この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:BMC Microbiology
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
睡眠のリズムが乱れがちな現代生活と、生活習慣病との関係が近年注目されています。「概日リズム症候群(Circadian Syndrome, CircS)」とは、肥満や高血圧、脂質異常などの代謝の問題に加え、睡眠や気分に関する不調も併せ持つ状態をまとめて捉える、比較的新しい疫学的な考え方です。これまでの研究で、この概日リズム症候群は健康面での好ましくない結果と関連することが報告されてきました。一方で、私たちが日々口にする食事は、腸内細菌の構成に影響を与えることが知られています。そこで今回紹介する研究では、腸内細菌叢との関連が想定される食事パターンをスコア化した「腸内細菌叢のための食事指数(DI-GM)」という指標と、概日リズム症候群との関連が調べられました。
研究でわかったこと
この研究では、米国の大規模健康調査であるNHANES(2007〜2018年)のデータを用い、成人18,491人を対象に、食事から算出したDI-GMスコアと概日リズム症候群との関係が、統計的な手法(調査重み付きロジスティック回帰分析や制限付き3次スプラインモデルなど)によって検討されました。その結果、DI-GMスコアが高い人ほど、概日リズム症候群に該当するオッズ(なりやすさの指標)が低いという逆相関の関連が示されました。DI-GMスコアが最も高いグループは、最も低いグループと比べてオッズが約0.69倍と報告されており、スコアが段階的に高くなるほどオッズも低下する傾向(トレンド)が見られたとされています。また、この関連は直線的な傾向が中心で、明確な非直線性を示す強い証拠は見られなかったとのことです。加えて、貧困所得比率や人種・民族、教育レベルによって関連の強さに違いがある可能性も示唆されました。
研究チームは、複数の機械学習アルゴリズムを用いて概日リズム症候群を判別できるかどうかも検証していますが、モデルの判別性能は中程度にとどまり、DI-GMを加えることによる予測力の上乗せは限定的だったと報告されています。さらに、DI-GMと概日リズム症候群との関連について、体格指数(BMI)や全身性免疫炎症指数(SII)といった要因が一部を媒介している可能性があることも示されました。つまり、食事パターンが体重や炎症関連の指標を介して、間接的に概日リズム症候群と結びついている可能性が示唆された、ということです。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある一時点でのデータをもとに関連を調べた「横断研究」であるため、DI-GMスコアが高いことが概日リズム症候群を防ぐ「原因」であるとまでは言えません。食事パターンと概日リズム症候群の間にどのような時間的な前後関係があるのかを明らかにするには、今後の長期的な追跡調査(縦断研究)が必要だと研究者らは述べています。また、対象は米国の成人であり、今回得られた関連が他の集団にもそのまま当てはまるかどうかは、この要旨だけからは判断できません。あくまで一つの研究として、今後さらなる検証が期待される段階の知見と捉えるのがよいでしょう。
まとめ
今回紹介した研究では、腸内細菌叢との関連が想定される食事パターンの指標であるDI-GMのスコアが高いほど、概日リズム症候群に該当するオッズが低いという関連が報告されました。この関連にはBMIや炎症関連の指標が一部関わっている可能性も示唆されています。ただし、これは特定の食事が症候群を「予防する」ことを証明したものではなく、今後の追加研究によって時間的な関係の解明が待たれる段階の結果です。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):腸内細菌叢のための食事指数と概日リズム症候群の関連:NHANES 2007〜2018年の横断研究(BMCマイクロバイオロジー・2026年08月)
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
著者:Xuannan Chen(Acupuncture and Tuina School, Chengdu University of Traditional Chinese Medicine, Chengdu, 611137, China)、Shengwei Ma(Acupuncture and Tuina School, Chengdu University of Traditional Chinese Medicine, Chengdu, 611137, China)、Tingting Zhou(School of Clinical Medicine, Chengdu University of Traditional Chinese Medicine, Chengdu, 611137, China)、Yizhou Zhuo(Acupuncture and Tuina School, Chengdu University of Traditional Chinese Medicine, Chengdu, 611137, China)、Yu Lai(School of Basic Medicine, Chengdu University of Traditional Chinese Medicine, Chengdu, 611137, China)