エゾウコギ(Eleutherococcus senticosus)は、古くから健康素材として関心を集めてきた植物で、その葉にはさまざまな植物由来成分(フィトケミカル)が含まれています。近年は、味噌や納豆などでおなじみの「発酵」という加工技術を、こうした植物素材に応用することで、成分組成や機能性がどのように変わるのかが研究テーマとして注目されています。今回紹介する研究では、エゾウコギの葉を、テンペ発酵に使われることで知られる糸状菌の一種Rhizopus oligosporusを用いて固体発酵させ、発酵前後でどのような変化が起きるのかが調べられました。

研究でわかったこと

研究チームは、エゾウコギの葉をRhizopus oligosporus KCCM11948P株を用いて120時間にわたり固体発酵させ、フィトケミカル成分や機能特性の変化を評価しました。

まず食品としての物性面では、発酵によって水膨潤性、保水性、コレステロール結合能、油吸収能といった機能特性が向上したと報告されています。

成分面では興味深い変化が見られました。ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸は発酵72時間の時点で33.7%減少した一方、同じく抗酸化成分として知られるカフェ酸は33.5%増加したとされています。さらに、L-カルニチンは発酵72時間の時点で初めて検出され、120時間後には乾燥重量あたり15.67±0.50 mg/kgに達したこと、また植物ステロールの一種であるβ-シトステロールは105.2%増加したことが示されました。

総フェノール含量と総フラボノイド含量も、それぞれ38.6%、20.8%増加したと報告されています。あわせて、FRAP法、ABTS法、ORAC法という3種類の方法で測定した抗酸化活性は、発酵の進行とともに一貫して増加したとされています。さらに、RAW264.7マクロファージ細胞を用いた実験では、一酸化窒素(NO)の産生を抑える働きが、未発酵の葉と比べて83.0%高まったことが示されています。

これらの結果から、研究チームは、Rhizopus oligosporusによる固体発酵がエゾウコギ葉のフィトケミカル組成と機能特性を改善し、機能性素材としての活用可能性を支持するものだと結論づけています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、特定の発酵菌株・条件のもとでエゾウコギ葉の成分と機能特性がどう変化するかを実験室レベルで検証したものです。マクロファージを用いた一酸化窒素阻害活性の評価は培養細胞を用いた実験であり、ヒトの体内で同様の効果が得られるかどうかを直接示すものではありません。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではない点には留意が必要です。

まとめ

今回紹介した研究では、エゾウコギの葉をRhizopus oligosporusで固体発酵させることにより、水分保持やコレステロール結合といった機能特性、総フェノール・総フラボノイド含量、抗酸化活性、そしてマクロファージにおける一酸化窒素阻害活性が高まったことが示されました。また、クロロゲン酸の減少とカフェ酸・L-カルニチン・β-シトステロールの増加という、成分組成の変化も報告されています。発酵という古くからの加工技術が、植物素材の機能性を高める一つの手段になりうることを示唆する研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:Rhizopus oligosporusによる固体発酵中のエゾウコギ葉における植物化学成分と機能特性の変化(フード・サイエンス・アンド・バイオテクノロジー・2026年08月)