この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:npj Aging
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
血管が年齢とともに徐々にかたくなっていく「動脈硬化」は、心血管疾患のリスクを知る手がかりの一つとされています。これまで食事と動脈硬化の関連を調べる研究の多くは、あらかじめ『健康的』『欧米的』といった枠組みを研究者側で決めてから食事パターンを分類する方法が使われてきました。しかし、実際の食べ方の傾向は必ずしもそうした既存の枠組みに収まるとは限りません。そこで今回紹介する研究では、心血管疾患の診断を受けていない集団を対象に、データそのものから食事パターンを見出す手法を用いて、動脈のかたさとの関連を調べました。
研究でわかったこと
この研究は、心血管疾患が知られていない中国人成人1155名を対象とした横断研究です。参加者には16項目からなる食品選択の質問票に回答してもらい、動脈硬化の指標として上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)という数値が測定されました。baPWVは、脈波が血管を伝わる速さを示すもので、値が大きいほど動脈がかたい状態を反映するとされています。
食事パターンの抽出には、多重対応分析という統計手法に続いて、主成分に基づく階層的クラスタリングという方法が用いられました。その結果、参加者の食品選択は主に「全粒穀物・イモ類」「燻製食品」「塩蔵食品」の摂取傾向の違いによって、3つの食事パターンに分類されました。
一般化線形モデルを用いてこれらのパターンとbaPWVとの関連を調べたところ、燻製食品や塩蔵食品の摂取が多い「中国式西洋食」パターンを基準とした場合、全粒穀物やイモ類の摂取が多い「中国式地中海食」パターン(β = −0.30、95%信頼区間: −0.49〜−0.10)、および上記4つの食品グループの摂取がいずれも少ない「一般的な中国都市部の食事」パターン(β = −0.23、95%信頼区間: −0.40〜−0.07)は、より低いbaPWVと関連していたと報告されています。研究チームは、複雑な食事行動であっても、シンプルな食品選択のデータから動脈硬化と関連する食事パターンを見出せたとまとめています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある一時点での食事パターンとbaPWVの関連を調べた横断研究であるため、食事パターンが動脈硬化の原因になっている、あるいはそれを防ぐといった因果関係を示すものではありません。論文の著者ら自身も、今回の結果は探索的な関連として解釈されるべきであり、因果効果ではない点を強調しています。特定の食品や食事パターンが動脈硬化を予防・改善するといった断定的な結論は導かれていない点に注意が必要です。
また、対象は中国人成人1155名という特定の集団であり、食品選択の質問票も16項目という限られた内容に基づいています。今回見出された関連が他の集団にも当てはまるかどうかは、この一つの研究だけでは分かりません。
まとめ
今回紹介した研究では、あらかじめ枠組みを定めるのではなく、食品選択データそのものから浮かび上がる食事パターンを手がかりに、動脈のかたさとの関連が検討されました。全粒穀物やイモ類を多く摂る食事パターンや、燻製・塩蔵食品の摂取が少ない食事パターンは、動脈硬化の指標であるbaPWVが低い傾向と関連していたとされていますが、これはあくまで横断研究による探索的な関連であり、今後さらなる研究による検証が待たれます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):中国人成人1155名を対象としたデータ駆動型食事パターンと動脈硬化の関連に関する横断研究(エヌピージェイ・エイジング・2026年08月)
著者:Chen Chen(BGI Genomics, Shenzhen, China)、Hefu Zhen(BGI Research, Shenzhen, China)、Xiaojie Hu(Department of Gastrointestinal Surgery, Hebei General Hospital, Shijiazhuang, China)、Yaxin Li(BGI Genomics, Shenzhen, China)、Yixin Chen(Clinical Medical College, Jiujiang University, Jiujiang, China)、Jianguo Zhang(BGI Genomics, Shenzhen, China)、Weijun Chen(College of Life Sciences, University of Chinese Academy of Sciences, Beijing, China)、Chao Nie(BGI Research, Shenzhen, China)、Bangwei Chen(Department of Geriatrics, Tongji Hospital, Tongji Medical College, Huazhong University of Science and Technology, Wuhan, China)、Tao Li(BGI Genomics, Shenzhen, China)、Yutao Du(BGI Genomics, Shenzhen, China)