂取によって、芳香族アミノ酸に由来する微生物代謝物の血漿・尿中濃度がホエイタンパク質より高くなったと結論づけています。そのうえで、2つのタンパク質の消化されやすさや食後のアミノ酸の上がり方は予想ほど違わなかったことから、この差は消化されやすさよりも、アミノ酸の組成の違いによって生じた可能性が高いと考察しています。
この研究は、同じ量のタンパク質であっても、その種類によって腸内でのタンパク質発酵を反映する指標が変わりうることを、管理された食事介入で示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Roseanne Minderhoud(Division of Human Nutrition and Health, Wageningen University & Research, Wageningen, The Netherlands; Food Quality and Design Group, Wageningen University & Research, Wageningen, The Netherlands; Animal Nutrition Group, Wageningen University & Research, Wageningen, The Netherlands; OnePlanet Research Center, Wageningen, The Netherlands)、Edoardo Capuano(Food Quality and Design Group, Wageningen University & Research, Wageningen, The Netherlands)、Sonja de Vries(Animal Nutrition Group, Wageningen University & Research, Wageningen, The Netherlands)、Aniek Even(OnePlanet Research Center, Wageningen, The Netherlands; imec, Wageningen, The Netherlands)、Andrea Anesi(Department of Food Quality and Nutrition, Unit of Metabolomics, Research and Innovation Centre, Fondazione Edmund Mach, San Michele all'Adige, Italy)、Guido Hooiveld(Division of Human Nutrition and Health, Wageningen University & Research, Wageningen, The Netherlands. Electronic address: [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Roseanne Minderhoud, Edoardo Capuano, Sonja de Vries, et al. Protein-fermentation biomarkers in plasma and urine differ between bovine plasma protein and whey protein isolate in a randomized fully controlled dietary intervention. American Journal of Clinical Nutrition 2026-08-28. DOI: 10.1016/j.ajcnut.2026.101491. 原著ライセンス:CC BY.