イチゴは傷みやすく、収穫後わずか数日で水分が抜けたり甘みが落ちたりしてしまう果物です。防腐剤を使わずに鮮度を保つ方法として、近年はハーブや植物から抽出した精油を「くん蒸(燻蒸)」、つまり容器内で気化させて果実に触れさせる手法が注目されています。中国・浙江外国語学院の研究チームは、香草として知られるバジルの精油をイチゴの保存に使えないか、2024年3月から6月にかけて実験室で検証しました。

タイバジルと甘みバジル、2種類の精油を比較

研究チームは、タイバジル(Ocimum basilicum var. thyrsiflorum)と、いわゆる甘みバジル(スイートバジル、Ocimum basilicum L.)という2種類のバジルを使いました。まず50℃で24時間乾燥させた葉を水に浸し、水蒸気蒸留という方法で240分かけて精油を取り出しています。このとき、セルラーゼとペクチナーゼという酵素(クエン酸緩衝液中に1.5%の濃度で調製)で葉をあらかじめ処理した場合と、処理しない場合の2通りで精油の収量を比較しました。結果は、酵素で前処理したほうがかえって精油の抽出効率が下がったというものでした。

くん蒸したイチゴは重さの減りが緩やかに

次に、熟度をそろえたイチゴを用意し、抽出したタイバジル精油または甘みバジル精油でくん蒸し、25℃で72時間保存する実験を行いました。何も処理しない対照群と比べ、重量減少(水分が抜けて軽くなる度合い)・可溶性固形分含量(糖分などの目安となる指標)・滴定酸度(酸味のもとになる有機酸の量)の3点を測定しています。

その結果、タイバジル精油・甘みバジル精油のどちらでくん蒸した場合でも、イチゴの重量減少は対照群より緩やかになったと報告されています。可溶性固形分の保持についてはタイバジル精油が最も良好で6.00%という値が示され、一方で滴定酸度の維持についてはわずかに甘みバジル精油のほうが優れ1.59%という結果だったとされています。研究チームはこれらの結果から、バジル精油によるくん蒸がイチゴの呼吸作用を抑え、水分・糖分・有機酸が失われるのを遅らせている可能性を挙げています。

この研究をどう読むか

この実験は25℃・72時間という限られた条件下でのラボスケールの検証であり、対象もイチゴという一つの果物に絞られています。バジル精油のくん蒸が常温での保存にどの程度使えるか、味や香りへの影響、他の温度条件や果物での効果については、この研究だけでは分かりません。あくまで一つの基礎研究の結果であり、結論が確定したものではない点に留意して読む必要があります。

まとめ

今回の研究では、タイバジルと甘みバジルの精油をイチゴのくん蒸に使うと、重量減少が緩やかになり、糖分や酸味の指標も対照群より保たれやすい傾向が示されました。天然由来の保存技術として今後の展開が期待される分野ですが、実用化に向けてはさらなる検証が必要と考えられます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Yuxuan Wu, Xiaoyan Li. Steam-distilled Basil Essential Oil for Strawberry Preservation and Its Effects on Fruit Quality. アジアン・ジャーナル・オブ・リサーチ・イン・バイオケミストリー (2026). DOI: 10.9734/ajrb/2026/v16i5518. 原著ライセンス: cc-by.