この研究は、台湾の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Genes & Nutrition
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
健康診断で「尿酸値が高め」と言われたことはないでしょうか。高尿酸血症は痛風だけでなく、代謝や心血管の病気とも関わりがあるとされています。食生活を見直せば防げるのか、それとも生まれ持った体質の影響が大きいのか、気になるところです。
今回紹介するのは、台湾の大規模コホートを対象に、ある遺伝子の型と菜食習慣が高尿酸血症とどう関係しているかを調べた研究です。着目したのは「ABCG2 rs2231142」という遺伝子多型です。この遺伝子は尿酸を体外へ排出する働きに関わるとされています。
研究でわかったこと
研究チームは、台湾バイオバンクに登録された11,113人のデータを使いました。参加者をABCG2 rs2231142の遺伝子型(GG型とGT/TT型)で分け、菜食か非菜食かという食習慣や、その他の臨床的な要因も含めて分析しています。
統計的な手法(ロジスティック回帰分析)を使い、高尿酸血症になりやすさをオッズ比という数値で比較しました。全体では、参加者の11.1%が高尿酸血症に該当していました。
まず、GT/TT型を持つ人は、GG型の人に比べて高尿酸血症の割合が高く、リスクも有意に高いという結果でした。次に、この遺伝子型と食習慣(菜食かどうか)の間には、統計的に意味のある相互作用は見られませんでした。
具体的な数値を見てみます。GG型の菜食者を基準にすると、GT/TT型の菜食者ではオッズ比が2.198倍、GT/TT型の非菜食者では2.171倍でした。つまり、菜食であってもなくても、GT/TT型を持つ人はリスクが高いままだったのです。
性別で分けた分析でも、同様の傾向が示されました。女性のGT/TT型保有者は、菜食・非菜食のどちらでもオッズ比が3倍以上に達しています。男性でも、非菜食では有意なリスク上昇が見られました。
飲酒習慣やBMI(体格指数)で分けた分析でも、GT/TT型を持つ人は菜食かどうかにかかわらずリスクが高い傾向が続きました。特にBMIが24未満のグループでは、菜食・非菜食を問わずGT/TT型のリスク上昇が目立つ結果となっています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
研究チームは、この結果について「ABCG2 rs2231142のT対立遺伝子が尿酸の恒常性に強い影響を及ぼしており、菜食では相殺しきれない」という見方を示しています。食事の工夫だけでは、遺伝的にリスクが高い人には十分でない可能性がある、という指摘です。
この研究は台湾のコホートを対象とした症例対照研究であり、特定の集団における関連を示したものです。遺伝子型と食習慣の関係が他の集団でも同様に当てはまるかどうかは、この要旨だけでは分かりません。一つの研究として捉え、結論が確定したものではない点に留意する必要があります。
まとめ
この研究では、ABCG2 rs2231142のGT/TT型を持つ人は、菜食か非菜食かにかかわらず高尿酸血症のリスクが高いことが示されました。遺伝子型と食習慣の間に有意な交互作用はなく、食事だけに頼らない対策の重要性が浮かび上がる結果と言えます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):台湾の大規模コホートにおけるABCG2 rs2231142多型と菜食との相互作用が高尿酸血症の有病率に与える影響(ジーンズ・アンド・ニュートリション・2026年08月)
著者:Wei-Yang Ding(Department of Family Medicine, Taichung Veterans General Hospital, Taichung, Taiwan)、Chien‐Heng Lin(Aging and Health Research Center, National Yang Ming Chiao Tung University, Hsinchu, Taiwan)、Chien‐Heng Lin(Aging and Health Research Center, National Yang Ming Chiao Tung University, Hsinchu, Taiwan)、Jun-Fu Lin(Department of Medical Research, Taichung Veterans General Hospital, Taichung, Taiwan)、Yimin Cheng(Department of Medical Education, Taichung Veterans General Hospital, Taichung, 40705, Taiwan)、Pi-Shan Hsu(Aging and Health Research Center, National Yang Ming Chiao Tung University, Hsinchu, Taiwan)、Chu‐Sheng Lin(Aging and Health Research Center, National Yang Ming Chiao Tung University, Hsinchu, Taiwan)、Chu‐Sheng Lin(Aging and Health Research Center, National Yang Ming Chiao Tung University, Hsinchu, Taiwan)