オリーブオイルを搾ったあとには、種子や搾りかす、葉といった大量の副産物が残ります。これらは廃棄されることが多い一方で、近年は農業資材として再利用する研究が進んでいます。今回紹介する研究では、こうしたオリーブオイル搾油廃棄物からタンパク質加水分解物(タンパク質を酵素で分解して得られる成分、PH)を作り、その抗酸化力を調べたうえで、乾燥ストレスを受けたイチゴの生育にどのような影響を与えるかを検証しています。植物由来のタンパク質加水分解物は、植物の生育を助ける「バイオスティミュラント(生物刺激剤)」として注目されている素材の一つとされています。

研究でわかったこと

まず研究チームは、オリーブオイル搾油後に残る種子・搾りかす・葉のそれぞれから、市販の酵素(アルカラーゼ)を使ってタンパク質加水分解物を作製し、抗酸化活性を3種類の方法で比較しました。フリーラジカルを消去する力を調べるDPPH法では、種子由来PHが58.7%、搾りかす由来PHが52.3%、葉由来PHが20.0%の阻害率を示したとされています。同様に、ヒドロキシルラジカルの消去能でも種子PHが47.6%、搾りかすPHが43.6%、葉PHが26.1%という結果でした。さらに、脂質の酸化(過酸化)を抑える力についても種子PHが87.8%と最も高い値を示し、3つの試験すべてで種子由来のPHが最も高い抗酸化能を持つことが示されたとされています。

この結果を受けて、研究チームは最も抗酸化力が高かった種子PHを使い、次の実験に進みました。鉢植えのイチゴ(Fragaria × ananassa)を用い、水を控えたストレス条件下で、葉または根から0.15%(体積比)の濃度で種子PHを与えたときに、植物の生理的・生化学的な特徴がどう変化するかを調べています。その結果、水ストレス下でPHを処理したイチゴは、細胞膜の酸化損傷の指標とされるマロンジアルデヒドの濃度が14.0%低下し、抗酸化物質であるアスコルビン酸の蓄積が36.6%増加したと報告されています。また、細胞からのイオン漏出(細胞膜の損傷の目安とされる指標)は26.6%減少し、葉の相対含水率(植物がどれだけ水分を保持できているかを示す指標)は、PHを与えていない植物と比べて17.7%高かったとされています。これらの結果から、研究チームはオリーブの種子由来PHが、乾燥ストレスによる植物への影響を軽減するために有効に利用できる可能性があると述べています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、オリーブオイル搾油廃棄物由来のタンパク質加水分解物、特に種子由来のものが、抗酸化活性を持ち、水ストレス下のイチゴの生理状態に影響を与えたことを示した一つの研究です。今回の結果は鉢植えでの実験によるものであり、示された数値や効果は今回の実験条件下で観察されたものです。今後さらに研究が積み重ねられることで、こうした廃棄物由来素材の農業への応用可能性についての理解が深まっていくものと考えられます。

まとめ

オリーブオイルの搾油過程で生じる種子・搾りかす・葉から作られたタンパク質加水分解物のうち、種子由来のものが最も高い抗酸化活性を示したとされています。この種子PHを水ストレス下のイチゴに与えたところ、酸化損傷の指標の低下や抗酸化物質の増加、保水力の向上といった変化が確認されたと報告されており、廃棄物の新たな活用先としての可能性を示す研究といえます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:オリーブオイル廃棄物由来のタンパク質加水分解物:イチゴの水ストレス耐性を高める効果的な生物刺激剤として(サイエンティフィック・リポーツ・2026年08月)