イチゴには、初夏から夏にかけて一度だけ花をつける「一季成り」品種と、気温などの条件がそろえば繰り返し花を咲かせる「四季成り」品種がある。四季成り品種をうまく使えば、通常よりも早い時期から収穫を始められる可能性があるが、実際には気温や株の生理的な状態が連続的な開花を妨げることが知られている。今回、岡山大学大学院環境生命自然科学研究科と農研機構西日本農業研究センターの研究グループが、定植(苗を鉢や畑に植え付けること)の時期と、日長(1日に光を当てる時間の長さ)を組み合わせた場合に、四季成りイチゴの開花がどう変化するのかを調べた研究を発表した。
実験には、四季成り性が「強い」とされる品種「04」と、「弱い」とされる品種「よつぼし」の2品種が使われた。2021年6月にランナー苗(ほふく茎からできた子苗)を鉢上げし、同年8月3日・8月17日・8月31日・9月14日という4つの異なる時期に定植した。定植の1週間後から、白熱電球を使って日没から日長が16時間・20時間・24時間になるよう補光する処理と、自然の日長のまま育てる処理の、合わせて4通りの光条件を組み合わせて栽培し、それぞれの組み合わせで8株ずつを育てて比較した。花房(花の集まり)が見え始めた日や、収穫した果実の重さ、糖度、硬さなどを記録している。
定植を早めるだけで済む品種と、光の管理が要る品種
四季成り性が強い「04」では、定植した時点ですでに花芽(花のもと)ができ始めており、日長を延ばす処理をしてもしなくても、定植からおよそ10日ほどで最初の花房が出るという速い開花が見られた。定植を早めるほど株あたりの花房数や果実数が増え、初期の収穫量も増加した。つまりこの品種では、光の管理をほとんど加えなくても、早く植えるだけで早採りにつながったことになる。
一方、四季成り性が弱い「よつぼし」は、8月の定植の時点でもまだ花芽ができておらず、実際に花房が見えるまでに3週間から数か月かかった。この品種では、定植を早めた上でさらに日長を24時間まで延ばす処理を組み合わせたときに、最初と2番目の花房の出現が最も早まった。ただし、その分収穫量が大きく増えたわけではなく、むしろ早く植えた株ほど果実は小粒になる傾向がみられ、研究チームはこれを株が受ける生理的なストレスの表れと捉えている。
「早く咲かせる」ことと「質を保つ」ことのバランス
両品種に共通して、花房が早く出るほど、その後の累積収穫量が多くなるという統計的な関連が確認された。ただし「04」では、早い時期の定植によって花房や果実の数が増えすぎると、平均的な果実重量に加えて糖度や果実の硬さも低下する傾向が見られた。これは、次々と花房をつけて咲かせ続けることが株にとって負担となり、果実の質に影響した可能性を示すものだという。実際、日長をさらに延ばす処理を加えると果実の硬さの低下がより目立った場合もあり、過剰な開花促進が品質面のトレードオフを伴いうることがうかがえる。
これらの結果から研究チームは、四季成り性が強い品種は早期定植と最小限の日長補光で早期の生産を狙える一方、四季成り性が弱い品種では早期定植に加えて日長を延ばす処理と、果実の質を保つための追加的な工夫(二酸化炭素濃度や湿度の管理など)を組み合わせる必要があると述べている。
この研究を読むうえで注意したいこと
この実験は、岡山県内の農研機構西日本農業研究センターの温室で、2021年の夏から秋にかけての1作期のみを対象に行われたものである。著者らも限界として、定植時期と気温の影響が実験の性質上切り離せなかった点を挙げている。早い時期に定植した株ほど高温にさらされ、遅い時期に定植した株ほど涼しい環境で育ったため、開花の違いが定植のタイミングそのものによるものか、気温の違いによるものかを完全には区別できないという。また、自然日長のもとでも定植時期によって実際に受けた日照時間が異なっていたため、日長だけの純粋な効果を取り出すことも難しいとしている。さらに単年度の実験であるため、年による気象条件の違いが結果にどう影響するかは今回のデータからは分からない。品種はあくまで「04」と「よつぼし」という2種類に限られており、他の四季成り品種でも同様の傾向が見られるかどうかは今後の検証が必要とされている。
まとめ
四季成りイチゴを早い時期から収穫につなげようとする場合、品種がもともと持つ開花の性質によって、定植時期や日長管理の効果的な組み合わせ方が大きく異なることが、今回の研究から示された。四季成り性が強い品種では早期定植のみでも早期収穫が見込める一方、弱い品種では日長管理と品質維持策を併用する必要があるという知見は、年間を通じた安定生産を目指す栽培管理を考えるうえでの一つの手がかりになりそうだ。ただし本研究は単一の作期・限られた品種数での結果であり、直ちに一般の栽培条件すべてに当てはまると断定できるものではない。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Minori Hikawa-Endo, Ryosuke Yamanaka, Takayoshi Yano. Effects of Transplanting Date and Photoperiod on Flowering of Everbearing Strawberries. ホートテクノロジー (2026). DOI: 10.21273/horttech05928-26.