著者の所属・活動拠点の国は、タイです。
掲載誌:Scientific Reports
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
「炭水化物を摂りすぎると太る」「脂肪の多い食事は肥満のもと」——こうしたイメージは広く知られていますが、その関連の強さが男性と女性で違うのかどうかは、あまり注目されてきませんでした。特にアジアの人々を対象にしたデータはまだ限られています。今回紹介するのは、タイ・バンコクの成人を対象に、高炭水化物食・高脂肪食のパターンと肥満との関連を、性別ごとに比較した研究です。
どんな研究か
この研究は横断研究と呼ばれる手法で行われ、バンコクのラクシー地区に住む18〜59歳の成人380人(男性83人、女性297人)を対象としました。参加者は便宜的な方法(コンビニエンスサンプリング)で集められています。肥満の判定にはアジア人向けのWHO基準が用いられ、食事の摂取状況は「半定量式の食物摂取頻度調査票(FFQ)」というアンケート形式の方法で調べられました。研究では、1日あたり炭水化物の摂取量が275gを超える場合を「高炭水化物摂取」、脂肪の摂取量が65gを超える場合を「高脂肪摂取」と定義し、年齢と総摂取エネルギー量の影響を統計的に調整したうえで、これらの食事パターンと肥満との関連が男女別に分析されました。
研究でわかったこと
まず、それぞれの性別内で見た過体重・肥満の割合は、男性で78.3%(83人中65人)、女性で64.6%(297人中192人)でした。ただし、そもそも調査対象者に女性が多かった(全体の78.2%)ため、過体重・肥満に該当した人全体の中では女性が74.7%を占めていたと報告されています。
食事パターンとの関連を見ると、高炭水化物摂取は女性では肥満との関連が統計的に有意でした(オッズ比2.43、95%信頼区間1.47〜4.04、p=0.001)。一方、男性では有意な関連は見られなかったとされています。これに対し、高脂肪摂取は男性・女性の双方で肥満との関連が確認され、男性ではオッズ比3.42(95%信頼区間1.13〜10.28、p=0.032)、女性ではオッズ比1.67(95%信頼区間1.02〜2.73、p=0.048)だったと報告されています。
さらに女性においては、高炭水化物摂取は中性脂肪値の上昇(オッズ比2.48、p=0.021)やBMIの増加(オッズ比2.49、p<0.001)とも関連していたことが示されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある時点での食事状況と肥満の関連を調べた横断研究であり、「高炭水化物・高脂肪の食事が肥満を引き起こす」という因果関係を直接証明するものではありません。論文自体も、これらの知見はあくまで探索的なものであり、今回示された性別ごとの違いを確かめるには、時間の経過を追って調べる縦断研究による検証が必要だとしています。また、対象者は便宜的な方法で集められたバンコクの一地域の成人であり、調査対象に女性が多かった点も踏まえて結果を読む必要があります。
まとめ
今回紹介した研究では、タイ・バンコクの成人を対象に、高炭水化物食・高脂肪食のパターンと肥満との関連を男女別に調べたところ、高炭水化物摂取は女性でのみ肥満と関連し、高脂肪摂取は男女ともに肥満と関連していたことが報告されました。論文では、こうした結果から性別に応じた食事指導、特に中心性肥満のリスクがある女性における炭水化物摂取のコントロールの必要性が示唆されるとしていますが、これは一つの横断研究による知見であり、結論が確定したわけではない点に留意が必要です。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):タイ人成人における高炭水化物・高脂肪食パターンと肥満の関連:性差比較を含む横断研究(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)
原著論文の著者・所属:Sakawrut Poosri(Department of Tropical Nutrition and Food Science, Faculty of Tropical Medicine, Mahidol University, Bangkok, Thailand)、Natnicha Promyos(Department of Tropical Nutrition and Food Science, Faculty of Tropical Medicine, Mahidol University, Bangkok, Thailand)、Kamparnart Kaewyai(Department of Tropical Nutrition and Food Science, Faculty of Tropical Medicine, Mahidol University, Bangkok, Thailand)、Chattraya Ngamlerst(Department of Tropical Nutrition and Food Science, Faculty of Tropical Medicine, Mahidol University, Bangkok, Thailand)、Siriarun Saesow(Administrative and General Affairs Unit, Faculty of Tropical Medicine, Mahidol University, Bangkok, Thailand)、Narisara Sripo(Princess Agrarajakumari Faculty of Nursing, Chulabhorn Royal Academy, Bangkok, Thailand)、Junsuda Taweechaisub(Princess Agrarajakumari Faculty of Nursing, Chulabhorn Royal Academy, Bangkok, Thailand)、Thanate Tienthong(Princess Agrarajakumari Faculty of Nursing, Chulabhorn Royal Academy, Bangkok, Thailand)、Pattaneeya Prangthip(Department of Tropical Nutrition and Food Science, Faculty of Tropical Medicine, Mahidol University, Bangkok, Thailand. [email protected])