ぶどう糖が2つつながった糖、それが麦芽糖です。厚生労働省の栄養素辞典によると、麦芽糖はしょ糖(ぶどう糖+果糖)や乳糖(ぶどう糖+ガラクトース)と並ぶ二糖のひとつで、体内ではエネルギー源として使われます。ぶどう糖は脳など特定の組織の主要なエネルギー源となる単糖、果糖はエネルギー源となる単糖の一つ(果実などに含まれる)として同辞典で紹介されており、これら単糖が結合したものが麦芽糖です。名前を意識する機会は少ない糖ですが、成分表のデータをたどると、その"隠れた"存在感が見えてきます。

水あめが持つ麦芽糖の量

可食部100gあたりの麦芽糖量で最も多いのは、水あめ(酵素糖化)で38.5g、エネルギーは342kcalです。水あめはでんぷんを酵素で分解して糖化させたもので、砂糖に比べて甘さがソフトで粘りがあり、料理に照りやつやを与える性質を持つとされています。この食品に含まれる糖類の中でも麦芽糖が際立って多く、ぶどう糖は2.5g、果糖は0.1gにとどまります。つまり水あめの甘みの主体は麦芽糖そのものというわけです。

小さじ1杯(7g)を使うと、麦芽糖はおよそ2.7g。料理にひとさじ加えるだけで、砂糖とは違う穏やかな甘さの糖を取り入れていることになります。

砂糖菓子は僅差の2位、でも中身の主役は違う

ゼリーキャンデーは麦芽糖27.1g(推定値)で2位につけます。ただしこの食品の糖類の内訳を見ると、麦芽糖27.1g(推定値)に次いでしょ糖23g(推定値)が続いており、水あめほど麦芽糖に偏ってはいません。ゼリーキャンデーは砂糖と水あめを主原料に、ゼラチンや寒天などで固めたものとされており、水あめ由来の麦芽糖と砂糖由来のしょ糖が両方効いている菓子といえそうです。1個2gが目安なので、麦芽糖量に換算するとごくわずかですが、まとめ食いすれば積み重なります。

さつまいも加工品も上位に食い込む

ここでもう一段、興味深い並びが現れます。3位はさつまいも 蒸し切干で麦芽糖24.4g、277kcal。乾燥いも・干しいもとも呼ばれる食品で、蒸してから薄切りにして乾燥させたものとされています。糖類の内訳では麦芽糖24.4gがしょ糖11.5gを大きく上回り、ここでも麦芽糖が甘みの主役です。さらに5位にもさつまいも 塊根 皮なし 焼きが麦芽糖15.8g、151kcalで登場します。焼き芋も糖類では麦芽糖15.8gがしょ糖4.7gを上回っており、甘い菓子だけでなく、蒸したり焼いたりしたさつまいもも麦芽糖の多い食品として名を連ねています。水あめとさつまいも加工品、一見遠い食品どうしですが、どちらも「でんぷんが糖に分解された」結果として麦芽糖が増えている点でつながっているようです。

4位のドロップは、しょ糖が主役の甘さ

4位のドロップは麦芽糖18.3g(推定値)、389kcalです。ただし糖類の内訳を見るとしょ糖56.8g(推定値)が麦芽糖18.3g(推定値)を大きく上回っており、この食品の甘みの主体はしょ糖です。ドロップは砂糖を煮詰め、水あめを加えて高温で成形したハードキャンデーとされていますが、砂糖の量が多いぶん、しょ糖が前面に出た甘さになっているようです。同じ「麦芽糖を含む菓子」でも、水あめのように麦芽糖そのものが主役の食品と、ドロップのようにしょ糖が主役で麦芽糖は脇に回る食品とがある、というのがこの上位5食品を並べて見えてくる違いです。

ひとさじの甘さの正体

ゼリーキャンデーやドロップのような砂糖菓子を抑えて、素朴な水あめが麦芽糖量で首位に立っていたという事実は、甘味料の代表格が必ずしも麦芽糖の代表格ではないことを示しています。しかも水あめは砂糖よりやさしい甘さとされ、蒸し切干や焼き芋といった日常のいも料理にも麦芽糖は多く含まれています。麦芽糖には摂取基準こそありませんが、次にお菓子作りで水あめを小さじ1杯使うとき、あるいは干し芋を一切れ口にするとき、そこにどんな糖が働いているのかを思い出すきっかけになりそうです。

※特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。麦芽糖・ぶどう糖・果糖のはたらきに関する記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 e-ヘルスネット