ブルーベリーや黒豆、紫キャベツなど、紫や黒っぽい色をした食材は「体によさそう」というイメージを持たれがちです。しかし、見た目が似ていても、その色を生み出している色素の種類や量は食材ごとにかなり違うのではないか——そんな疑問を出発点に、中国農業農村部食品栄養発展研究所などの研究グループが、16種類の紫黒色農産物を対象に、色の特徴と色素成分、抗酸化力の関係を横断的に調べた研究です。結果はフード・ケミストリー・エックス誌に2026年8月付で掲載予定です。
16種類の食材を同じ方法で比較
対象となったのは、紫米、黒小麦、黒トウモロコシ、紫サツマイモ、紫ジャガイモ、紫ヤマイモ、黒大豆、紫レンズマメの一種(purple lablab bean)、紫ササゲ、ブルーベリー、ブラックベリー、紫ブドウ、紫プラム、紫ナス、紫キャベツ、紫タマネギの16種類です。研究チームはまず「電子目(E-eye)」と呼ばれる画像分析装置で、購入から3日以内に処理したサンプルの色を数値化しました。色は国際照明委員会(CIE)が定めるLAB表色系で表され、明るさを示すL*値、赤みの強さを示すa*値、黄みの強さを示すb*値、色の鮮やかさを示すC*値、色相そのものを示す色相角(h°)という指標が使われています。
次に、色素成分をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)とUPLC-MS/MS(超高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析)で分析し、クロロフィルA・B、ルテインやカロテンといったカロテノイド、そしてアントシアニンの種類と量を細かく調べました。さらに、ABTS法、DPPH法、FRAP法という3種類の手法で抗酸化力を測定し、色や色素成分との関連を統計的に検討しています。
「見た目は紫」でも中身は食材ごとにバラバラ
興味深いのは、表面の見た目は似たような紫〜黒であっても、すりつぶして均一化したサンプルの色は食材によって大きく異なっていた点です。16種類のうち10種は紫系、4種は黄色っぽい色調、2種(黒大豆と紫レンズマメの一種)は緑がかった色調に分類されました。L*値(明るさ)は18.27〜71.07の範囲で食材ごとに差があり、黒大豆・黒小麦・紫米は比較的明るく、紫ジャガイモやブルーベリー、ブラックベリーは暗い色調でした。
色素の中身を見ると、この違いの理由がはっきりします。紫や黄色系に分類された14種類の食材ではアントシアニンが主な色素で、中でもブルーベリー(1441.13マイクログラム/グラム)とブラックベリー(1029.62マイクログラム/グラム)が突出して多く含まれていました。一方、緑がかった色調を示した黒大豆と紫レンズマメの一種では、クロロフィルAが主要な色素であることが分かりました。黒大豆で102.38マイクログラム/グラム、紫レンズマメの一種では781.41マイクログラム/グラムと高い値が検出されており、紫ナスにも少量(3.64マイクログラム/グラム)のクロロフィルAが確認されています。カロテノイドについては、リコピンはどのサンプルからも検出されず、全体的にルテインやカロテンの含有量は低めで、黒大豆でルテインが11.38マイクログラム/グラムと最も高い値を示しました。
92種類のアントシアニンと、色の濃さ・抗酸化力とのつながり
UPLC-MS/MS分析では、合計92種類のアントシアニンと8種類の関連化合物が同定されました。内訳はシアニジン系35種、ペオニジン系13種、デルフィニジン系11種、ペラルゴニジン系12種、マルビジン系13種、ペチュニジン系8種です。最も種類が豊富だったのは紫ブドウで、6種類すべてのアントシアニジン型と関連化合物6種を含む計34種の化合物が検出されました。紫ササゲとブルーベリーも6種類すべてのアントシアニジン型を含んでいます。全体としてはシアニジン系、特にシアニジン-3-O-グルコシドが最も広く様々な食材に共通して存在する成分であることが分かりました。ただし食材ごとの「主役」は異なり、たとえば紫サツマイモではペオニジン系が全体の95.2%を占め、紫ジャガイモではペチュニジン系が92.1%を占めるなど、食材固有の偏りが見られています。
色の指標とアントシアニン総量、抗酸化力の関係を統計的に調べたところ、アントシアニン総量は明るさ(L*値)や色の鮮やかさ(C*値)とは負の関連、抗酸化力とは正の関連を示しました。つまり、色が濃く暗いサンプルほどアントシアニンを多く含み、抗酸化力も高い傾向がある、という関連が観察されたことになります。研究チームはこの結果について、色を手がかりにした食生活の助言に活用できる可能性を示すものとしています。
この研究を読むうえでの留意点
この研究は、あくまで今回分析対象とした16種類の農産物・特定のサンプルにおける測定結果であり、抗酸化力が高いことが直接的な健康効果を保証するものではありません。また、色とアントシアニン量・抗酸化力の間に見られた関連は相関関係であって、因果関係を証明したものではない点にも注意が必要です。今回の解析には日本の研究機関や日本食材への言及は含まれておらず、対象食材や実験条件は論文に記載された範囲に限られます。一つの研究として、今後さらに検証が重ねられていく段階にあるものと捉えるのが妥当です。
まとめ
この研究は、紫や黒に見える16種類の農産物を同じ手法で横断的に比較し、見た目は似ていても中に含まれる色素の種類や量、抗酸化力には食材ごとに大きな違いがあることを示しました。特にブルーベリーとブラックベリーのアントシアニン含有量の高さや、黒大豆・紫レンズマメの一種における緑色色素(クロロフィルA)の存在、そして色の濃さと抗酸化力の関連は、色から食材の特徴をおおまかに読み解くヒントになりうる知見といえそうです。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Ren Xiao, Jianfeng Pu, YingNie, et al. Association analysis of color characteristics, anthocyanin profiles, and antioxidant capacity in purple/black agricultural products based on targeted metabolomics. フード・ケミストリー・エックス (2026). DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104268. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.