著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

貧血は、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンが不足した状態で、世界的な公衆衛生上の課題とされています。特に開発途上国の幼い子どもや出産可能年齢の女性で深刻です。インドで2019〜21年に行われた第5回全国家族健康調査(NFHS-5)の報告によると、生後6〜59か月の子どもの67%以上が貧血でした。前回調査(2015〜16年)の58.6%から増えており、なかでも北東部で割合が高いと指摘されています。

著者らによると、これまでの研究は主に有病率の推定に重点を置いていました。子ども本人、母親、世帯、健康状態に関わる要因と地域ごとの違いを、北東部全体で同時に分析した研究は不足していたといいます。そこで研究チームは、北東部の5歳未満児における貧血の広がりと地域的な偏り、関連する要因を明らかにすることを目指しました。

調べた方法

研究チームはNFHS-5のデータから、インド北東部8州に住み、有効なヘモグロビン測定値がある生後6〜59か月の子ども2万6522人を分析対象としました。ヘモグロビン値は、指先などから採った少量の血液を携帯型の測定器で測ったものです。標高1000メートルを超える地域では、標高の影響を補正しています。

貧血の基準は、ヘモグロビン値が1デシリットルあたり11.0グラム未満です。子どもは「中等度〜重度の貧血」「軽度の貧血」「貧血なし」の3群に分けられました。

分析した要因は多岐にわたります。子どもについては年齢、性別、出生順位、生まれたときの大きさ、直近2週間の下痢や発熱、栄養状態を調べました。栄養状態には、年齢に比べて身長が低い「発育阻害」や、体重が少ない「低体重」が含まれます。母親については年齢、教育歴、貧血の有無、体格指数(BMI)を、世帯についてはトイレ、調理用燃料、飲料水の種類、都市か農村か、経済水準、州などを取り上げました。

これらの要因と貧血の関連は、統計的な検定と、複数の要因を同時に考慮する回帰分析で検討されました。地図ソフトを使った空間分析も行われています。

主な結果

論文の集計では、対象児のうち約30%が中等度〜重度の貧血、約34%が軽度の貧血で、貧血がなかったのは約36%にとどまりました。著者らは、この地域で子どもの貧血がいまも高い頻度でみられると報告しています。

年齢による差ははっきりしていました。中等度〜重度の貧血の割合は、生後6〜11か月で47.7%と最も高く、48〜59か月では19.95%まで下がりました。一方、性別による統計的に意味のある差はみられませんでした。

栄養状態や最近の病気も関連していました。中等度〜重度の貧血の割合は、発育阻害のある子どもで34.86%(ない子どもでは27.13%)、低体重の子どもで35.40%(同27.78%)、直近2週間に発熱があった子どもで33.68%(同29.11%)でした。

母親に関わる要因との結びつきは特に強いと著者らは述べています。母親が中等度の貧血である子どもでは、中等度〜重度の貧血の割合が38.69%でした。母親に貧血がない子どもでは22.68%です。母親の教育歴でみると、教育を受けていない場合は34.99%、高等教育を受けた場合は22.20%でした。

世帯の状況や社会経済的な格差も表れています。中等度〜重度の貧血の割合は、安全でない調理用燃料を使う世帯では31.56%で、安全な燃料を使う世帯の27.26%を上回りました。農村部は30.85%、都市部は24.38%でした。経済水準では、最も貧しい層が32.84%、最も豊かな層が17.93%です。

州による違いも大きく、著者らはアッサム州で負担が最も大きいと報告しています。同州では貧血のない子どもの割合が30.36%で、州の中で最も低い値でした。

著者らは、子どもの年齢、栄養状態、母親の貧血、世帯の環境が重要な予測因子であると結論づけています。ただし、これらは調査データにもとづく関連であり、ある要因が貧血を直接引き起こすことを示したものではありません。

研究が示すもの

この研究は、インド北東部の幼い子どもの貧血が一つの原因だけで説明できるものではないことを示しています。栄養、母親の健康、暮らしの環境といった、互いに結びついた多くの要因が関わっています。著者らは、地域の実情に合わせた対策が必要だと述べています。具体的には、母親の栄養、子どもへの食事の与え方、世帯の環境を改善することを挙げています。

原著論文の著者・所属:Hazowary, Birkang(Research Scholar, Department of Geography, Bodoland University, Kokrajhar, Assam, India)、Mushahary, Gwmsath(Assistant Professor, Department of Geography, Kokrajhar University, Kokrajhar, Assam, India *Corresponding author E-mail address:)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hazowary, Birkang, Mushahary, Gwmsath. Prevalence of anaemia among children under five in Northeast India: evidence from NFHS-5 data. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-10-12. DOI: 10.5281/zenodo.23310691. 原著ライセンス:CC BY.