この研究は、ポルトガルの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Animals
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
食肉産業では、肉の品質を手早く、しかも肉を傷つけずに評価できる方法が求められています。従来の分析は試料を切り出したり薬品で処理したりする必要があり、時間も手間もかかるためです。
研究チームが着目したのは、レーザー光後方散乱イメージング(LLBI)と呼ばれる手法です。肉の表面にレーザー光を当てると、光は内部で散乱しながら広がり、表面に特有の光の模様をつくります。この模様を画像として捉え、肉の性質を推定できないかを調べたのが本研究です。対象としたのは、ポルトガル原産の在来品種であるアロウケーザ牛の牛肉で、物理化学的な性質と、酸化ストレスに関わる指標の評価にLLBIが使えるかどうか、またpHと関連しうる変化を非侵襲的に捉えられるかを検討しています。
何をどう調べたか
著者らは、アロウケーザ種の去勢雄牛から採取した胸最長筋・腰最長筋(LTL、いわゆるロース部分にあたる筋肉)34点を用いました。と畜後24時間の時点で、肉のpHと酸化ストレスのバイオマーカー(細胞が酸化的な負荷を受けた程度を示す生体指標)を測定しています。
同じ時点で、緑色と赤色の2種類のレーザー光源を使って後方散乱画像を撮影しました。得られた光の広がりのパターンについて、中心部(コア)、内側のリング、外側のリングにあたる領域の面積をそれぞれ計測し、これをLLBIの指標としています。
その後、試料を真空包装して4℃で7日間保存し、酸化ストレスのバイオマーカーを再度測定しました。あわせて、肉色、保水性、サルコメア長(筋肉を構成する収縮単位の長さ)、せん断力(肉の硬さの指標)を測定しています。
報告された主な結果
論文によれば、LLBIから得られた指標と、と畜後24時間のpH(pH24h)、色の座標値、加熱損失(調理時に失われる水分量)、ドリップロス(保存中に肉から出る液体の量)、せん断力との間に、有意な相関が認められました。
さらに、酸化ストレスのバイオマーカーもレーザー散乱の指標と相関していたと報告されています。
著者らは全体として、LLBIはアロウケーザ牛肉の物理化学的な品質特性および酸化ストレスに関わる特性を評価するための、迅速かつ非侵襲的な手法として相当な可能性を示したとまとめ、食肉品質のモニタリングのための新しいツールとしての応用を支持する結果だとしています。
この研究が示すこと
ここで示されたのは、レーザー光の散乱の広がり方という光学的な情報が、肉の酸性度や色、水分の保たれ方、硬さ、さらには酸化ストレスの状態といった複数の性質と関係している、という対応関係です。相関が確認されたということであり、光の模様が品質を決めているという因果関係を示したものではありません。
それでも、肉を切り分けたり壊したりせずに測定できる手法が、これだけ幅広い品質指標と結びついていたという報告は、食肉の品質評価のあり方を考えるうえで一つの手がかりになります。
著者:Mariana Caipira Lei(Animal and Veterinary Department, University Institute of Health Sciences (IUCS), Polytechnic and University Higher Education Cooperative (CESPU), Avenida Central de Gandra, 1317, 4585-116 Gandra, Portugal)、Mariana Almeida(Veterinary and Animal Research Centre (CECAV) and Associate Laboratory of Animal and Veterinary Science (AL4AnimalS), University of Trás-os-Montes e Alto Douro, Quinta de Prados, 5000-801 Vila Real, Portugal)、Virgínia Santos(Department of Animal Science, School of Agrarian and Veterinary Sciences (ECAV), University of Trás-os-Montes and Alto Douro (UTAD), Quinta de Prados, 5000-801 Vila Real, Portugal)、José A. Silva(Department of Veterinary Science, University of Trás-os-Montes and Alto Douro (UTAD), Quinta de Prados, 5001-801 Vila Real, Portugal)、José M. Almeida(Department of Veterinary Science, University of Trás-os-Montes and Alto Douro (UTAD), Quinta de Prados, 5001-801 Vila Real, Portugal)、Luís Félix(Centre for the Research and Technology of Agro-Environmental and Biological Sciences (CITAB), Inov4Agro, University of Trás-os-Montes and Alto Douro (UTAD), Quinta de Prados, 5000-801 Vila Real, Portugal)、Severiano Silva(Department of Animal Science, School of Agrarian and Veterinary Sciences (ECAV), University of Trás-os-Montes and Alto Douro (UTAD), Quinta de Prados, 5000-801 Vila Real, Portugal)、Carlos Venâncio(Centre for the Research and Technology of Agro-Environmental and Biological Sciences (CITAB), Inov4Agro, University of Trás-os-Montes and Alto Douro (UTAD), Quinta de Prados, 5000-801 Vila Real, Portugal)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mariana Caipira Lei, Mariana Almeida, Virgínia Santos, et al. The Potential of Laser-Light Backscattering for Assessment of Physicochemical and Oxidative Stress-Related Traits in Arouquesa Beef. Animals 2026-08-25. DOI: 10.3390/ani16172665. 原著ライセンス:CC BY.