著者の所属・活動拠点の国は、エジプトです。

掲載誌:Pediatric Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ子どもの栄養状態を見極めるのが難しいのか

慢性腎臓病の子どもでは、成長の遅れや栄養不良が大きな問題になります。食事量の減少に加え、エネルギー消費の増加、栄養素の利用の変化や喪失、ホルモンの異常、慢性的な炎症などが重なります。末期腎不全で血液透析を受けると、たんぱく質の損失がさらに進むこともあります。こうした複数の要因によって体のたんぱく質やエネルギーの蓄えが減った状態は「たんぱく質・エネルギー消耗状態(PEW)」と呼ばれます。ただし、子どもについては広く受け入れられた定義がまだありません。

さらに、子どもの栄養状態を一つで正確に示す客観的な基準法もありません。体重や身長、体格指数(BMI)といった身体計測は、むくみや体液量の変動に影響されます。BMIだけでは、皮下脂肪が減ったのか筋肉が減ったのかも区別できません。筋肉量を正確に測るDEXAやMRI、CTは費用がかかり、ベッドサイドでは使いにくく、放射線や強い磁場にさらされることもあります。

そこで研究チームは、二つの方法に注目しました。一つは、病歴と身体診察から栄養状態を総合的に判定する「主観的包括的栄養評価(SGNA)」です。もう一つは、手軽にベッドサイドで行える超音波による大腿の筋肉の厚さの測定です。著者らは、血液透析を受ける末期腎不全の子どもで、この二つの評価がどのように協力して役立つかを検討しました。あわせて、食事からの栄養摂取や身体計測との関係も調べました。

どのように調べたか

研究は、ある一時点のデータを比較する横断的な症例対照研究として、単一の大学病院で行われました。対象は、血液透析を受けている4〜17歳の末期腎不全の子ども68人です。比較のため、年齢と性別をそろえた健康な子ども68人も調べました。

身長と体重から成長の遅れ(低身長)ややせを判定し、上腕の周囲長、皮下脂肪の厚さ、大腿の周囲長も測りました。食事内容は、平日2日と週末1日の計3日分について、前日に食べたり飲んだりしたものを聞き取る方法で調べました。そこからエネルギーや、たんぱく質・脂質・炭水化物の摂取量を算出しています。

SGNAでは、成長や体重の変化、食事の量、消化器症状、日常の活動能力、病気による負担などの病歴を確認します。さらに、筋肉のやせや皮下脂肪の減少、むくみを診察し、子どもを「栄養良好」「中等度の栄養不良」「重度の栄養不良」に分けました。PEWは、体格、血液検査値、食欲、身長の伸びなどの基準から判定しました。超音波検査では、透析の直前と直後に太ももの3つの筋肉の厚さを測定しました。小児の年齢別の基準値を下回る場合を「筋肉量の低下」としました。

主な結果

透析を受ける子どもでは、低身長が70.6%と多く見られました。一方、BMIで判定したやせは8.8%にとどまりました。ところがSGNAでは85.3%が栄養不良と判定され、その内訳は中等度35.3%、重度50%でした。PEWは70.6%に認められ、超音波で筋肉量の低下が見られた子どもは73.6%でした。3つの筋肉の厚さは、いずれも健康な子どもより有意に薄いと報告されています。

食事の面では、透析を受ける子どもの1日あたりの摂取量は健康な子どもと比べて大きく不足していました。総エネルギーは約46%、脂質は約51%、たんぱく質は約57%にとどまりました。総エネルギーの中央値は1日618キロカロリーで、健康な子どもの1346.5キロカロリーを大きく下回りました。炭水化物の摂取量には、両群で有意な差は見られませんでした。

PEWと判定された子どもは全員がSGNAで中等度または重度の栄養不良とされ、全員に筋肉量の低下が見られました。PEWのない子どもで筋肉量が低下していたのは10%でした。筋肉量が低下した子どもは、総エネルギー、炭水化物、脂質の摂取量が有意に少なくなっていました。たんぱく質も少ない傾向でしたが、統計的に意味のある差には至りませんでした。体重1キログラムあたり1日約34キロカロリー以下という総エネルギー摂取量の目安は、筋肉量の低下を見分ける上で最も成績がよいと報告されました。この目安の感度は93.75%、特異度は85%でした。

ほかの要因を調整した解析では、総エネルギー摂取量がPEWと筋肉量の低下の両方に関連する因子として示されました。一方、BMIはPEWとは関連したものの、筋肉量の低下とは関連しませんでした。評価法どうしの一致度を見ると、SGNAと超音波による筋肉評価の間には良好な一致がありました。また、両者はいずれもPEWと中程度に一致していました。BMIは、SGNAとはまずまずの一致でしたが、超音波との一致は乏しいものでした。

この研究が示すこと

著者らは、病歴と診察に基づくSGNAが、身体計測だけでは見落とされやすい栄養不良や筋肉の異常を拾い上げる簡便な手段になりうると述べています。また、大腿の筋肉の超音波検査は、透析を受ける子どもの筋肉量の低下を捉える補助的な方法として有望だとしています。そのうえで、SGNAによる選別、食事摂取の確認、筋肉量の評価を組み合わせて栄養状態をみることを提案しています。

ただし、この研究は一時点の観察に基づくため、エネルギー摂取の不足が筋肉量の低下を引き起こしたという因果関係までは示せません。また、単一施設で透析を受ける子どもだけを対象としています。食事の聞き取りには記憶違いの影響があり、超音波検査は検査者の技量に左右されます。こうした点に留意しつつも、この研究は、一つの指標だけでは捉えにくい子どもの栄養状態を、複数の手段を組み合わせて評価するという考え方を具体的に示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Heba M. S. El Zefzaf(Department of Pediatrics, Faculty of Medicine, Menoufia University, Shebin El-Kom, Egypt)、Ghada Mohamed El Mashad(Department of Pediatrics, Faculty of Medicine, Menoufia University, Shebin El-Kom, Egypt)、Waleed A. Mousa(Department of Radiology, Faculty of Medicine, Menoufia University, Shebin El-Kom, Egypt)、Ahmed E. Dwedar(Ministry of Health, Cairo, Egypt)、Sanaa M. Mohamed(Department of Pediatrics, Faculty of Medicine, Menoufia University, Shebin El-Kom, Egypt)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Heba M. S. El Zefzaf, Ghada Mohamed El Mashad, Waleed A. Mousa, et al. Collaborative role of muscle ultrasonography and subjective global-nutritional assessment in pediatric end-stage renal disease. Pediatric Research 2026-10-22. DOI: 10.1038/s41390-026-05525-z. 原著ライセンス:CC BY.