著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Food Biophysics

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

パイナップルは風味のよい熱帯果実で、他の果実と組み合わせて加工されることがあります。アセロラは果肉にビタミンCを多く含み、アントシアニンやカロテノイドといった色素成分も持っています。ただし、アセロラ果肉の有用成分は、pH、光、酸素、温度の影響を受けて変化しやすいことが知られています。乾燥はこの問題を補い、果実の利用の幅を広げる方法のひとつです。

凍結乾燥(フリーズドライ)は、凍らせた食品を真空下に置き、氷を液体にせず直接水蒸気に変えて取り除く方法です。品質を保ちやすい一方で、処理に長い時間がかかり、エネルギー費用が高いという欠点があります。これを補う方法として、乾燥中に赤外線で加熱する手法が注目されてきました。

著者らは、果実を混ぜ合わせた粉末をこの方法でつくり、赤外線が栄養価の高い成分を守れるかを確かめた研究は少ないと指摘しています。そこで研究チームは、パイナップル、アセロラ、その混合果肉を、通常の凍結乾燥と近赤外線を併用した凍結乾燥で乾燥させ、乾燥の効率、粉末と水で戻した果肉の性質、とろみ(流れやすさ)、ビタミンCやフェノール化合物の量、抗酸化能力を比べました。

何をどのように調べたか

研究チームはブラジルのスーパーマーケットで購入したパイナップルとアセロラを洗浄し、それぞれ水を加えてミキサーにかけ、果肉ピューレを用意しました。パイナップルだけのもの、パイナップル75%とアセロラ25%、半分ずつ、パイナップル25%とアセロラ75%、アセロラだけのものの5種類の配合を作りました。

これらを零下75℃で24時間凍らせたあと、凍結乾燥機にかけました。近赤外線を併用する条件では、乾燥室の上部に近赤外線ランプを取り付けて連続的に加熱し、乾燥室内の温度を30〜35℃に保ちました。5種類の配合と2種類の乾燥法を組み合わせ、それぞれ3回ずつ乾燥を行っています。

調べた項目は、乾燥中の果肉の温度変化、取り除かれた水の量と除去速度、粉末の水分活性(微生物の増殖や化学反応に使われやすい水がどれだけあるかの指標)、色、水で戻した果肉の粘り、ビタミンC量、植物に多く含まれる成分群であるフェノール化合物の総量、複数の方法による抗酸化能力、さらに電子顕微鏡で見た粉末の表面構造などです。

主な結果

乾燥の効率では、アセロラの割合が多い果肉ほど水分の減少が大きくなりました。著者らは、アセロラ果肉は固形分が少なく、乾燥中に構造が崩れにくいことと関連づけています。近赤外線を併用すると、同じ配合どうしで比べて水分の減少割合は増える傾向にありましたが、統計的に意味のある差が出たのはパイナップル75%・アセロラ25%の配合だけでした。この配合では水の除去速度も有意に高まりましたが、ほかの配合では同様の効果は見られませんでした。

粉末の水分活性は0.198〜0.441の範囲でした。近赤外線を併用すると、パイナップル75%・アセロラ25%の配合とアセロラだけの配合で値が低くなりました。研究チームは、水分活性が低いことは化学反応や微生物の増殖を抑えるうえで望ましいとしています。色にはいくつかの変化がありましたが、加熱による褐変(メイラード反応による茶色化)は見られず、著者らは近赤外線の併用で製品の色が保たれたと報告しています。一方、水で戻した果肉では、パイナップルだけのものを除いて赤みがやや弱まり、近赤外線を使った場合にその傾向が少し目立ちました。著者らはこれを、色素であるアントシアニンのわずかな分解によるものと説明しています。

栄養面では、乾燥前の果肉と比べて、ビタミンC量と2種類の方法で測った抗酸化能力は、どちらの乾燥法でも差がありませんでした(水分を除いた重さあたりで比較)。また、アセロラの割合が増えるほどビタミンC量は有意に多くなりました。乾燥法どうしを比べると、近赤外線を併用した粉末では、フェノール化合物の総量と、DPPH法と呼ばれる測定での抗酸化能力が有意に高くなりました。著者らは、赤外線が食品の内部に直接熱を伝えることで、分子の結びつきが一部ほどけ、低分子の抗酸化成分が放出された可能性を挙げています。

水で戻した果肉は、かき混ぜる力を強めるほど流れやすくなる性質(擬塑性)を示し、アセロラの割合が多いほど粘りが強くなりました。近赤外線の併用は、こうした流れ方の性質を変えませんでした。電子顕微鏡で見ると、粉末は表面が不規則でざらつき、氷が抜けた跡の小さな穴が見られました。通常の凍結乾燥では、パイナップルだけの粉末の空隙率は0.29%と特に低かったのに対し、近赤外線を併用した粉末はどの配合でも3〜4%程度でした。著者らは、糖分の多いパイナップル果肉は構造が縮みやすいこと、近赤外線による加熱で残った水が蒸気となり新たな穴ができることを理由として挙げています。

研究が示すこと

研究チームは、凍結乾燥に近赤外線を組み合わせることで、通常の凍結乾燥と比べて果肉の品質特性を保ちながら乾燥効率を高められると結論づけています。ビタミンC量は保たれ、フェノール化合物の量や一部の抗酸化能力はむしろ高まり、水で戻したときのpHや粘りの性質も維持されました。乾燥効率の向上が統計的に確認できたのは一部の配合に限られますが、この研究は、パイナップルとアセロラを組み合わせた果実粉末づくりにおいて、近赤外線を併用する乾燥法が品質を損なわずに使える選択肢になりうることを示しています。

原著論文の著者・所属:Adriany Aparecida Roquini Lima(Department of Food Science, Laboratory of Food Refrigeration, Federal University of Lavras, P.O. Box 3037, Lavras, 37200-900, Minas Gerais, Brazil)、Ana Cristina Freitas de Oliveira Meira(Department of Food Science, Laboratory of Food Refrigeration, Federal University of Lavras, P.O. Box 3037, Lavras, 37200-900, Minas Gerais, Brazil)、Ingrid Alves Santos(Department of Food Science, Laboratory of Food Refrigeration, Federal University of Lavras, P.O. Box 3037, Lavras, 37200-900, Minas Gerais, Brazil)、Karen Lendengue de Matos Regalado(Department of Food Science, Laboratory of Food Refrigeration, Federal University of Lavras, P.O. Box 3037, Lavras, 37200-900, Minas Gerais, Brazil)、Amanda Fernandes Pereira(Department of Food Science, Laboratory of Food Refrigeration, Federal University of Lavras, P.O. Box 3037, Lavras, 37200-900, Minas Gerais, Brazil)、Eduardo Valério de Barros Vilas Boas(Department of Food Science, Laboratory of Food Refrigeration, Federal University of Lavras, P.O. Box 3037, Lavras, 37200-900, Minas Gerais, Brazil)、Jaime Vilela de Resende(Department of Food Science, Laboratory of Food Refrigeration, Federal University of Lavras, P.O. Box 3037, Lavras, 37200-900, Minas Gerais, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Adriany Aparecida Roquini Lima, Ana Cristina Freitas de Oliveira Meira, Ingrid Alves Santos, et al. Effects of Near-Infrared Assisted Freeze-Drying on the Quality of Pineapple and Acerola Pulp Blends. Food Biophysics 2026-10-19. DOI: 10.1007/s11483-026-10235-4. 原著ライセンス:CC BY.