著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

プリン体の代謝異常で血中の尿酸値が上がる高尿酸血症は、痛風だけでなく慢性腎臓病や高血圧、心血管疾患のリスクにも関わるとされています。治療薬としてアロプリノールやフェブキソスタットといったキサンチンオキシダーゼ(XOD、尿酸をつくる酵素)阻害薬が使われていますが、長期使用では過敏症や心血管への影響が懸念されることもあり、食品由来で安全性の高い介入法が求められてきました。今回、フロンティアーズ・イン・ニュートリション誌に2026年7月に掲載予定の研究で、中国の伝統的な機能性酒『竹葉青酒(ジュウイエチンチュウ)』からアルコールを除いて得た抽出物(ZLE)について、その成分と抗高尿酸血症作用を調べた結果が報告されました。

竹葉青酒とはどんな飲料か

竹葉青酒は戦国時代に起源を持つとされる中国の伝統的機能性飲料で、1998年には中国衛生部(当時)により機能性飲料として認可された歴史を持つとされます。淡竹葉(Lophatherum gracile)、クチナシ(Gardenia jasminoides)、トウキ(Angelica sinensis)、陳皮の原料となるミカン類(Citrus reticulata)、キク(Chrysanthemum morifolium)など、食品と生薬を兼ねるとされる8種を含む計12種の生薬から造られる酒とされ、中国伝統医学では「熱を清め、湿を除く」効能があるとされてきました。研究チームは、竹葉青酒を提供したXinghuacun Fenjiu Distillery社(山西省汾陽市)と、南開大学(天津市)医学部の研究者らによって構成されています。

抽出物の成分と、細胞・マウスでの実験結果

研究ではまず、竹葉青酒を50℃で減圧濃縮してエタノールを除去し、凍結乾燥することでZLEを調製しました(収率100mLあたり1.97g)。ガスクロマトグラフィー質量分析でZLE中の残留エタノールを測定したところ、0.207%(重量比)で、国際的な残留溶媒に関するガイドライン(ICH Q3C)が定めるクラス3溶媒の基準(0.5%)を下回っていたと報告されています。含有成分を定量したところ、多糖類が1ミリリットルあたり3.809ミリグラム、テルペン類が2.841ミリグラム、フラボノイド類が1.098ミリグラムなど、多糖とペプチドに富む抽出物であることが示されました。さらに高分解能の液体クロマトグラフィー質量分析(UPLC-MS/MS)により389種類の成分が同定され、イリドイド配糖体(ゲニポシドなど)、有機酸(クエン酸、キナ酸など)、フラボノイド類(ノビレチン、タンゲレチン、ヘスペリジンなど)が主な構成成分として挙げられています。

培養したヒト肝がん細胞(HepG2細胞)にアデノシンを加えて尿酸産生を誘導する実験では、ZLE(200および250ミリグラム/リットル)を加えた群で、培養上清中の尿酸量とXOD活性が、モデル群と比べて有意に低下したとされています。次に、ヒポキサンチンとオキソン酸カリウムを投与して高尿酸血症を誘導したマウス(5週齢の雄マウス、1群6匹)を用いた21日間の実験では、ZLEを100または200ミリグラム/キログラム/日で経口投与した群で、血清尿酸値が用量依存的に低下し、腎機能の指標であるクレアチニンや血中尿素窒素、肝機能の指標であるALT・ASTの値も改善したと報告されています。あわせて肝臓でのXOD活性も抑えられたとされます。なお、陽性対照として用いたアロプリノール投与群では体重減少がみられた一方、ZLE投与群では体重や肝臓・腎臓の重量指数が保たれ、比較的良好な忍容性が示唆されたとしています。

腎臓での尿酸の出入りに関わる4種のトランスポータータンパク質についても調べられています。高尿酸血症モデルマウスでは、尿酸を体内に再吸収する働きを持つURAT1とGLUT9の発現が増え、尿中への排出を担うOAT1とABCG2の発現が減っていましたが、ZLE投与によりこれらの変化が是正され、特に高用量群ではURAT1・GLUT9の抑制効果がアロプリノール群を上回ったと報告されています。さらに、高尿酸血症モデルマウスでは血中リポ多糖(LPS、腸由来の炎症誘発物質)の増加とともに、腎臓でのNLRP3・Caspase-1という炎症関連分子の発現上昇、IL-1βやIL-18といった炎症性サイトカインの増加、腎組織の尿細管腫大や糸球体萎縮といった病理変化がみられましたが、ZLE投与群ではこれらが軽減されたとされています。

研究の位置づけと読むうえでの注意

著者らは、今回用いたヒポキサンチン・オキソン酸カリウム誘導モデルは主に尿酸の「産生過剰」を反映するモデルであり、臨床で多い「腎臓からの排泄低下」型の高尿酸血症の特徴とは異なる点を限界として挙げています。また、ZLEには多種多様な成分が含まれており、今回の効果がどの成分の作用によるものか、あるいは複数成分の組み合わせによるものかは、この研究だけでは特定されていません。今回の結果は培養細胞とマウスを用いた基礎研究の段階であり、ヒトでの効果を証明したものではない点にも留意が必要です。

今回の報告は、伝統的な食品由来の飲料抽出物が、尿酸の産生・腎臓での輸送・炎症反応という複数の経路に働きかける可能性を示した基礎的な知見といえます。研究チームは、ZLEを高尿酸血症の食事による管理を目指した機能性食品素材として応用していく可能性に言及していますが、これは動物・細胞実験に基づく一つの研究結果であり、今後さらなる検証が必要とされる段階のものです。

著者:Bingye Xu(Tianjin Key Laboratory of Food Science and Health, School of Medicine, Nankai University)、Xiaoxiao Li(Xinghuacun Fenjiu Distillery Co., Ltd., Fenyang, Shanxi, China)、Rong Liu(Xinghuacun Fenjiu Distillery Co., Ltd., Fenyang, Shanxi, China)、Ying Han(Xinghuacun Fenjiu Distillery Co., Ltd., Fenyang, Shanxi, China)、Zhen Pan(Xinghuacun Fenjiu Distillery Co., Ltd., Fenyang, Shanxi, China)、Hanyue Fu(Tianjin Key Laboratory of Food Science and Health, School of Medicine, Nankai University)、Huan Lv(Tianjin Key Laboratory of Food Science and Health, School of Medicine, Nankai University)、Fan Wei(Tianjin Key Laboratory of Food Science and Health, School of Medicine, Nankai University)、Haoxin Cui(Tianjin Key Laboratory of Food Science and Health, School of Medicine, Nankai University)、Bowei Zhang(Tianjin Key Laboratory of Food Science and Health, School of Medicine, Nankai University)、Shuo Wang(Tianjin Key Laboratory of Food Science and Health, School of Medicine, Nankai University)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Bingye Xu, Xiaoxiao Li, Rong Liu, et al. Comprehensive phytochemical profiling of dealcoholized zhuyeqing liquor extract and its protective effect on hyperuricemia by regulating urate transporters and LPS/NLRP3 inflammasome pathway. フロンティアーズ・イン・ニュートリション (2026). DOI: 10.3389/fnut.2026.1876752.