この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的とした研究か
ブルグルは、デュラム小麦(Triticum durum)を加熱調理してから乾燥・挽き割りして作られる穀物食品です。この製造工程では、加熱調理を終えた小麦が次の工程に移るまでのあいだ、水分を多く含んだ状態で一定時間置かれることになります。研究チームは、この「加熱後の保持」の期間に品質がどのように劣化していくのか、そしてそれがいつ起こるのかを明らかにすることを目的としました。
具体的には、加熱調理後のデュラム小麦を25℃、35℃、45℃という3つの温度で保持し、温度の違いが劣化の進み方をどう変えるのかを調べています。
どのように調べたか
研究チームは、物理化学的な分析、微生物の分析、そして香りのもとになる揮発性成分の分析を組み合わせて実施しました。あわせて、官能評価によって「異臭が感じられ始めた時点」を劣化の到達点(エンドポイント)として定め、そこまでの経過を追っています。
揮発性成分の分析にはガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)が用いられました。これは試料に含まれる微量の成分を分離して特定する手法です。さらに、検出された成分それぞれが全体の香りにどれだけ寄与しているかを見積もるため、相対的な臭気活性値(ROAV)による解析が行われました。
報告された主な結果
まず、保持中の水分含量はどの温度でも高いまま推移したと報告されています。酸に関する指標では、滴定酸度が1.49から2.15へと上昇し、異臭が現れた時点でのpHは温度が高くなるほど6.63から6.49へと低下しました。
異臭が検出されるまでの時間は、25℃で50時間、35℃で45時間、45℃で34時間でした。つまり温度が高いほど早く異臭が現れています。一方で微生物の増殖が最も速かったのは35℃で、最大比増殖速度(μmax)は0.0651 h⁻¹と報告されています。
脂質の酸化に関しては、チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の値が、保持時間が短いにもかかわらず45℃のほうが25℃よりわずかに低くなりました。同じ比較において、脂質酸化に由来する揮発性アルデヒド類はより大きく減少していました。研究チームは、この傾向と45℃で異臭が最も早く現れたこととを合わせて、保持温度が上がるにつれて脂質以外に由来する揮発性成分が異臭の知覚をより強く牽引するようになることを示唆すると述べています。
ROAV解析では、香りのプロファイルに主に寄与する成分として、2-メトキシ-4-ビニルフェノール、2,4-デカジエナール、2-ノネナール、2,3-ブタンジオン、ノナナール、2-メトキシフェノールが特定されました。
この研究が示すこと
著者らは、加熱調理後の保持中に起こる異臭の発生が、微生物による劣化と化学的な劣化という2つの経路が温度に応じて絡み合った結果であると述べています。温度を上げれば単純にすべての劣化が速く進むというわけではなく、どの経路が優勢になるかが温度によって変わる、という描像が示されています。
論文は、この知見がブルグル製造において保持時間と温度を最適化し、異臭の発生を遅らせて品質の損失を抑えるための土台になると位置づけています。
著者:Betül Bay Yılmaz(Department of Food Engineering, Faculty of Chemical and Metallurgical Engineering, Yildiz Technical University, Istanbul 34210, Türkiye)、Nüzhet Türker(Department of Food Engineering, Faculty of Engineering, Mersin University, Mersin 33343, Türkiye)、Mustafa Bayram(Department of Food Engineering, Faculty of Engineering, Gaziantep University, Gaziantep 27310, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Betül Bay Yılmaz, Nüzhet Türker, Mustafa Bayram. Post-Cooking Quality Deterioration of Wheat (Triticum durum) During Bulgur Production. Foods 2026-08-25. DOI: 10.3390/foods15172983. 原著ライセンス:CC BY.